トラックに撥ねられても、自分は会社へ向かっている
ドーーーーンッ
「!?……あたたたた……!?」
タイトル詐欺にはなるが、自分はトラックには撥ねられていない。
だけど、怪我をしている。現在、めっちゃ体痛い。
ドパァァ
その痛さがどこから来るかと言えば、身体である。
地面に叩きつけられ、ゆっくりと起き上がろうとして、身体から発する異常事態のせいでまた地面に倒れる。それでも、今度は身体をゆっくりと起こしながら
両足は……左足に違和感がある。どっちも血が出ているな……。両腕は。右腕は無傷か、掌が地面にぶつかった衝撃で皮膚が剝けている。左腕。肩が上手く上がらない。骨をやられた?……いや、軋むような痛みじゃなくて、繋がってねぇような違和感。これは筋肉みたいだな。
っていうか、血が出過ぎ
「これは仕事に影響が出るな」
無傷だったのは右腕だけ。
歩ける。
「とりあえず、出社できるな」
救急車を呼べよ!!
病院に行けよ!!
そーいうツッコミを思うかもしれないが、これが社畜の辛いところである。ホントなら休みたいんだが
、色々な事情もある。骨はおそらく折れているか、もしくはヒビくらい入っているのだが、ホントに不幸中の幸いは
「胸。……肋骨なら問題ねぇ。漫画のキャラ達は肋骨がいくら折れても、戦ってる。1か月くらいならいける」
骨が折れている箇所が業務上、問題のないことである。それよりも至るところからの出血である。
「運ぶ荷物に血がついてちゃ、今日の仕事になんねぇ」
身体からアドレナリン?ってのが溢れ出して、かなりの興奮状態になり、汗と共に痛みが落ち着いていく。これを1日くらい出してると、翌日以降に怠さも来るから困ったもんだ。今日は働けと身体に指令を出して、歩いて行こう。
タクシー代とか払いたくもねぇ。
◇ ◇
辛い時に奮い立つとうのは、よくやっている側の社畜である。
10年以上も社畜をやっている。最初だったら戸惑っていたけれど
「もうここまで来るとこんなものですね。歳のせいで回復力が落ちたのを実感しました」
実配達員は笑いながら答えるのであった。もちろん、怪我をしている。
周りから見れば恐ろしいと思うけれど、自分達からすれば全然恐ろしくない事だけど
「足の1つ、2つが怪我しても仕事をいつも通りにこなす術は持ち合わせてます」
「いや、病院行けよ!!なにその技術、恐ろしいよ!!」
圧倒的な経験値と熟練の技術。若さによる力と異なる、老獪な技術によって怪我をカバーしながらの業務はできる。毎日全力で我武者羅に働くのではなく、身体に負担がかからない適度な業務というのがある。
「実、行けるのか?」
「問題ないです」
「じゃあ、仕事頼む」
「上司ーーー!?あんた、こんな状態の人間を働かせるんですかーーー!!?」
「本人がOK出してるならいける。飲酒運転と違うから問題にならない」
全力な業務はこなせないけれど、周りに合わせられる程度の業務はできるからOKである。
実際にできるからな。
血が止まれば、絆創膏を10枚くらい使って、血をふさげば問題ない。神経に近いからズキズキする痛みが苦手なんだよね。とりあえず、ここから治ってくれよ。皮膚が出来上がるまでの辛抱。
とはいえ、肋骨のこれは時間が掛かるな。
そして、骨の異常に関しての即効性のある治療というのがない。シンプルに言えば、安静するしかなく、それでも業務をするなら痛み止めを貰う以外の選択肢しかない。
「だったら、いらなくね?」
「そーはならんやろ!!」
人にもよるし。骨の痛みが出て来るのは、怪我から1週間後とかだったりするので、即座に行っても分からないのである。おまけにアドレナリン?が出まくっているせいで、身体はその時に動けるのだ。安静するためにある本能であるのだが、それを仕事に転用できるのが立派な社畜である。
「いけませんよ!!こーいうの!!休ませましょう!代わりの人を立てるとか」
「「………………」」
そー思うじゃん。誰だって、その意見が出て来るのは当たり前なのだが。
実や山口部長が、問題なくやれると発言している、どうしようもない状況。
「「GW。お前が全部出社する?俺達、物流の仕事は365日やってるんだぞ」」
「…………そ、それはその。私は家族と、……旅行するから」
「「GW明けの激務、俺達抜きでできる?GWなしでその次の週も普通に働ける?」」
「1人でもいて欲しいです……」
人の不幸のために、自分が不幸になるなんて、……会社に出社できる程度の傷であるのなら
「頑張ってください!」
というのが、正解になると思う。
お互いに予定が全部壊れるのは避けたいんだ。
GWが仕事だと、次の週にお休みをもらうんです。(前にもらう方もいるけど)
なので、GW手前でやらかすと、とんでもねぇ勤務数になる可能性が高いんで、ここは我慢が残念ながら正解だと思います。