第34話:『株式会社「世界」の誕生。勇者、お前は営業部長な。』
一夜にして世界は変わりました。
魔物と人間が手を取り合い、商売を始める新時代の到来です。
数ヶ月後(体感)。
世界は未曾有の好景気に沸いていた。
魔王城は「グランド・デビル・タワー」と改名され、世界貿易センタービルになっていた。
最上階のCEO執務室。
スーツ姿の魔王ヴァーミリオンが、窓の外を見下ろしている。
「素晴らしい……。見ろソラよ、街が光り輝いている」
「ネオン街ですね。電気代がかさみますよ」
俺はソファで紅茶を啜っていた。
パジャマからスーツ(現地調達)に着替えているが、眠気はまだ取れていない。
「営業部長の勇者から報告だ。『魔界産ミスリル包丁』が人間界で完売したそうだ」
「順調ですね。次は観光業に力を入れましょう。ダンジョンをテーマパーク化して入場料を取るんです」
「ククク……恐ろしい男だ。貴様こそ真の魔王ではないか?」
魔王が笑う。
かつて恐怖の対象だった彼は、今や「理想の経営者ランキング」で一位を取る人気者だ。
勇者もアイドル的な人気を博し、握手会で忙しいらしい。
争いは消えた。
貧困も消えた。
誰も死なない、誰も傷つかない世界。
……少し、退屈すぎるくらいだ。
「……さて。俺の仕事は終わりました」
俺はカップを置いた。
修正完了。
「勧善懲悪」という古いプロットを、「共存共栄」という現代的なビジネスモデルに書き換えた。
これで文句はあるまい。
「行くのか、ソラよ。……我が社の社外取締役に迎えたいのだが」
「お断りします。俺には、もっとタチの悪い『ブラック企業(現世)』が待っているので」
俺は苦笑し、立ち上がった。
天井から、帰還の光が降り注ぐ。
「達者でな、魔王。……いや、ヴァーミリオン社長」
「うむ。また会おう、我が友よ」
魔王との堅い握手。
俺は光に包まれ、世界一平和な魔界を後にした。
世界平和、達成。
武力ではなく経済力で世界を征服しました。
次回、第7章完結。
現世に戻りますが、パジャマ姿のまま……?




