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ご都合主義について物申す。〜敏腕編集長は異世界出張(リテイク)で忙しい〜  作者: かるびの飼い主
第2章:食物連鎖の底辺が国を作るなど、生態系としてあり得ないから嫌いだ。

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第8話:『捕食して強くなる? 質量保存の法則を無視するな。』

インフラ整備が終わり、次は食料問題です。

ゴブリンたちは「スライム様、これを食べて強くなってください!」と魔石を持ってきますが……?

都市機能が安定してきた頃、ゴブ爺がうやうやしく俺の前に現れた。


「スライム様(ソラ閣下)。献上品でございます」


 彼が差し出したのは、洞窟の奥で採れたという高純度の魔石や、狩ってきた魔物の死骸だった。


「これを取り込めば、閣下はさらに進化し、魔王種へと覚醒されるでしょう!」

『……却下だ』

「は?」

『他者の細胞や魔力を取り込んで強くなる? リスクが高すぎる。拒絶反応の検査はしたのか? それに、質量保存の法則を無視した急激な巨大化は、関節ないけどに負担がかかる』


 俺は献上品を押し返した。

 なろう系スライムの定番、「捕食スキル」による無限進化。

 あれが大嫌いだ。努力の過程がない。ただ食べて強くなるなど、ドーピングと変わらない。


『強さとは、地盤だ。経済だ。物流だ』


 俺はプルプルと震えながら宣言した。


『魔物を狩るな。養殖しろ。洞窟内に生息する「ジャイアントバット」を家畜化し、安定したタンパク源を確保するんだ。排泄物は肥料にして、光苔ヒカリゴケの栽培に使え』

「よ、養殖……!?」

『狩猟採集社会から農耕牧畜社会への転換パラダイムシフトだ。それができれば、飢えによる争いはなくなる』


 俺の指導の下、ゴブリンたちは剣を捨て、くわを持った。

 コウモリの品種改良が進み、美味しい肉と、肥料が手に入るようになった。

 食料自給率が100%を超え、飢餓が根絶された。


「おお……! スライム様は、我々に『争わない力』を授けてくださった!」

「破壊の王ではなく、豊穣の神だ!」


 広場には、俺を模した青いスライム像(石造り)が祀られ、ゴブリンたちが毎朝祈りを捧げている。


『……違う。私はただ、業務効率化を図っただけで……』


 俺の困惑をよそに、噂を聞きつけたオーク族やリザードマン族までもが、「入国審査」を受けに行列を作り始めていた。

「食べて強くなる」ではなく「育てて豊かになる」。

現実的な解決策が、逆に神格化を招いてしまいます。


次回、ついに魔王軍の幹部が攻めてきます。

しかし、この国には鉄壁の「役所」があります。

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