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第二話

第二話

恩人との同居がスタートして2日ほど経ったある日…


 だんだんスーさんとの同居も慣れてきた…。にしてもこの人、本当に家事苦手だな!?

 明らかに1週間は溜まってる洗い物!ヨレとシワまみれの服たち!そしてゴミをそこら辺に捨てまくる!!

「スーさん。よく今まで、家の体を保ててましたね?」

「んー。まあ、前まで綺麗好きの同居人がいたんだよなー。」

「へー。どんな方だったんですか?」

「私の右腕。」

「へぇー!」

 帝都1の魔術師の右腕だなんて、きっとその人もとんでもない方だったんだろうなぁ〜。

「そんで私の旦那。」

「え!!!結婚なさってたんですか!!?」

「超意外って顔すんな!!するし!!結婚くらい!!!えー?もしかしてお前してないのーー?プププー!やーいやーい!!」

 くそぉ…!憧れの人がこんな低レベルな煽りをする人だったなんて…っ! 

「ってか!旦那さんにご挨拶させてください!!おれ、お二人のお家に住み着いちゃってるんですけどいいんですか!!?」

「あー…。うん、まあ、別にいいっていうか、ちょっと今そういう感じじゃない…っていうか…。」

「どういうことですか…?」

「その、もう、いない…から。」

「…! 離婚されたんですね。だから男と同居してもいいと…」

「ちがわい!!!」

 話を聞くと旦那さんは強力な魔族との戦闘中に亡くなってしまったそうだ。離婚だなんて不謹慎極まりないことを言ってしまったが、スーさんは「私をなんだと思っとんねん!」とツッコミをしただけで怒ってはいないようだった。

 あまり深く話してはくれなかったが、スーさんの大切な人について知れたいい日だった。

 

午後3時。スーさんは、書斎に籠って作業をしていることが多い。だが、午後3時になると、おやつを食べにリビングに戻ってくる。頭を使う作業?をしているらしく、甘い物を出すと喜んでくれた。

 スーさんとの距離を早く縮めるために、おれはこの時間に、なるべく何かを話すように決めた。

「スーさん、そういえば、聞きたいことがあるんですけど。」

「なんだよ。」

「スーさん達のパーティーは、今までどの様に洞窟を攻略していたんですか?」

これは、ずっと聞いてみたかった、冒険のプロ達の、正当な洞窟攻略術…!


 おれ達は、正しいか正しくないかで言えば、全く正しくはなかっただろうからな…。


 洞窟地下4層目

 『おっ!こんなところに金塊あんじゃん!!』

 『え!? …確かに本物だ。でもなんでこんなところに?』

 『多分ここら辺で死んだ冒険者が落としたとかだろ!もらってこーぜ!』

 『ほんとだぁー!ここにブレスレットもあるじゃーん♡』

 『いや、やめといた方が…』

 『んだよ!今更善人ぶって!リクだって落ちてる食料盗んだりするだろ!?』

 『誰も食べないなら貰った方がいいだろ!それに、金塊とは重みが全然違う!』

 『いーや違わないね!盗みに重さなんてねーんだよ!盗む時点で人のもの盗ってることは変わんねーんだからよ!!』

 ――正直、納得してしまっている部分もあった。洞窟内は、常に困窮している。準備を万全にしようと思っていても、持てる物資には限界がある。だから、他の冒険者から分けてもらうか、こうして盗るくらいしか、飢えない方法は無いと言っていい。

 …大して強くもない、横のつながりも薄いおれ達の様なパーティーには、実質一択だ。

 

 誰かが誰かの死で生き永らえている。そんな現状をおれは、「しょうがないもの」として流してしまっていた。だが、国内最強と謳われるようなスーさん達がそんなことをしているとはまるで思えない。一体どうやって…


 

「洞窟?あー、全く行かなかったなぁ。一回くらい行ったかな?」

「え!?」

 回答は、あまりにも衝撃的なものだった。

 誰もが得られる一攫千金、中に入るまで何も分からないドキドキ感と攻略の達成感。冒険者なら必ず憧れるビッグドリーム、それが洞窟探索。……今まで、そんな認識で二十余年生きてきて、こんな人を初めて見たからだ。

「大体、私たち冒険者のやるべきことはなんだぁ?市民を守ることだろ!変な洞穴で宝漁るより、もっとすることあんだろ?」

 それは、あまりにも図星で、ビッグドリームなんて望んでいた自分があまりにも馬鹿げていて、何も言えなかった。

 やっぱり、上に立つ人は、図らずとも志高く、自然と世のため人のための役回りにつくのだと、簡単には埋めることのできない大きな差を実感した。

「まあーでもそれはなぁ、しょうがない部分もあるのかなぁー。リクも冒険者なるって決めた時、こんなチラシ見なかった?『洞窟で一攫千金!モンスター倒して大富豪!』みたいなさ。」

「! まさに、そういうチラシを何枚も見ました…。」

「そーなんだよなあ。そーいう甘い蜜でおびき寄せて冒険者を増やそうって魂胆なんだよ。上の人らはさあ。」

「え!じゃああれって嘘だったんですか…?」

「うーん、嘘ではないと思うけど、冒険者だって地上での依頼もあるから、ずーっと洞窟に潜って資源乱獲!ってわけにも行かないじゃん?それに、正直洞窟なんてコスパめっちゃ悪いと思うよ。」

「え?なんでですか?」

「だって、行きやすくて簡単な洞窟なんて、もうほぼ資源取り尽くされてるじゃん。旨みあんまないっしょ?」

その通りだ。思い返してみれば、何回洞窟に潜ったって、生活がギリギリの月だってあったのに、どうしてそんな簡単なことに気付かなかったんだろう。


…眩しい。ただただ。

おれ達は、スーさんが民を救い、尊敬されている間、ただただ泥棒を働いて、日銭を稼いでいただけに過ぎなかったんだ。――最低だ。こんなの。

「…って、おい!何で泣いてんだよ!」

「すみません、ちょっと、頭冷やさせてください、」

「えぇ〜、大丈夫かあんた、…まじで大丈夫?」

「はい、すぐ戻ります。」

 そそくさと部屋を出て、庭のベンチにうずくまる。


「大丈夫か?」

「スーさん。すみません、1人にしてください。」

「…私も昔すげー悩んで、付き合ってすらない頃の旦那に当たってさ、1人にしてって突き放したことあったんだよ。」

「……」

「そしたら、『君の悩みが晴れるところが見たい!君が、悩みに対してどう対処するのか気になるんだ!一緒に悩ませてくれ!』とか言ってさ!正直まじやばいやつだと思ったね!

 …でも、私の悩み聞いて、何時間も一緒に悩んでくれたりさ、なんか、どーしよーもない悩みだった気がするんだけど、……あの人、じーっと私の目を見て、すっごい真剣に話聞いてくれてて、2人で夢中で話してたら解決した気がしちゃって、すぐ忘れちゃったんだよねぇ〜…」

「…旦那さんは、どんな風に言って解決してくれたんですか?」

「あはっ!それも忘れちゃった!

 …だから、まだ若いし、人生悩むことめっちゃあるけど、人に話したら案外どーでも良くなっちゃうかもよ?」

「スーさんの方が俺より若いじゃないですか。」

「はははっ。それはそう!」

「ふふ。すいません、おれも、どーでも良くなったかもしんないです。」

「お!それは良かった!」

「もっと、冒険のコツとか、続き。いっぱい教えてください。」

「任せな!」


 この人の方が、何倍も背負ってきてるんだ。おれだって、挫けちゃいけないな。

 

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