傘
設定としては全員サッカー部、先生は顧問の先生です。人のいいおじさんです。
一郎「はあ〜学校終わった、帰ろ」
ギッ
ザーザーザー…
一郎「あ…雨」
啓太「雨」
一郎「天気予報見といて良かった。傘持ってきたんだ」バサッ
後輩「僕もっすよ」バサッ
啓太「俺も、置き傘してるから」バサッ
たける「……」
一郎「あれ、たけるのセリフのあとにバサッが付いてない」
啓太「広げる傘がないんじゃね?」
一郎「そうなのか?たける」
たける「……」スタスタ
後輩「おお―――っとたける先輩、傘を持たずに歩き始めた―っ
このまま帰る気なんでしょうか」
一郎「たける、濡れるぞ」
たける「……」スタスタ
先生「ちょっと、たけるくん、風邪ひくよ。私の傘を貸してあげるよ」
たける「……いい」スタスタ
先生「本当に風邪ひくよ」
たける「風邪なんかひいた事ない」スタスタ
一郎「まあ、先生、いいんじゃね?傘を忘れたたけるの自業自得ってことで」
啓太「つーかたける、マジであのまま帰る気だぞ。この豪雨の中」
先生「さすがにマズイよ」
後輩「ちょ、僕、止めに行ってきます」ダッ
一郎「後輩、濡れるなよ〜」
後輩「いや、先輩達もきてくださいよ!」
啓太「え〜?」
後輩「゛俺達も行く゛とかないんですか!まさか一歩も動かないとは思いませんでしたよ!」
一郎「ちぇ〜、しょうがねえなー」ニヤニヤ
後輩「何でちょっと楽しそうなんですか…」
たける「」スタスタ
後輩「たける先ぱーい!戻ってきてくださーい!みんなで傘に入りましょう!」
一郎「そうだぞたける〜、俺の傘にはいれないけどな」
啓太「俺もやだし」
後輩「え?ちょ、僕もやですよ」
一郎「オイ言い出しっぺ〜」
先生「後輩くん、そこは責任を取っていれるべきなんじゃないのかな…」
後輩「マジかよチクショウ!言うんじゃなかった!と、とにかく先輩、こんな雨の中傘も持たずに帰るなんて無茶ですよ!肺炎になりますって!」
たける「…っ」スタ…スタスタ
一郎「お、たける、肺炎というワードに歩くスピードを若干緩めたぞ」
後輩「マジで!?当てずっぽうで言ったのに意外に効果あった!」
たける「」スタスタ
一郎「あ〜、ホラ〜、今の当てずっぽうのせいでまた元のスピードに戻った〜」
後輩「たける先輩めんどくさっ…」
先生「でも、さっきみたいに何か言えば戻ってくるんじゃないのかな」
一郎「だそうだ、後輩、何か言ってやれ」
後輩「え〜〜…あ、そうだ、ハゲますよ!」
たける「!」ピタッ
後輩「止まったーーーーっ!やった!」
一郎「グッジョブ後輩!」
啓太「でもまだ戻ってこないぞ」
後輩「そこまで誘導しないとダメなのかよ!」
一郎「いや、後輩はよくやったよ。ここでバトンタッチだ。啓太、何か言ってやれ」
啓太「え、俺?」
一郎「ああ。ハゲより強力なものを」
啓太「そんなのあるのかよ…えーと…
たける、ロン毛が雨に濡れて気持ち悪いことになってるぞ」
たける「!!!」
後輩「ダメだ!衝撃を与えただけで一歩もその場から動かないですよ!」
啓太「くそめんどくせえ」
一郎「なにかいい言葉はないか…」
啓太「おーいたける、大丈夫か?」
一郎「えっ?」
後輩「そうか!逆に心配する事でこっちに呼び戻す作戦なんですね!」
一郎「マジかよ啓太すげえな。あ、たける顔あげた」
後輩「これはうまくいくんじゃ…」
啓太「大丈夫か、頭」
一郎「あ…」
後輩「頭の方だったァァァ!!ダメだった!啓太先輩は何一つとして心配していなかった!!」
一郎「どーすんだよ。たけるうずくまっちゃったじゃん」
後輩「またもたける先輩めんどくさ!意地っ張りのくせにメンタル打たれ弱っ!」
啓太「どうすりゃいいんだ」
先生「さっきの啓太くんの作戦はいいと思うよ。優しい言葉でいこう」
一郎「そうなると、ここは先生の役目だな」
先生「え、私?」
後輩「そーっすね…僕達にたける先輩に優しい言葉をかける勇気はありません…」
啓太「気持ち悪いし」
先生「酷い言われよう。たけるくんかわいそう」
たける「…」フラフラ
一郎「あ、立ち上がった」
後輩「同情されて嬉しかったのかな」
啓太「つーか何気にこっちの会話全部聞こえてるよな。聞き耳たててるのかな。気持ち悪っ」
先生「け、啓太くん言い過ぎだ!」
たける「俺は…」フラッ
一郎「お、しゃべった」
後輩「し、しかもフラフラ近付いてきますよ!」
一郎「何が起こるんだ!」
啓太「何も起こらねーと思う…」
たける「俺は…俺は…」フラフラ
先生「たけるくん、どうしたの、顔がはんにゃのようだよ」
たける「俺は…気持ち悪くなんかない!」
ビシャアアアアアアア
一郎「…」
後輩「…」
啓太「…」
先生「…」
たける「ついでに言うとめんどくさくもない!」
ビシャアアアアアアア
一郎「」(…何これ)
後輩「」(たける先輩ほんとめんどくさいですね)
啓太「」(たけるほんと気持ち悪い)
先生「」(な、何か言わないと…)
たける「……どうした?反論はないのか?」ドヤァァァァァァ
一郎「」(何だあのドヤ顔!誰か何か言え!)
後輩「」(言うって何をですか!)
啓太「」(いいからこの状況から抜け出せるようなものを…)
先生「」(早くしないとたけるくん無視された事に傷付いてまたうずくまっちゃうよ)
たける「……」
一郎「」(何か言え何か言え)
後輩「」(何で僕達急にしゃべれなくなってんですか)
啓太「」(完全にタイミングを逃したからな)
先生「」(どうしようどうしよう)
たける「…オレ…天気予報とか信じないし…」
一郎「」(自分が傘を忘れた理由を話し始めたぞォ!何で信じないんだよ!バカだろ!)
後輩「」(先輩、今はそれどころじゃありません)
啓太「」(確かにたけるはバカだが…体調不良で次の試合の時に休まれたりしたら困るし)
先生「」(え…ちょっと待ってよ。たけるくん、次の試合には出ないんじゃなかった?)
たける「…傘とか…邪魔だし…」ブツブツ
一郎「」(え?そうだっけ)
後輩「」(あ、確かそうですよ。この間スタメン確認したじゃないですか)
啓太「」(なんだよ。じゃあたける風邪でも何でもひけよ)
先生「」(良かった良かった)
たける「大体天気予報士の言うこと鵜呑みにしてる奴ら何なの?って感じだし…えっ?ちょ、どこ行くの?」
一郎「俺達もう帰るわ」
啓太「バイバイたける」
後輩「うひゃー、ひどい雨だ」
先生「たけるくんも早く帰った方がいいよ。それじゃね」
スタスタスタスタ
たける「え…ウソだろ…ちょっと…ちょっとオイ……マジかよ!薄情な奴らだなチクショウ!」
たける「なんか間違ってないか?なあ!俺がスタメンじゃないからダメなのか!そんなのひどいじゃないか!」
たける「くそっくそおおおおお!」
後輩「400メートル離れたこの地点でも先輩のシャウトが聞こえるよ……」
END
なんだこのグダグダ感……