第30話:『ループ終了。定時退社させていただきます。』
ループ世界を攻略し、無事に帰還の途につくソラ。
しかし、現世に戻った彼を待っていたのは、奇妙な既視感でした。
クロノアに見送られ、俺は光の中へと消えた。
「次からは、ちゃんとプロットを練ってから魔法を使えよ」
「はい……! ありがとうございました!」
彼女の深々としたお辞儀が、最後に見た光景だった。
◇
ブーン……。
低い駆動音が聞こえる。
トナーの匂い。オフィスの冷たい空気。
俺は、複合機の前に立っていた。
「……戻ったか」
手には、引き抜いたばかりの詰まった用紙。
時刻は午前三時五分。
あの長いループとの戦いは、わずか五分間の出来事だった。
「ふぅ……」
俺は詰まった紙をゴミ箱に捨て、印刷再開ボタンを押した。
ウィーン、ガシャン。
正常に紙が吐き出されてくる。
それを見届けながら、俺はふと、奇妙な感覚に襲われた。
(……あれ?)
出てきた会議資料。
『第3四半期 進行スケジュール』。
この資料、さっき印刷しなかったか?
いや、印刷しようとして詰まったんだ。だから今出ているのは正しい。
だが、なぜか「この資料の内容を既に知っている」気がする。
「……デジャヴか」
俺は苦笑した。
向こうの世界で、何度も未来を書き換えた後遺症かもしれない。
あるいは、この残業自体が、終わりのないループ地獄なのかもしれない。
「部長、まだ残ってたんですか?」
背後から声をかけられた。
始発で出社してきた田中だ。……いや、始発? 今は三時だぞ?
「田中? こんな時間にどうした」
「え? もう朝の七時ですよ?」
俺は時計を見た。
七時〇五分。
……三時じゃなかったのか?
「まさか……向こうでの時間経過(四時間)が、そのまま反映されたのか?」
俺は青ざめた。
五分で戻ってくるはずが、今回はガッツリ時間を消費していたらしい。
つまり、俺は徹夜明けのテンションで、これから一日の業務をこなさなければならない。
「……はは、笑えないな」
俺は出来たての温かい資料を抱きしめた。
死に戻りは回避したが、ブラック労働からは逃れられないらしい。
「田中、コーヒーをくれ。……濃いやつをな」
俺の戦いは、まだ終わらない。
現世という名の、ハードモードな日常が待っているのだから。
(第6章 完)
お疲れ様でした! 第6章「死に戻り・ループ編」、完結です。
死のループからは抜け出せましたが、残業という無限ループからは抜け出せなかったようです。
これが社畜のリアル……。
次回、第7章は「魔王討伐・チート勇者編」。
ついにファンタジーの王道、魔王城へ。
しかし、編集長は戦いません。「商談」で世界を平和にします。
布団の中から転移する、寝起きドッキリスタートです。
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