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ご都合主義について物申す。〜敏腕編集長は異世界出張(リテイク)で忙しい〜  作者: かるびの飼い主
第6章:死んで解決するプロットは三流だ。スケジュール管理を徹底しろ。

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第28話:『魔女よ、お前のシナリオは穴だらけだ。』

死に戻りさせるために罠を張り巡らせた黒幕。

しかし、ソラは一度も死なずに最深部へ到達してしまいます。

時計塔の最上階。

 巨大な歯車が回る薄暗い部屋に、一人の女がいた。

 漆黒のドレス。長い銀髪。退廃的な美しさを持つ**「黄昏の魔女」クロノア**。

 彼女は水晶玉を覗き込み、爪を噛んでいた。


「な、なぜ死なないの……? あり得ないわ」


 彼女のシナリオでは、異世界人はもう百回は死んで、心を壊しているはずだった。

 なのに、この眼鏡の男は、まるで散歩でもするかのように全ての罠をすり抜け、ここまで登ってきた。


 ギィィ……。

 重厚な扉が開く。

 息一つ切らしていない男――校倉青空が入ってきた。


「よう。ここがプロジェクトルームか?」

「き、貴様……何者だ!?」


 クロノアが立ち上がり、暗黒魔法を構える。


「なぜ死なない! 私の『運命操作』は絶対のはず! 貴様がどのルートを選ぼうと、絶望の結末が待っているはずなのに!」

「運命操作? ああ、あの穴だらけのプロットのことか」


 ソラは呆れたように肩をすくめた。

 彼は懐から、赤字だらけの紙束(と見える魔法データ)を取り出した。


「拝見させてもらったよ、君の書いたシナリオ(運命)を。……ひどい出来だ」

「なっ……!?」

「まず、死因のバリエーションが貧困だ。刺殺、圧死、毒殺……安直すぎる。読者プレイヤーへの配慮が足りない。もっとこう、心理的な葛藤とか、逃れられないカルマとかを描けないのか?」

「う、うるさい!」


 クロノアが魔法を放つ。漆黒の雷。

 だが、ソラは動かない。

 雷はソラの鼻先で直角に曲がり、避雷針へと吸い込まれた。


「それに、ここ。18:00の『大爆発イベント』。これ、前のイベントとの整合性が取れてないぞ。爆薬の設置時間が足りない。物理的に不可能だ」


 ソラは攻撃を無視し、淡々とダメ出しを続ける。


「伏線回収も雑だ。このループの目的は何だ? ただ主人公をいじめたいだけか? 動機モチベーションが不明瞭だ。これでは感情移入できない」


 ズカズカと歩み寄ってくるソラ。

 魔女クロノアは、後ずさった。

 魔法が通じない恐怖よりも、自分の作品(計画)をボロクソに酷評される精神的ダメージの方が大きかった。


「や、やめろ……私の完璧なシナリオを……!」

「完璧? 笑わせるな。バグだらけの欠陥品だ。……リテイクだ。最初から書き直せ」


 ソラがクロノアの目の前まで迫る。

 その眼鏡の奥の瞳は、魔王よりも恐ろしい「編集者」の光を放っていた。

魔女の攻撃を「設定の矛盾」として無効化し、シナリオのダメ出しをする編集長。

クリエイター(魔女)にとって、これほど恐ろしい敵はいません。


次回、魔女が泣きます。

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