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28話 ノジオン学園

 正門をくぐると、すぐに体格の良い中年の男性が待っていた。がっしりとした肩幅に筋肉質な腕、まるで元軍人のような風格を持つ。髭も濃く、一見すると怖そうだが、その目は温和だった。


「君たちがフィルとライだね。私はオンドルフ。学園の教務を担当している者だ、よろしく頼むよ」


 オンドルフ丁寧に頭を下げた。物腰が柔らかそうな人だとフィルは感じた。


「よろしくお願いします」「こちらこそよろしく頼むぜ」


 フィルとライもそれぞれ挨拶を返す。


「話は聞いてるよ、フィル君はおれのクラスになるだろうから今後ともよろしく頼む。もちろんライ君だって困ったら頼ってくれて構わない。ってことで早速ついてきてくれたまえ、寮へ案内しよう」


 オンドルフ先生は手招きし、二人を校内へと案内した。門を過ぎ中庭を通り抜けると、学園の建物群がより近くに見える。


 石造りの重厚な建物が整然と並び、歩道も美しく整備されている。その広さは一個の街の様で、事前に多少の説明は受けていても衝撃を受けざるを得ない。


「ここが男子寮だな、君たちが3年間過ごす場所だ」


 先生が指し示したのは、メインの校舎から少し離れた場所にある7階建ての建物だった。蔦が壁面を這い、年月を感じさせる風格がある。


「寮は学年ごとに分かれてる。1年生は2、3階、2年生は4、5階、3年生は6、7階。1階は共有スペースだ。フィル君は2年への編入で5階、ライ君は1年生だから3階になる。この寮には沢山の生徒が住んでいるが、家から通学する学生もいるから全員がいるというわけではない」


「共有スペースが気になるな、何があんだよ先生」


「今から案内してあげよう」


 寮の中に入ると、1階には談話室や勉強スペースがあった。木製のテーブルと椅子が置かれ、暖炉もある。学生たちがくつろげる空間として設計されているようだ。


「食事はここで取ってもいいが大抵は自分の部屋だな。因みに門限は二十二時まで、しっかり守れよ」


 階段を上がりながら説明が続く。3階の廊下は清潔で、等間隔にドアが並んでいる。


「ここがライ君の部屋だ」


 オンドルフ先生が3階のドアを開けた。中には2段ベッドと机、本棚、シャワー室、トイレが置かれていた。


「なんでも揃ってんな、これじゃあ不自由はないな」


「割りかし広いけど…なんで2段ベットなんですか?」


「あぁ、普通は一つの部屋に二人なんだよ、ライ君は偶々一人なだけさ。フィル君にはルームメイトがいるぞ?」


(まじですか、いやでもそうか、そりゃあいるか。いない方が嬉しかったけど…いい人だといいな)


 フィルは人といるのが好きな方ではあるがそれはそうと一人の時間も欲しいタイプなのだ。睡眠する場所というプライベートゾーンでは一人でいたい派であった。


「じゃあ次はフィル君の部屋だな」


 5階に上がり奥へ進む、一番奥の所に部屋があった。ドア前にはホープ!と名前が書いてある。


「ホープ?」「君のルームメイトの子の名前さ、いい子ではあるよ」


「含みのある言い方だなぁ、訳ありか?」


「いや?少し変わっている子ではあるがそれだけだ」


 少しの不安と共に扉を開ける、部屋は綺麗に片付いているがところどころに生活感が見える。


「じゃあここに荷物を置いて校長室へ行こう。校長先生が会いたがっていたからね」


 二人はそれぞれの部屋に荷物を置き、身なりを整えてから1階でオンドルフ先生と待ち合わせた。


 メインの校舎に入ると、廊下の両側には教室が並び、壁には歴代の卒業生の肖像画や学園の歴史を物語る絵画が飾られている。


 3階まで上がり、重厚な扉の前で止まった。「校長室」と刻まれたプレートが掛けられている。


 コンコン


「校長先生、フィル君とライ君をお連れしました」


「あらきたの?入って〜」


 室内から響いた声は予想以上に若々しかった。


 扉を開けると、そこには40代半ばと思われる女性が座っていた。白い髪を後ろに撫で付け、深緑のローブを着ている。机の上には書類だけでなく、様々な魔法の道具や水晶玉、古い書物が積まれていた。


「私がこの学園の校長、フレイ・レオンハートよ。ファスカから聞いてるわよフィルくん〜強いんですって?」


 校長は立ち上がって二人に近づき、しっかりと握手を交わした。


「こんにちは、フレイ様。ファスカ様から少しは聞いています」


「よろしく頼みます」


「ふふ、貴方達の入学試験の結果は拝見させてもらったけど。特にフィル君、編入試験での実技は満点だったわね。これはすごい快挙よ〜」


 校長の目が輝いている、とゆうかテンションが高い。流石ファスカ様のお母様だな。


「ライ君も、主席とまではいかなかったけど実技満点で合格は素晴らしいわ。貴方達が入ってきてくれて本当にハッピーって感じよ〜」


「あ、ありがとうございます」


「貴方達ロードを目指すんでしょう?私たちは全力でサポートする。分からないことがあれば、いつでも相談してね?恋愛相談とかでもいいわよ〜」


「はい」


「あぁ、そうそう」


 慌ただしい校長は机に戻り、引き出しから二つの徽章を取り出した。「これが学園の徽章だから。常に身に着けておくようにね」


 徽章は金属製で、学園の紋章が刻まれている。品質の高さが一目で分かる作りだった。


「明日は入学式!十時から大講堂で行われてその後は各クラスでのオリエンテーションになる」


 校長は温かい笑顔を浮かべた。


「君たちのような志の高い学生がいることは、この学園にとっても誇りよ。存分に学び、成長してね!」


「ありがとうございます。必ず期待に応えられるよう努力します」


 フィルの言葉に、校長は満足そうに頷いた。


「では、今日はもう予定がないだろうし部屋で休んでいいわよ〜。明日から本番だからね」


「「はい、ありがとうございました」」


 校長室を後にすると、オンドルフ先生が二人を見送った。


「どうだった?校長先生は」


「とても…温かい方?ですね」「面白くはあったな」


「じゃあこの辺りで解散にしよう、また明日フィル君は迎えに行くから。ライ君は入学式に参加したまえ」


「「はい」」


 寮に戻る道すがら、フィルは今後の予定を考える。


(学園のカリキュラムに従いながら魔法と剣の修行はどれくらいできるかな、最悪睡眠時間を削ればいいけど…それに今のロードと実力差がどれだけあるのかも知りたい)


 ロードはもう知っている人だがここ一年ほど会ってない、きっとまた成長というなの進化を遂げているだろう



 そんなこともあり寮に戻ったフィルは、5階の自分の部屋の前で立ち止まった。


(さて、ルームメイトの子はどんな人かな…もう戻ってきてるでしょ)


 時刻は夕方、夕日が綺麗な時間帯。


 そっとドアを開けると、部屋の中央で茶髪の少年が両手を腰に当て、胸を張って立っていた。


 窓から差し込む夕日が彼の茶色の髪を照らし、まるで舞台のスポットライトのように見えた。そして–


「ヒーローエスペランサ参上!」


 これが生涯の友になるホープとの出会いだった。

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