第20話:『最強クラン結成? 冗談じゃない、俺は帰るぞ。』
崇拝者たちから逃げるように帰還。
気がつけば、そこは早朝のゴルフ練習場でした。
「師匠ーっ!」
「ソラ様ぁぁぁ!」
断末魔のような愛の叫びを聞きながら、俺の体は粒子となって消えた。
浮遊感。そして、芝の匂い。
◇
「……っと」
俺はよろめきながら、打席に戻った。
ゴルフ練習場。
手にはドライバー。目の前には、まだティーアップされたままの白いボール。
戻ってきた。
「ぜぇ、ぜぇ……」
息が上がっている。
体感では数時間ほどダンジョンを歩き回った疲労感がある。
だが、隣の打席の田中は、まだ素振りを続けていた。
「あれ、部長? 打たないんですか?」
どうやら、こちらの時間では一瞬だったらしい。
俺は汗を拭い、呼吸を整えた。
「……いや、打つさ」
俺はアドレスを取った。
不思議だ。さっきまで巨大なオーガと対峙していたせいか、止まっているボールがひどく簡単に思える。
インパクトのイメージが鮮明だ。
あのオーガの膝を砕いた時の感触が、手に残っている。
俺は無心でクラブを振り抜いた。
**バシュッ!!**
凄まじい風切り音。
ボールは一直線に飛び出し、250ヤード先のネットに突き刺さる――どころか、ネットを突き破り、遥か彼方の空へ消えていった。
「……え?」
田中がポカーンとしている。
俺も呆然とした。
ネットを破った? この老朽化した体で?
まさか……向こうで受けた「バフ」の感覚が、体に染み付いて残っているのか?
「ぶ、部長……今の何すか!? 音が大砲みたいでしたけど!?」
「……フォームを改善したんだ」
俺は震える手でドライバーをバッグに戻した。
シャフトに、微かにヒビが入っていた。
「田中。今日はもう上がるぞ」
「えっ、まだ始めたばかりじゃ」
「道具のメンテナンスが必要だ。……それに、少し体が重い」
俺は逃げるように練習場を後にした。
背後で田中が「すげぇ……あの歳であのパワー、何食ったらあぁなるんだ?」と呟いているのが聞こえた。
空を見上げると、突き破られたネットの穴から、青空が見えた。
異世界の騒動は御免だが、このスイングの感覚だけは、悪くない土産かもしれない。
「……次は、もう少しマシな世界だといいんだが」
俺は呟き、車へと乗り込んだ。
助手席のスマホが震える。
新しい企画書のデータが届いた通知だ。
タイトルは――『現代日本にダンジョンが出現! 配信者になって一攫千金!』。
「……嫌な予感がするな」
俺はエンジンをかけ、アクセルを踏み込んだ。
(第4章 完)
お疲れ様でした! 第4章「追放ざまぁ編」、完結です。
ゴルフスイングで無双し、現世でもネットを破壊するほどのパワーを持ち帰ってしまいました。
勇者たちは今頃、ソラの銅像(スイング姿)を建てていることでしょう。
次回、第5章は「現代ダンジョン・配信者編」。
会食中のトイレから転移!?
迷惑系配信者に、元編集長が「コンプラ」と「労災」を叩き込みます。
【読者の皆様へのお願い】
ここまでお読みいただきありがとうございます!
「ゴルフ無双わろた」「ミモリちゃん可愛い(重い)」と思っていただけましたら、
ぜひ**ブックマーク登録**と、
下にある**【☆☆☆☆☆】**評価をお願いいたします!
★5ついただけると、次の章もフルスイングで執筆できます!




