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41話 生徒会

「フィル〜何か君宛てに届いてるよ」


 それは突然の事だった、ライの決闘を見てから数時間、部屋で宿題を解いているとホープが手紙らしきものをひらひらとさせながらこちらに持ってきた。受け取ってみるとしっかりとした手紙で封も中々凝っている。


「誰からだろう、師匠とかかな」


(だけどまだ入学してから数日だぞ?早くないか?)


 早速開けて中身を確認する、そこに書いてあったのはたった一行。


『ファスカです、さっさと挨拶しに生徒会室に来るように』


(こんな良さそな紙使って書く事それだけ??)


 送り先はまさかのファスカ様、確かに此処にきてから一度もまともな会話をしていなかったがこんな物まで送ってくるなんて暇なんだろうか。


「誰からだった?」


「あ〜ファスカ様だよ、実は知り合いでさ。挨拶に来いって」


「フィルってすごく顔が広いんだね…僕なんて一度話した事ないよ」


(話した事ないか、まぁ普通の生徒は四代貴族と話す機会はないよな)


 ここで俺は少し気になった、ファスカ様は普段学園でどうゆう振る舞いをしてるのか。よく『貴族ってめんどいわよね』と言っていた人だ、ここでも暴れているのだろうか。


「なぁホープ、ファスカ様の印象ってどんなだ」


「一言で表すなら傑物かな、あの人を超える様な凄い人なんて人生で二度と見れないんじゃないかって思えるぐらい。だって僕より一つ上の人がロードを倒しちゃったんだよ?学園は大騒ぎだったよ」


 確かにそうだろう、自分は勿論驚いたし師匠やダグ爺も今までに見た事ない顔をしていた。たった十数年しか生きてないまだ子供と呼べる年齢の子がロードを倒す、やはりこれはとんでもない異常事態。


「分かる、俺もファスカ様より凄い人なんていないんじゃないかって思うよ。勝てるのか不安になる時もある」


 ロードに勝つと言うのはファスカ様を超えると言う事、言うだけなら簡単だが行うとなると難しいなんてもんじゃない。


「取り敢えず今日の放課後行くよ、積もる話もあるし」




 ▽▲▽▲▽▲



 そして授業が終わり、生徒会室に向かう為教室を出ると廊下に一人の男が立っていた。


 特徴的なマッシュルームのような髪型をしており、黒い髪が頭の形に沿って綺麗に整えられていた。


「君がフィル君だね、僕は生徒会副会長のギル。君を連れてきてって会長がうるさくてね、来てくれるかい」


 ギルと名乗った男は軽く頭を下げた。副会長ということは相当優秀なのだろう、ファスカ様の右腕的な存在なのかもしれないが苦労人なのは分かる。


「今から行くつもりでした、寧ろお手を煩わさしてしまい申し訳ございません」


「気にしなくていいよ、ここの生徒は優秀だから生徒会なんて暇でしょうがないんだからこうやって会長の願いを聞くことぐらいしかしないし。じゃあ行こっか」


「ギル先輩も大変ですね」


「会長の無茶振りは楽しいからいいよ、それにあの人が喜ぶと思うと嬉しいしね」


 俺たちは並んで廊下を歩き始めた。ギル先輩の案内でようやくファスカ様との再会を果たすことになる。


 少し引き締める為ネクタイに手を掛けるととあることに気づく。


「…ギル先輩足音無いんですね、そうゆう歩法ですか?」


「うん、人を驚かすのが好きでずっと使ってたら常時これになったんだよね、会長が濃すぎるのもあるけどおかげで影が薄いんだ。君にも無視されるかと思ったよ、実際みんな悪気はないんだろうけどいないものかのように扱ってくるからね」


「中々に大変なんですね」


「こうゆうのも人生だよね、逆に出会う人の一人一人が印象に残るから悪く無いよ。多分君のことも僕は忘れない、前々から会長から聞いていたし」


「ファスカ様から?」


「うん、強くて可愛い後輩だって言っていたよ。会長は基本的に興味ないことにはぐーたらで行動しないから君に会う為だけに僕を寄越した…君はすごく魅力的な人間ってことだ」


 そうゆう先輩の瞳は飲み込まれそうな程黒くて不思議と嫌悪は湧かなくて…それが変に怖かった。



 ▽▲▽▲▽▲




 生徒会室の扉の前に着くと、ギル先輩は軽くノックをしてから扉を開けた。


「会長、フィル君を連れてきました」


「入っていいわよ」


 室内は思っていたより広く、奥の大きな椅子には彼女が座っていた。以前と変わらず堂々とした佇まいで、まるで王座に座る女王のような威厳を放っている。


「久しぶりね、フィル」


「お久しぶりです、ファスカ様。お手紙ありがとうございました」


「良かったわ、今日来なかったならやってたから」


(主語って大事なんだな…なんだやってたって、怖いよ)


「まぁそれはいいわ、それよりレベル4討伐おめでとうフィル」


「いやいや、ファスカ様はレベル5を討伐してるじゃないですか。ファスカ様より強くならなきゃいけない俺にとってはあくまで通過点です」


「フィルはいいわね、常に強さに飢えて貪欲な所が私は気に入ってるの。私の強さをまじかで見て尚闘志が燃えてる、ただ実直に剣を振り魔法を鍛え闘気を練り上げる…あなたの行動一つ一つが自分の言葉を本気だと証明している。本当に私を倒してロードになろうとしてる」


 舐め回す様に自分の五体を見定められてるのを感じる。


「最高よフィル、あなたには私に剣を向ける資格があるわ。断言出来る、貴方はこの学園にいる生徒の中で五本指に入る強さ、純粋な剣士なら私の次に強い」


「…確かめてみますか?俺が今のファスカ様とどのぐらい差があるか」


「いいお誘いね、だけど自分の立場を理解しないで女性をエスコートしようとする男はダメよ?もしかして資格があると言っちゃったから勘違いしちゃったのかしら」


 パリン


 覇気が場を支配する、ファスカから放たれる圧倒的な威圧感が部屋に満ちていく。


 パリン、パリンと小さな音を立てながら、いくつかのガラスが砕け散った。


「あー、また窓ガラスが…」


 怒っている、親しき仲にも礼儀あり、ファスカ様の本気の威圧。普通ならすぐ謝るところだがむしろ俺は笑顔を浮かべた。この圧倒的な力の差を前にしても屈してはいけない。


 これが俺の目指すべき高み、越えなければならない壁なのだ。


「失礼なのはわかってます、でも俺は本気ですよファスカ様」


 俺の反応を見て、ファスカ様の表情が少しずつ和らいでいく。


「…ふふっ」


 小さく笑い声が漏れる。


「これでもフィルのことは結構分かってるつもりよ?貴方は賢い、必ず負けるという勝負はしない、私との力量差は分かったはず…それなのに私が剣を抜いててもおかしくなかった状況で一歩も引かなかったってことは何かしらの手はあったんでしょ?でもそれを使おうとすらしなかったってことはまだ扱いきれない技のようね」


 余裕のある笑みを浮かべるファスカ様が俺の剣を撫でる。


(ここまで見透かされるとどっちが試そうとしたか分かんないな)


「いいわよフィル、その何かを扱いきれる様になったら挑みに来なさい、その時はちゃんと正々堂々叩き潰してあげる」


 だからちゃんと登ってきてね、そう言ってファスカはフィルの目を見据えた。


「必ず挑みに行きます、待ってて下さいね」


「ふん、色々話したいことあったのにそうゆう気分じゃ無くなっちゃったわ。ギル、窓の修理手配しておいて。私は出掛けるから」


「一応何処へ?」「魔物をぶっ倒しに」


 ファスカ様はそう言い捨てると、なんと窓から飛び出していった。ひび割れたガラスにとどめを刺すように突き破り、あっという間に姿を消してしまう。


 俺とギル先輩は呆然とその背中を眺めるしかなかった。


「あの…手伝いましょうか?」


 罪悪感に駆られて声をかけたが、ギル先輩の顔を見て言葉を失った。笑顔は浮かべているものの、まったく目が笑っていない。


「慣れてるから大丈夫だよ、はは」


 その乾いた笑い声が妙に空虚で、俺は居た堪れなくなった。


「本当にすみません、俺が余計なことを言ったばっかりに…」


「気にしなくていいよ、会長は気分で窓割るから、儚いものだよね」


 ギル先輩は既に手帳を取り出して、窓ガラス修理の手配を始めている。その慣れた様子が、これまでどれだけ同じような状況を経験してきたかを物語っていた。


「じゃあ俺は失礼します…本当にすみませんでした」


 申し訳なさでいっぱいになりながら、俺は生徒会室を後にした。

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