乱反射
「その小説、映画化するの知ってる?」
「…あ、うん、DVDでたら、みようかと」
「映画館は行かないの?」
「好きだけど、行く人いないし…」
「じゃあ、一緒に行こうよ」
キミの瞳の奥で、夕陽が乱反射していた。
友達も少なく、隅で小説を読んでいた僕。
明るく、クラスの中心にいたキミ。
ただのクラスメイトだったはずなのに。
その日から
少しずつ会話が増えた。
数学が苦手なキミ。
読書より、映画が好きなキミ。
観覧車が好きなキミ。
たくさんのキミを知って
当たり前に好きになって。
好きだったはずの数学も
テレビのニュースも
今の僕では、何も頭に入らない。
「映画、面白かったね」
「小説とはラストが変わってた」
「そうなの?小説はどんななの?」
「……主人公は告白できずに終わるんだ」
「へぇ…真逆だね」
「主人公は、臆病で不器用な人だから」
大きなモールで映画を見て
並木道を歩く。
街路樹の影が、アスファルトに伸びている。
何か言わないと。
この時間が終わってしまう。
時間が、止まれば良いのに。
「あ、のさ…」
「ん?」
夕陽に煌めくキミ。
まるで原石みたいだ。
「観覧車、乗らない?」
「この観覧車ね、1周15分なんだよ」
嬉しそうに外を眺めるキミが言う。
キミの声以外、聞こえなくなる。
まるで真空みたいだ。
つられて窓の外を眺める。
伝えたい想いはたくさんあるのに。
僕は、映画の主人公にはなれない。
思い出も、熱も、愛しさも
騒がしい感情がぐるぐるしている。
とっておきの2人きり。
本当は隣に座りたいのに、
臆病な僕は潰れそうだ。
「ねえ、みて」
「…なにを?」
「あそこが、さっき映画みた場所でしょ?」
「あそこが、さっき歩いた並木道!」
「上からみたら、全然違うものみたいだね」
「楽しかったね」
「うん」
結局、何もできなかった。
何も言えずに別れの時間。
「またね」
「うん、またね」
手を振るキミの瞳で、夕陽が乱反射している。
次第にひらいていく距離。
嫌だなぁ。
明日も、明後日も
「キミがすき、」




