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36話 魔法確認

「つまりこの栄醒ヘルトを経ると人は遥かに強くなることが出来る…という事で今日の授業は終わりだ、連絡はなし。ではまた明日」


授業が終わると、フィルはトニカと共に急いで空き教室へ向かった。扉を開けると、既に二人が揃っていた。


「遅れましたシェアト様〜」


「大丈夫だトニカ、そんなに焦るな」


シェアト様が振り返って声をかけ、レイバンは教室の後ろで腕を組んで立っていた。


「すみません、遅れました」


「いや、時間通りだ。さて、全員揃ったところで始めよう」


シェアト様は教室の前に立ち、三人を見回した。


「改めて、今日からフィルが我々のチームに加わることになった。なのでまずは自己紹介から始めよう」


「私はシェアト・シュヴァリア。魔法は家系魔法の「覇励ビヨンド」、覇励ビヨンドの能力は自分を中心に周りの者を強化できる円を展開する。展開した円が小さければ小さいほど強化も強くなる。中距離から近距離での戦闘が主だ」


続いてトニカが立ち上がった。


「トニカ・ベルフィオーレです。固有魔法は『停止ストップ』。魂がないものの動きを止めれます、物が大きければ大きい程停止時間は短くなります。主に遠距離からの支援攻撃を担当します!」


「レイバン・グレイ。固有魔法は『念動力テレキネセス』。遠距離から中距離での防御と攻撃を行います」


俺以外の三人が説明し終わり、全員の視線こちらに向けられた。


「フィルです…固有魔法は「創造クリエイト」自分が構造や材料が分かっていればなんでも作れるんですが…魔力を大きく使用するので余り使いません、近距離戦闘が得意です」


創造クリエイトか、中々面白い魔法だ」


シェアト様が興味深そうに呟いた。


「では実際の戦闘スタイルを確認しよう。まずは各自の得意な魔法と戦い方を詳しく話し合おう」


「俺は地と火の二属性、仲間を守る壁を作ったり、火での広範囲攻撃が得意です」


「私は水と地の二属性で、水属性魔法の回復だったり停止ストップで罠を仕掛けたりします」


トニカが続けた。


「私は風と光と水の三属性、全体の指揮などを担当している、戦闘は状況に応じて前衛も後衛もこなせるが個人的に中衛が指揮を出しやすいな」


シェアト様の説明を聞いて、フィルは改めてチームのスペックの高さを感じた。そして何より驚くべきはシェアト様が三属性持ちと言うことだ。


(俺が知ってる純粋な三属性持ちはバーレイン様ぐらい…本当に珍しいんだよな)


「フィルはどうだ?」


「俺は基本的に剣での近接戦闘です。魔法は無と風で、身体能力には自信があって…あと特異体質で闘気と魔法が邪魔し合わないです」


「無属性は剣士と相性がいいからな。それに特異体質までそんなものとは剣士になる為に生まれたと思えるレベルだ」


感心した様にレイバンが呟く。


「では実際に魔法を見せ合おう。言葉だけでは伝わないこともある、お互いの能力を把握することが連携の第一歩だ」


そう言うとシェアト様は中央に移動し、魔法を唱える。


覇励ビヨンド


シェアト様を中心に薄い金色の円が展開された。円の範囲は教室を覆うほどで、その中にいるフィル達は身体が軽くなったような感覚を覚えた。


「これが覇励だ。範囲を狭めれば強化効果も上がる」


円がみるみる縮小し、シェアト様の周囲二メートルほどになると、フィルは明らかに筋力が向上しているのを感じた。


(これは…無衣セル・ギアスレベルの強化!これを全体に出来るのか?凄すぎる!)


「信じれない…これだけ強化されるなんて」


「じゃあ次私!」


次にトニカが前に出て机を投げた。


停止ストップ!」


投げられた机が完全に空中で動きを止めた、触っても動く様子はなく固定されてる様だ。


「机程度なら一日中行けるよ」


十秒後、机は何事もなかった様に動き壁に衝突した。


(壁に?勢いは消えないのか…これは使えるな)


「俺の念動力テレキネセスは」


レイバン机を指差し操作する。教室中の椅子が一斉に宙に浮き、整然と並んだ。


「おぉすごい」「こんなものですごいと言われてもな、まぁもっと広範囲で岩なども持ち上げれる」


机はゆっくり地に着き、残されたフィルの番が来た。


「えっと…創造クリエイトはこんなかんじで」


フィルの手元に小さい短剣が出現する。


「魔力消費が激しいので、普段は使わないんです。出しても意外な一手に使うぐらいで」


「十分だろう」


シェアト様が満足そうに頷いた。


「フィルが入れば私が自由になる、かなり柔軟な戦術が組めるな」


「フィルとシェアト様の覇励ビヨンドを組み合わせたら、相当な破壊力になりと思いますが合わせらるかが懸念点ですね」


「私の停止ストップでも支援できますし、回復で後方支援も可能だから私は大丈夫かな」


「よし、これで基本的な能力は把握し合えた。では次は…」


シェアト様が話し続けようとした時、教室の外から急に騒がしい声が響いてきた。


「おい、マジかよ!」


「四代貴族の一年生が決闘だって!」


「え、決闘!?誰と誰が!?」


「ペルシオン家のアーサー様と平民の子らしいぞ!」


「うわぁ、それヤバくない?」


「見に行こう見に行こう!」


廊下を駆け抜ける足音と興奮した声が次々と聞こえてくる。


「決闘?」


トニカが驚いた顔でシェアト様を見上げた。


「なんだ、随分と騒がしいな」


レイバンが眉をひそめながら扉に近づくと、廊下がざわめいているのが分かった。


「ちょっと様子を見てみるか」


フィルが扉を開けると、廊下には生徒たちが群がっていて、みんな興奮して話している。


「すみません、何があったんですか?」


近くにいた二年生らしき生徒に声をかけた。


「あぁ、君たち知らないの?四代貴族のアーサー様が平民の一年生に決闘を申し込んだんだよ!」


「決闘!?」


「そうそう!授業中に何かもめて、アーサー様が平民に馬鹿にされたらしく、決闘を申し込んだらしい!」


「えぇ…それは…」


「もう中庭に人が集まってるよ!見に行かない?」


二年生が去っていくと、廊下にはまだ興奮した生徒たちの声が響いている。


「四代貴族が決闘なんて滅多にないからな」


「平民の子、大丈夫かな」


トニカが心配そうに呟くが俺も心配だ。平民と四代貴族なんて決闘にすらならないただの私刑だ。


(一年の四代貴族…あの金髪の子か)


「どうする?見に行ってみるか?」


「いや、いいでしょう。どうせアーサー様が勝つ、わざわざ見にいくものでもない」


レイバンが冷静に言った時、フィルは急に嫌な予感が頭をよぎった。


(待てよ…普通平民が喧嘩を売るか?そんな馬鹿のことするのか?もしするならそれは…)


ふと、ライの顔が浮かんだ。


(いや、まさかな、ライは大人だから、そんなまさか授業初日に喧嘩を売るなんてそんな……一応聞くか)


「その平民の一年生の名前、分かりますか?」


まだ廊下にいた別の生徒が振り返った。


「あぁ、確かライていう子だったと思うよ」


「ライ…?」


フィルは固まった。


「ライですか??」


「そう、そう。知ってるの?」


「…いや」


フィルは冷静に、冷静に状況を俯瞰しようと頑張った、頑張りはした。結果脳は現実逃避を選択、フィルは固まった。


(いやだめ!どうゆー状況かまったく分からないけど何かしら理由はあるはず…見に行かなきゃ)


「どうかしたのフィル?」


「すいません、ちょっと決闘見てきてもいいですか」


「ん?まぁいいが?知り合いか?」「はい」


「ならば我々も一緒に行こう、四代貴族のアーサーがどの程度の実力か見ておくのも悪くない」


「すみません、ありがとうございます!」


フィルが頭を下げると、シェアト様が軽く頷いた。


「では急ごう。もう始まっているかもしれない」


四人は急いで教室を出て、興奮した生徒たちの流れに混じって決闘場へと向かった。


(ライ…なんで決闘なんてことに。何か巻き込まれたのか?)


フィルの心配そうな表情を横目に、シェアト様は静かに歩いていた。何も聞かず、何も言わず、ただフィルの気持ちを察してくれているのが分かった。


「あ、ありがとうございます、シェアト様」


「気にするな」


短い言葉だったが、その優しさにフィルは救われた思いだった。

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