第36話:『最強の特殊清掃員。……そのゴミ、マニフェスト(管理票)はあるか?』
最終章の舞台は、まさかの「現代日本」。
主人公は、特殊清掃業を営む元社畜・佐藤健太。
彼のチート能力「生活魔法」による業務遂行を見たソラは、卒倒しそうになります。
目覚めると、俺は埃っぽい作業服を着ていた。
場所は、現代日本の工事現場……いや、産業廃棄物の集積所だ。
目の前には、山のように積まれた瓦礫、鉄くず、汚染土壌。
「……また現代か。だが、空気が軽いな」
俺が周囲を見回していると、胸元に「派遣:ヤマダ」と書かれた名札がついていることに気づいた。
なるほど、今回の役割は派遣作業員か。
そこへ、一人の青年が歩いてきた。
**佐藤健太**。28歳。
人の良さそうな笑顔を浮かべた、どこにでもいる青年だ。
「あ、お疲れ様です。今日来てくれた派遣さんですね?」
健太は俺の名札をチラリと見て、親しげに声をかけてきた。
「ヤマダさん……でいいのかな? 現場監督の佐藤です。じゃあ、これ片付けちゃいますね」
「片付ける? 重機もなしにか?」
俺が問うと、彼は軍手をはめた手を瓦礫の山に向けた。
「【クリーン】」
シュンッ。
音がした瞬間、数百トンはあるはずの廃棄物の山が、消失した。
跡形もなく。塵一つ残さず。ただの更地が広がっている。
「……はい?」
俺の眼鏡がずり落ちた。
「はい、終わりです。これで依頼完了ですね!」
爽やかに汗を拭う健太。
俺は震える手で彼の方を掴んだ。
「ま、待てェェェ!! 消えた!? 今、物質が消滅したのか!?」
「ええ。生活魔法なんで」
「魔法で済むか! 質量保存の法則はどうなってる! それに、その廃棄物のマニフェスト(産業廃棄物管理票)は!?」
「まにふぇすと?」
「不法投棄だろそれは! 亜空間に捨てたのか虚数空間か知らんが、環境省への届け出はしてるのか! 最終処分場の許可は! これじゃトレーサビリティ(追跡可能性)がゼロだぞ!」
俺は激昂した。
こんな処理がまかり通れば、廃棄物処理法が根底から覆る。
だが、健太はキョトンとしている。
「えー、でも綺麗になったし、依頼主も喜んでますよ?」
「結果良ければ全て良しなわけがあるか! コンプライアンス(法令遵守)の概念がないのか君の世界は!」
俺は頭を抱えた。
この世界、物理法則も法律も、すべてが「ご都合主義」でねじ曲がっている。
お読みいただきありがとうございます!
一瞬でゴミを消す。
社畜にとっては夢のような能力ですが、編集長にとっては「違法の塊」にしか見えません。
初対面の挨拶もそこそこに、いきなり説教モード全開です。
次回、健太の通帳を見たソラが、さらに激怒します。




