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ご都合主義について物申す。〜敏腕編集長は異世界出張(リテイク)で忙しい〜  作者: かるびの飼い主
第3章:婚約破棄は弁護士を通すべきだ。愛憎劇は法廷でやれ。

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第14話:『ヒロインvs悪役令嬢? いいえ、債権者と債務者です。』

断罪劇は、王子の敗北で幕を閉じました。

しかし、ソラが示した「徹底的な実利主義」は、純粋だったクラリス嬢を別の怪物へと変えてしまいました。

騒動の後、ローゼス家の馬車の中。

 俺はどっと疲れが出て、シートに深く沈み込んでいた。


「……やりすぎたか」


 王子の継承権凍結。国中が大騒ぎになるだろう。

 だが、これでクラリス嬢の無実は証明されたし、慰謝料で彼女の家も安泰だ。あとは俺が適当な理由をつけて辞職し、元の世界に帰るだけ……。


「セバス」


 正面に座っていたクラリス嬢が、静かに俺を呼んだ。

 顔を上げる。

 そこには、以前のおどおどした少女の面影はなかった。

 瞳には、冷徹な光。背筋は定規が入ったように伸びている。


「はい、お嬢様」

「貴方の言っていたこと、よく分かりましたわ。……愛などという不確定なものに投資していた私が愚かでしたのね」


 彼女は扇をパチリと閉じた。


「男は裏切ります。ですが、契約と資産は裏切りませんわ」

「……ええ、まあ、一般論としては」

「決めました。私、エドワード殿下から回収した継承権(担保)を行使して、この国を『買収』します」


 ……はい?


「あの無能な王子に国は任せられません。これからは、私が経営者オーナーとして、国を効率的に運営しますわ。愛も涙もいりません。必要なのは利益と秩序だけ」


 彼女の背後に、黒いオーラが見える気がする。

 悪役令嬢としての覚醒。いや、これは「悪役」を超えた「ラスボス」の風格だ。

 俺は冷や汗をかいた。


「お、お嬢様? それは少々、急進的すぎるのでは……」

「あら、貴方が教えてくれたことでしょう? 『甘えを捨てろ』と。……さあセバス、貴方は私の最高顧問(CFO)として、一生お仕えなさい」


 彼女が俺の手をガシリと掴む。

 その握力は、ドレス姿からは想像もできないほど強かった。


「逃がしませんわよ? 貴方という『有能な資産』を手放すほど、私は馬鹿ではありませんから」


 彼女の目が笑っていない。

 ブーメランだ。

 俺が王子に向けた「契約の鎖」が、今度は俺自身に向けられている。

 彼女は俺の教えを完璧に吸収し、俺以上の「論理の怪物」になってしまったのだ。


(……やばい。このままだと、過労死するまで国政をやらされる!)


 俺は本能的な恐怖を感じた。

 王子との対決の時より、今のほうが遥かに怖い。

「愛より金」に目覚めたクラリス嬢。

彼女は国を買収し、実質的な女王になろうとしています。

そして、その片腕としてソラを離そうとしません。


次回、第3章完結。

ソラの脱出(辞職)劇です。

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