第37話:『預金残高100億円? インフレを誘発する気か。税務調査を入れるぞ。』
仕事を終え、健太のオフィス(アパートの一室)へ。
そこでソラが見たのは、あまりにも杜撰な経理管理でした。
「いやー、最近儲かっちゃって。税金とかよく分かんないんですよね」
健太が照れながら見せてくれた通帳。
俺はそれを見て、泡を吹きそうになった。
残高、百二十億円。
個人口座に。普通預金で。
「……バカ者ォォォッ!!」
俺の怒号が六畳一間に響き渡る。
「なんだこの金は! プールしすぎだ! ペイオフ(預金保護)の上限を知らんのか! 銀行が破綻したらどうする!」
「えっ、あ、はい」
「それに税務処理だ! これだけの売上、個人事業主で申告する気か? 累進課税で半分以上持っていかれるぞ! ていうか、昨年の確定申告はしたのか!?」
「あー、まだ……」
「脱税だ! マルサが来るぞ! 追徴課税で破産したいのか!」
俺はネクタイを緩め、パソコンを奪い取った。
「貸せ! 俺がやる! 今すぐ法人登記だ。役員報酬の設定、経費の計上、節税対策……全部やり直しだ!」
俺は猛烈な勢いでキーボードを叩き始めた。
健太の「生活魔法」は凄いが、社会常識が欠如している。
このままでは、彼は魔法ではなく法律によって社会的に抹殺される。
「ヤマダさん(ソラ)、凄い……! 数字がどんどん綺麗に!」
「うるさい! お茶を淹れろ! ……くそっ、なんで俺が異世界に来てまで経理処理を……」
文句を言いながらも、俺の手は止まらない。
完璧な決算書。美しい貸借対照表。
数時間後、俺は健太の資産を完全な「ホワイト資産」へと洗浄してやった。
「これで国税局も文句は言えん。……いいか健太。力を持つということは、責任を持つということだ。帳簿の汚れは魔法じゃ消せんのだぞ」
「はい! ありがとうございます、CFO(最高財務責任者)!」
俺は深いため息をついた。
まったく、危なっかしくて見ていられない。
魔法使いでも脱税は犯罪。
ソラの「経理魔法(実務)」が、健太を社会的死から救いました。
次回、健太を取り巻く女性関係にメスを入れます。




