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ご都合主義について物申す。〜敏腕編集長は異世界出張(リテイク)で忙しい〜  作者: かるびの飼い主
第4章:数値(ログ)も見ずにリストラするのは、経営者として無能だから嫌いだ。

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18/22

第18話:『俺が強いんじゃない。バフ倍率がバグってるだけだ。』

迫り来るロックオーガ。

ソラは、ゴルフのドライバー一本で立ち向かいます。

しかし、ただ殴るわけではありません。編集チートとバフの合わせ技です。

岩の巨人が、俺を踏み潰そうと足を振り上げる。

 俺は動かない。ただ静かに、ミモリに指示を出した。


「ミモリ。俺にバフを掛けろ。……全力フルだ」

「えっ、でも、あの人は素人じゃ……魔力酔いしちゃいます!」

「構わん。俺の許容量キャパシティは無限だ。ありったけの強化を乗せろ!」


 俺の怒号に、ミモリが反射的に杖を掲げた。


「は、はいっ! 『マイティ・パワー』『ヘイスト』『アイアン・スキン』『シャープネス』……!」


 彼女の口から次々と紡がれる支援魔法。

 光の帯が俺の体に巻き付き、筋肉が内側から活性化する感覚。

 ……凄い。

 俺は【解析】の目で、自分自身のステータスが跳ね上がっていくのを見た。


> **ソラ攻撃力:10(中年男性)**

> **補正値:×500(ミモリの全力バフ)**

> **合計攻撃力:5000**


「……なるほど。これは勇者も勘違いするわけだ」


 全身に力が漲る。万能感。自分が神になったかのような高揚感。

 だが、俺は冷静だ。これは俺の力ではない。借り物の数字だ。

 だからこそ、この数字を最大限に活かす「技術スイング」が必要だ。


「グガアアアッ!」


 オーガの拳が振り下ろされる。

 俺はスッ、と左足を踏み込み、腰を回転させた。


「ファー(危ないぞ)!!」


 叫びと共に、俺はドライバーを一閃させた。

 狙うはオーガの膝小僧。

 カーボンシャフトがしなり、チタンフェースが岩の皮膚を捉える。

 インパクトの瞬間、俺は【編集権限】で、ドライバーの「硬度」を一時的に「オリハルコン級」に書き換えた。


 **パァァァァンッ!!**


 ゴルフ場ではあり得ない爆音が響いた。

 次の瞬間、ロックオーガの巨体が宙に舞っていた。

 膝を砕かれ、回転エネルギーをまともに食らった巨獣は、きりもみ回転しながら洞窟の壁に激突し、粉々になった。


「……ナイスオン」


 俺は美しいフォロースルーのまま残心し、ゆっくりとクラブを収めた。

 シーン……と静まり返る洞窟。

 勇者ブレイドは口をあんぐりと開け、ミモリは腰を抜かしている。


「す、すげぇ……! 一撃だ……!」

「あの硬いオーガを、ただの棒切れで……!?」


 ブレイドが震える声で言った。

 俺は息を吐き、乱れた襟を直した。


「勘違いするな。俺の腕力は一般人レベルだ。今のは全て、彼女のバフによる『係数』のおかげだ」


 俺は空中の数値を指差した。


「彼女の支援魔法は、対象のポテンシャルを500倍にする。……お前は、この『×500』という宝を捨てて、『1』の力で戦おうとしていたんだ。その愚かさが、数字で理解できたか?」


 ブレイドがハッとして、自分の手と、ミモリを見る。

 ようやく理解したようだ。自分が誰のおかげで英雄になれていたのかを。


「お、俺は……なんてことを……」


 ブレイドが膝をつき、ミモリに向かって頭を下げた。


「すまなかったミモリ! 俺が馬鹿だった! お前がいなきゃ、俺はただの猪だ! 頼む、戻ってきてくれ!」

「ブ、ブレイドさん……!」


 ミモリが涙ぐむ。

 よし、これで一件落着だ。

 不当解雇は撤回され、チームの絆は深まった。

 俺は満足げに頷き、帰る準備を――。


「……あ」


 ミモリが、熱っぽい瞳で俺を見つめていることに気づいた。

 その瞳には、勇者に向けられていたものとは違う、もっと重くて暗い光が宿っていた。

ドライバーショットで完全勝利。

すべては「バフのおかげ」と説明しましたが、その謙虚さが仇となります。


次回、ミモリの愛が重い。

そして勇者まで……?

最強のブーメランが襲います。

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