40話 反省とは形から
目の前に現れたアーサーは何も言わずこちらを見ている、そんな態度にカチンときたサンドラが勢いよく立ち上がる。
「何見てんの?てか、負けたんだから私達に近づかないでよ、そうゆう条件だったじゃん」
そう、あの時口約束とは言えアーサーが負けたら二度と近づかない、サンドラに謝るというニつの条件。後者はともかく前者は守ると思っていたが…
「…すまなかった」
アーサーは深く頭を下げた。その姿は昨日までの傲慢な態度とは打って変わって、心底申し訳なさそうに見えた。
「サンドラ、君には本当に失礼な態度を取った。詫びよう」
声は震えていた、本当に反省しているように聞こえる。
「君には君の意思があって、君には君の価値がある。それを僕は理解していなかった、ただの傲慢な子供だった」
サンドラは驚いていた。こんなに素直に謝られるとは思ってもいなかったからだ。
「僕は生まれながらにして特別だと思い込んでいた。だがそれは誰しもそうだ、皆特別になれる資格がある。そして…ライ」
アーサーの視線がライに向けられる。
「僕は平民である君を見下していた、でも君は僕に立ち向かい勝利した。誇っていい」
もう一度頭を下げるアーサー、これにはサンドラも心を動かされ始めていた。
「アーサー…」
「僕は変わる。今度こそ本当に変わる…許してくれ」
「え、いや…まぁそんなちゃんと謝ってくれるなら、まぁ…いいけどさ」
サンドラの許しを経て、アーサーはゆっくりと顔を上げた。
そして—
「よし、いまいいと言ったな、ならこれで謝罪は終了だ」
突然、アーサーの表情が一変した。先ほどまでの反省の色は一切消え失せ、いつもの笑みが浮かんでいた。
「え?」
サンドラが困惑する。
「ふん、謝罪は疲れるな。でもこれで僕たちは和解したわけだ」
まるでさっきまでの態度が演技だったような変化に、ライとサンドラは呆然とした。
「ということでサンドラ、今度こそ僕とチームを組もうじゃないか!」
「は、はぁ?」
「僕はちゃんと謝った。君も許してくれた。なら今度は僕の頼みを聞いてくれてもいいだろう?あぁそうか、勿論ライも一緒で構わない」
完全にアーサーのペース、ライは現実逃避をせず反論する。
「ちょっと待てよ、さっきまでのは何だったんだ?」
「何って、謝罪だよ。ちゃんと心を込めて謝っただろう?君たちも感動してたじゃないか、そして許した、違うか?」
「してねぇよ、勘違いだわ」
「まあ、僕も大人だからね。時には頭を下げることも必要だと理解している。でも謝罪は終わったんだから、もう僕は四代貴族、敬語を使いたまえよ」
もはや呆れるしかない、これがアーサー節、面の皮が厚いどころではない。
「敬語って…あんたさっき自分が間違ってたって…」
「あぁ、それは自分の間違いと戒めの為の謝罪だよ。謝罪は謝罪、現実は現実。僕は依然として四代貴族だし、君たちのほうが下だ」
アーサーは当然のように言い放つ。
「チームを組もう、君達に選択権はない」
『こいつマジで何なんだよ…』
アーサーの発言にザックは困惑、サンドラは怒りが再び爆発した。
「ふざけんじゃないわよ!あんたが負けた時の条件、もう忘れたの?」
「条件?」
サンドラの言葉に、アーサーは首を傾げる。
「二度と近づかないって約束したでしょ!それなのになんで平気で組もうなんて言ってるのよ!」
勝負に勝った側として、当然の権利を主張、これは四代貴族だろうがなんだろうが関係ない。
だがアーサーは冷静に言い放つ。
「サンドラ、本当にいいのか?」
「何が?」
「僕は四代貴族、君たちはそんな僕に喧嘩を売った…そんな奴らのチームに入る馬鹿がいると思うか?」
(なるほどね…痛いところついてくるな)
ライが悩んでいたことの一つだった、アーサーに喧嘩売って勝ったはいいが、チームに必要なのは最低三人。だが入ってくれる命知らずなんてクラスにはいない。
「だがら僕と組むのが一番合理的だ、何より僕の実力はライ、君がよく知ってるはずだ」
「負けたくせに何言ってんのよ」
「確かに敗北した、だから決めるのは君だライ」
サンドラとライは顔を見合わせた。この男の厚かましさは想像を超えていると今更理解しようともう遅かった、そんな想像を超えた奴に目をつけられたのだから。
「君たちには選択肢がないんだよ。僕と組むか、この学園から去るか。どちらが賢明かは明らかだろう?」
『どうすんだよライ!去るはダメだろ?』
(あぁ、退学は論外、それに実際こいつは強い。こーゆー性格になるのも頷ける実力、慢心さえなけりゃ今後間違いなく役に立つし四代貴族って地位もデカい)
四代貴族の立場、実力、態度に性格。あらゆる面を考慮してライが導き出した結論は…
「しゃーねーわな、よろしく頼むぜ」
ライの言葉に、アーサーは満足そうに微笑んだ。
「やっぱり君は賢いな、ライ。感情よりも現実を優先して判断できる。それこそが真の知性だよ、安心したまえ、僕たちが組めば最強の班になる。君の武術と僕の剣、そしてサンドラの魔法があればね」
「ちょっとライ、本当にいいのよ?こんな奴と一緒で」
サンドラはまだ納得していなかった、アーサーの態度が許せないのだ。
「サンドラ、俺だって気に入らねぇけど。でも現実的に考えろ。他に選択肢がないんだから仕方ない、それにこいつの実力は本物だ。性格は最悪だけど、役には立つ」
「そうそう、性格は余計だが、まぁ今から僕達は仲間。多少の不敬は許す」
サンドラは複雑な表情を浮かべていたが、最終的に納得のため息をついた。
「…ライがそう言うなら、しょうがないわね」
彼女はライの判断を信頼した。感情的には受け入れがたいが、理性的に考えれば最善の選択だと理解できる。
「よし、それで決定だ、これで僕たちは正式にチームメイトというわけだ」
『こいつと組むなんて、先が思いやられるぜ…』
ザックの呟きに同感しかない。しかし、もう決まったこと、アーサーという問題児と共に歩んでいくしかない。
こうして奇妙な凸凹チームが完成した。




