第19話:『勘違いするな。俺はただの外部監査役だ。』
勇者は反省し、パーティは再生しました。
しかし、ソラが示した圧倒的な「結果」は、彼らに強烈な誤解を植え付けてしまいました。
「あの……ソラ様」
ミモリが、頬を赤らめて俺に歩み寄ってきた。
勇者の謝罪を受け入れたはずの彼女だが、その視線は俺に釘付けだ。
「私、初めてです。私の魔法の価値を、あんなに正確に、あんなに高く評価してくださった方は……!」
「いや、俺は事実を述べただけだ」
「いいえ! 貴方様こそが、私の魔法を使いこなせる唯一の主です! 私、決めました!」
彼女は俺の手を握りしめ、恍惚とした表情で叫んだ。
「勇者パーティなんて辞めます! これからは一生、ソラ様の専属バッファーとしてお供します! お洗濯でもお料理でも、夜のバフでも何でもしますからぁ!」
……は?
俺は引きつった笑みを浮かべた。
夜のバフとは何だ。コンプラ的にアウトな発言はやめろ。
「待てミモリ。それは契約違反だ。彼らは反省しているし、再契約を……」
「師匠おおおおおッ!!」
今度は、回復したブレイドが俺の足にすがりついてきた。
「なんだ師匠とは!」
「今のスイング! あれこそ『剣の極意』ですよね!? 脱力からのインパクト、そして残心……! 俺の剣にはそれが足りなかったんです!」
ブレイドが目を輝かせている。
「俺も辞めます! 勇者なんて肩書きより、師匠の下で修行したいっす! その『ドライバー剣術』を教えてください!」
「これは剣術じゃない! ゴルフだ! ただの娯楽だ!」
俺の否定も虚しく、他のメンバーまで集まってきた。
「俺たちも『ソラ一家』に入れてください!」
「あのオーガを一撃なんて、どこの国の将軍ですか!?」
ダメだ。
俺が示した「論理」が、彼らの脳内で「最強のカリスマ」へと変換されている。
データを見ろと言ったのに、結局こいつらは「強い奴についていく」という本能で動いているだけじゃないか!
(……これだからファンタジー脳は!)
俺は頭を抱えた。
パーティを再生させるつもりが、俺を頂点とした新興宗教ができかかっている。
このままでは、ギルドマスターにされ、一生ダンジョンでゴルフをする羽目になる。
「……逃げるぞ、神! 回収しろ!」
俺は天に向かって叫んだ。
その時、救いの光が降り注いだ。
ナイスタイミングだ。
支援職はストーカー化し、勇者は弟子入り志願。
ソラを崇める「最強クラン」が結成される寸前です。
さあ、逃げましょう。定時退社の時間です。
次回、ゴルフ場へ帰還。
しかし、スイングに異変が?




