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ご都合主義について物申す。〜敏腕編集長は異世界出張(リテイク)で忙しい〜  作者: かるびの飼い主
第5章:ダンジョンで金稼ぎ? 税務申告と配信許可はちゃんとしろ。

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第23話:『バズるな。コンプラ違反で通報するぞ。』

ミノタウロスを説教(物理的な結界付き)で追い払ったソラ。

配信の同接数はうなぎ登り。しかしソラはカメラに向かっても容赦しません。

ミノタウロスは「なんかヤバい奴がいる」という顔をして逃げ去った。

 俺は息を整え、ネクタイを締め直した。

 足元では、KEN-CHANが腰を抜かして震えている。


「……立てるか」

「あ、はい……助かりました……」

「なら、さっさと帰るぞ。ここは素人の遊び場じゃない」


 俺はカメラマンに向き直った。

 まだ撮影を続けている。同接数は50万人を超えていた。


「おい、そのカメラを切れ」

「えっ、でも今すごい数字が……」

「切・れ」


 俺はレンズを指差し、視聴者に向かって宣言した。


「見ている君たちもだ。彼が死にかけた時、君たちは何をした? 『逃げろ』と言ったか? それとも『もっとやれ』と煽ったか?」


 コメントがピタリと止まる。


「彼が死ねば、君たちは殺人の共犯だ。安全な場所から人の命を消費するな。……これ以上このチャンネルが危険行為を続けるなら、プラットフォーム運営に通報し、BAN(アカウント停止)させる。以上だ」


 ブツン。

 俺は強制的に配信を切らせた。

 廃墟に静寂が戻る。


「……あーあ、終わっちゃった」


 KEN-CHANが力なく呟いた。


「これでもう、俺オワコンかな……」

「死ぬよりマシだ。……それに、終わってなんかいない」


 俺はスマホを取り出し(まだ圏外だが)、メモアプリを開いて見せた。


「君の配信スキルと度胸は認める。だが、コンテンツの方向性が間違っている。これからは『危険』を売るな。『安全』を売れ」

「安全……?」

「そうだ。俺がこのダンジョンの『絶対安全ルート』と『魔物対処マニュアル』を作る。君はそれを実演し、解説する動画を作れ。『誰でも安全に帰れるダンジョン攻略』だ。これなら主婦層や子供にも需要がある」


 俺の提案に、KEN-CHANの目が輝き始めた。

 

「そ、それだ! 『セーフティ・ダンジョン』! 新しいジャンルだ!」

「稼いだ金で、まずはちゃんとした装備を買え。ヘルメットは必須だ。いいな?」


 彼は何度も頷いた。

 こうして、一人の迷惑系配信者が更生した。

 だが、俺の説教動画の切り抜きが拡散され、SNSで「謎のコンプラおじさん」「守護神ガーディアン部長」としてトレンド入りしていることを、俺はまだ知らなかった。

「危険」ではなく「安全」をコンテンツにする。

編集長らしいプロデュースで、若者の命と将来を救いました。


しかし、SNSでの拡散力は凄まじく、ついに「国」が動き出します。

次回、おっさん、政府に拉致される。

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