第27話:『死亡フラグの洗い出し。リスクアセスメント表を作れ。』
ループ世界だと理解したソラ。
同じ失敗(死)を繰り返さないために、神から与えられたチート能力で「未来」を管理します。
鐘の音が鳴り止む。
さっきの記憶通りなら、あと五分後に通り魔が現れ、俺を刺す。
普通なら逃げるところだ。だが、逃げた先にも別の死があるのがこの手のジャンルの定石。
「神。今回の権限を見せろ」
俺が念じると、空中に半透明の巨大なチャートが出現した。
**【権限:工程管理表】**
横軸に時間、縦軸にイベント(タスク)が並んだ、見慣れた進捗管理表だ。
そこには、俺の未来が「予定」として記されていた。
*17:00 転移*
*17:05 広場で通り魔に遭遇(刺殺)* -> **[BAD END]**
*17:10 路地裏へ逃走するも、瓦礫が落下(圧死)* -> **[BAD END]**
「……死亡フラグのバーゲンセールだな」
至る所に赤い「BAD END」のタスクが埋め込まれている。
どう動いても死ぬように設計されている悪意の塊だ。
だが、これはあくまで「予定表」だ。編集長(PM)の権限があれば、スケジュールは変更できる。
「リスクアセスメントを開始する」
俺は指先でチャートを操作した。
「まず17:05の通り魔。こいつとの接触はキャンセルだ」
俺は『通り魔遭遇』のタスクをドラッグし、時間を『17:15』にずらした。
さらに、俺自身の移動ルート(タスク)を『広場待機』から『教会へ移動』に書き換える。
すると、現実が改変される。
人混みの流れが変わり、俺の目の前を巨大な馬車が横切った。
その影に隠れるようにして、俺は広場を抜ける。
背後で「チッ、見失ったか……」という通り魔の声が聞こえた。
「回避完了。……次は瓦礫落下か」
俺は歩きながら、次々と迫りくる死の運命を処理していく。
*『瓦礫落下』* → 落下時間を三十秒早める。俺が通る前に落ちて砕けた。
*『野犬襲撃』* → 野犬の出現ポイントを二ブロック先へ変更。
*『毒矢』* → 風向き(パラメータ)を変更し、軌道を逸らす。
俺は一度も走らず、汗もかかず、ただ悠然と歩くだけ。
だが、俺の周囲では奇跡のように事故が回避され、死神が空振りを続けている。
「ふん。予測可能なトラブルなど、トラブルのうちに入らん」
俺は眼鏡を押し上げた。
目指すは、この街の中央に聳える時計塔。
ガントチャートの最下部に記された、このループの元凶――『黒幕との対決』というタスクを消化するために。
未来を「工程表」として視認し、タスクをずらして死を回避する。
これぞ大人の解決法です。
次回、いくら殺そうとしても死なないソラに、黒幕の魔女が焦り始めます。




