4人のつながり
今回も楽しんでいただけると幸いです。
では物語の始まりです。
資料に目を通しながら、昨晩のことを思い出す。
あやかはBar“raise“によく一人で来ており、カウンターでお酒を飲んでいたこと。
そこで店員であるカグヤと仲良くなり、プライベートでも飲みに行く仲になったこと。
兄マサヤとキリさんは、よくこの店で情報交換をしていたこと。
そして、兄マサヤは一人でもBar“raise“によく飲みに来ており、個人的にあやかやカグヤとも仲が良かったということ。
これらのことが分かった。
僕は資料から目を離し、キリさんへと視線を向けた。
「兄はあやかさんやカグヤさんと前からの知り合いだったんですね」
キリさんは資料から目を離さずに言う。
「知り合いと言っても、どこまでの関係性だったかはまだ分からない」
僕はただ頷くことしかできなかった。そして、資料に目を戻す。
しばらくの間、部屋には紙をめくる音だけが響いていた。
やがて、紙をめくる音が止まる。
僕はキリさんの方を向く。
「なぁ、タクヤ」
僕は名前を呼ばれたことに驚きつつ、返事をする。
「はい、なんですか?」
キリさんは僕を見て言う。
「マサヤがいなくなる前、何か変わったことはなかったか?」
そんなことを言われ、僕は頭をフル回転させる。
ー変わったことー
普段から自分の話はしない兄。何かあったかと必死に記憶をたどる。
「そういえば、失踪する少し前から夜に外出することが増えた気がします」
キリさんは何か考えながら、目の前の資料に目を落とす。
僕はキリさんに聞こえるか聞こえないかの声で、
「raiseにでも行ってたのかな」と呟く。
キリさんは資料を机に置き、僕を見つめる。
「raiseか、あり得そうだな」
キリさんは手元にあるメモ帳を開き、僕の話を書き留めた。
「その外出について、他に何か思い出せることはないか?」
僕は失踪前の兄の姿を思い浮かべる。しかし、これといった出来事は、、、
「あ、そういえば一度だけ、帰ってきた兄がすごく焦っていたことがありました」
キリさんはメモを取りながら、僕の話に耳を傾ける。
「兄が玄関で誰かと電話をしていたんです。でも、僕が近づいたら切っちゃったんです」
キリさんが口を開く。
「電話の相手は?」
僕は少し視線を落とす。
「わかりません。でも、切った後兄が言ったんです。『もう少しだけ待ってくれ』って」
なぜそんなことを言ったのか、僕にはわからない。
でも、僕はその時のことを鮮明に思い出し始めていた。
兄は少し困りつつも、いつもと変わらない優しい顔をしていた。
「もう少しだけ、か」
その言葉を繰り返すように、キリさんは静かに呟き、メモに何かを書き込んだ。
「その電話の相手が誰だったか調べる必要がありそうだな」
僕はキリさんを見つめながら頷く。
窓の外には、いつの間にか雲が広がっていた。
ー雨が降りそうだなー
そんなことを思いながら、僕は改めて資料を見る。
兄の失踪には、まだ分かっていないことが多い。
そして、その分かっていないことの中に、兄を見つけるための手がかりがあるようなそんな気がした。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
まだまだ物語は続きます。
引き続き『高架下探偵事務所』をよろしくお願いします。




