第38話:『ハーレム? ご都合主義なヒロインなど、人間としての厚みがない。』
会社(資産)がホワイト化した翌日。
ソラは健太の自宅へと招かれます。
そこは、常識ではあり得ない「山奥の豪邸」でした。
翌日。俺は健太の案内で、彼が住む自宅へと向かった。
場所は、人里離れた山奥。
道なき道を進んだ先に、それは突然現れた。
「……なんだ、これは」
森の中に鎮座する、巨大な白亜の邸宅。
まるで新築、いや、巨大な白磁の芸術品のように、壁ひとつ汚れがない。
だが、そのデザインは古風な洋館だ。
「僕のマイホームです! 元々は廃墟だったんですけど、【リペア(修復)】で直しちゃいました」
「……直した?」
俺はめまいがした。
廃墟を直しただと? 魔法で?
「バカ者! リフォームを舐めるな!」
俺は叫んだ。
「見た目を綺麗にしただけで、構造躯体の強度は確認したのか? シロアリ被害は? 旧耐震基準の建物なら、現行法に合わせて補強工事が必要だぞ!」
「えー、でも【リペア】なら柱の腐食も元通りですし……」
「その『元通り』の定義は何だ! 当時の設計図通りか? それとも新品同様か? 第三者機関の検査を入れてない建物なんて、怖くて住めるか!」
俺が建物の基礎をコンコンと叩いてチェックしている間に、その巨大なリビングには次々と来客があった。
アイドル、女性官僚、財閥の令嬢……。
彼女たちは、わざわざこの不便な山奥まで通ってきているらしい。
「健太さーん! お弁当作ってきました!」
「佐藤様、例の件でご相談が……」
広いリビングが、美女たちで埋め尽くされていく。
全員が健太に好意を寄せているのは明白だ。
だが、俺は冷ややかな目でそれを見ていた。
「……非効率だ」
俺は呟いた。
「君たち。ここは都心から車で数時間の山奥だぞ。多忙なアイドルや官僚が、往復の移動コストを度外視して通う……。動機が強引すぎる」
「え? それは……健太さんに会いたいから……」
「依存だ。それは愛じゃない。彼が『魔法』で君たちのトラブルを解決したから、都合の良い救世主として縋っているだけだ」
俺は広すぎるリビングを見渡した。
「この家もそうだ。元が廃墟なら、歴史や因縁があるはずだ。それを魔法で上書きして、綺麗な箱にしてしまった。……君たちの関係も同じだ。過去も背景も見ず、ただ今の『心地よさ』に浸っているだけだ」
ヒロインたちが言葉に詰まる。
場の空気が凍る。
その時、健太が苦笑しながらコーヒーを出した。
「まあまあ、ヤマダさん。そんなに詰めなくても。……みんな、この静かな場所でホッとしたいだけなんですよ」
健太は魔法を使わず、ただの手作業でコーヒーを淹れた。
その所作には、魔法のような派手さはないが、確かな「温かさ」があった。
ヒロインたちが、ホッとした顔でカップを受け取る。
「……ふん」
俺はコーヒーを一口啜った。
……美味い。
窓の外には、美しい木々の緑。静寂。
都会の喧騒からも、面倒な人間関係からも隔離された、完全なサンクチュアリ。
「……なるほどな」
俺は少しだけ認識を改めた。
この非常識な立地も、魔法で再生された屋敷も、社会に疲れた人々を匿うための「シェルター」としては機能している。
法律も物理も無視しているが、ここには確かな「癒やし」がある。
だが、その平穏は唐突に破られる。
**『あーあ。つまんないの』**
修復された白磁の天井から、聞き覚えのあるチャラい声が降ってきた。
空間が裂け、俺の身体が浮き上がる。
「なっ、神か!?」
「ソラっち、回収〜。その世界、平和すぎてボツにするわ」
俺は健太に別れを告げる間もなく、次元の彼方へと引きずり込まれた。
廃墟を魔法でピカピカに。
しかし編集長は「基礎構造」や「耐震」を心配します。
そんな細かい理屈を吹き飛ばすほどの「癒やし」が、この家にはありました。
次回、最終対決。
ソラは健太の世界を守れるのか?




