第31話:『就寝中の布団から魔王城へ。安眠妨害で訴える。』
第7章、開幕。
今回の転移先は、ファンタジーの王道「魔王城の決戦前夜」。
しかし、ソラ編集長は「就寝中(パジャマ姿)」でした。
深夜二時。現世の自宅マンション。
俺は最高の気分だった。
高級羽毛布団。オーダーメイドの枕。アロマの香り。
激務の合間の、貴重な睡眠時間だ。
「……ふあ。おやすみ、世界」
俺は泥のように眠りに落ちた。
意識が闇に溶ける。至福の時。
だが、その安らぎは一瞬で破られた。
**カッ!!**
布団の中で、閃光が走る。
「……ん? 電気消し忘れたか……?」
寝ぼけ眼をこする。
背中に感じるはずのマットレスの感触がない。代わりに、ゴツゴツした冷たい感触。
そして、鼻をつく硫黄の臭い。
「……おい」
俺はガバッと上半身を起こした。
そこは寝室ではなかった。
黒曜石でできた巨大な広間。紫色の炎が揺らめく松明。
そして目の前には、玉座にふんぞり返る禍々しいオーラの巨人がいた。
「よくぞ来た、人間よ。我が名は魔王ヴァーミリオン」
魔王が低い声で告げる。
俺は周囲を見渡した。
俺の格好は、シルクのパジャマ。頭にはナイトキャップ。足は素足。
「……ふざけるな」
俺は枕(なぜか一緒に転移した)を地面に叩きつけた。
「今は就業時間外だ! 睡眠妨害だぞ神! 労基法には休息権というものがあってだな……!」
「む? 貴様、勇者ではないのか?」
魔王が怪訝な顔をする。
俺はパジャマの乱れを直し、眼鏡をかけた(寝る時は外していたが、ポケットに入っていた)。
「私は通りすがりの編集者だ。……おい魔王。今何時だと思っている」
「え? う、丑三つ時だが……」
「非常識にも程がある。アポイントなしで深夜に呼び出すな。ビジネスマナー研修からやり直してこい」
俺の剣幕に、魔王が玉座からずり落ちそうになる。
そこへ、広間の扉がバーンと開かれた。
「覚悟しろ魔王! 勇者ブレイド(※4章とは別人)が推参した!」
光り輝く聖剣を持ったイケメン勇者が、パーティを引き連れて乱入してきた。
決戦だ。ラスボス戦だ。
だが、俺には関係ない。俺は眠いのだ。
「あー、もう! うるさい!」
俺は勇者と魔王の間に割って入った。
「お前ら、一旦座れ。話はそれからだ」
お読みいただきありがとうございます!
パジャマ姿で魔王城へ。
一番機嫌が悪い「寝起き」の編集長が、ラスボス戦を中断させます。
次回、戦争のコスト計算。
「世界征服? 採算取れてるのか?」と詰め寄ります。




