第35話:『平和になったな。じゃあ、俺は寝る。』
魔王との別れ。そして帰還。
戻った先は、もちろん深夜の自宅です。
フワッ。
柔らかな感触。アロマの香り。
「……戻った」
俺は自宅のベッドの上にいた。
天井のシミ。聞き慣れた冷蔵庫の駆動音。
俺の身体は、シルクのパジャマ姿のままだ。
時計を見る。午前二時一分。
あの濃密な世界改革は、わずか一分間の出来事だった。
「……夢オチ、か?」
そう思いたくなる。
だが、枕元に置いてあったスマホが震えた。
通知画面に、見慣れないアプリがインストールされている。
『魔国株価チャート』。
タップすると、右肩上がりのグラフと共に、『配当金が入金されました』というメッセージが表示された。
「……ちゃっかりしてるな、魔王め」
俺はフッと笑った。
どうやら、異世界での「社外取締役報酬」は、現世の電子マネーとして還元されるらしい。
これで老後の資金は安泰だ。
「……さて」
俺はスマホを置き、再び布団を被った。
まだ夜明けまで時間はある。
明日は月曜日。企画会議に、作家との打ち合わせ。現世の戦いが待っている。
「おやすみ、世界」
今度こそ、安らかな眠りが訪れた。
……しかし、その夢の中で、俺はとんでもない光景を見ることになる。
次の出張先。それは、俺が知る限り「最もふざけた世界」だった。
予告状(企画書)のタイトルは――
『現代日本で「生活魔法」が使えるのは僕だけのようです。』
「……なんだこの、なろう系全開のタイトルは……?」
俺の寝言が、虚空に消えた。
(第7章 完)
お疲れ様でした! 第7章「魔王討伐編」、完結です。
世界を平和にして、ちゃっかり株主報酬もゲットして帰還。
いよいよ次章、**第8章:佐藤健太×校倉青空の「生活魔法」編**。
物語のクライマックスです。
ソラ編集長は、健太の「ストレスフリー」な世界をどう論破し、どう認めるのか。




