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幕間 塵影の幹部

 塵影メイス


 全世界各地で暴れ数多の被害を出している無法の組織。それらを束ねる幹部はどの国も全くと言っていいほど足取りが掴めていなかった。全力で調査しているのにも関わらずだ…



 だがそんな幹部が今一堂に会いしていた。何処の国にあるのかもわからない、地下にある巨大な空間。石造りの広間には松明が灯り、その奥の卓を囲むように八つの椅子が置かれている。


 広間へと続く石の廊下を、包帯を巻いた男が歩いてくる。オズだった。


「お疲れ様でした、オズ様」


 廊下の途中で、黒装束の部下が深々と頭を下げる。


「おう、お疲れ」


 オズは軽く手を上げて応える。


「他の幹部の皆様はすでにお集まりです。『冥色めいしょく』の雨屑様、『害霧がいむ』のカリス様、『悪食童あくじきどう』のエルキュー様、『怪眼かいがん』のユダ様、そしてヴォイド様がお待ちでございます」


「あれ?ボスは分かるけどガウちゃんは?」


「『不明獣アンノウン』のガウリエル様は今他の任務に当たっています為不在で…」


「えぇ、ガウちゃんいないのか〜萎えるなぁ、んまぁありがと」


 オズは頷くと、再び歩を進めた。卓に着くと視線が一斉にこちらに向けられる。


「オズ、怪我は大丈夫か?」


 沈む様の響く男の声。卓の最奥、黒いローブに身を包んだ男が振り返る。塵影メイスを束ねる長、その名をヴォイドと呼ばれる男だった。


 ヴォイドの首飾りには漆黒ながら神聖な石、王石ロードストーンが身に付けられていた。


「大丈夫だよ、お陰様で」


 オズは手をひらひらさせながら、頭を下げた。


「えーオズちゃん怪我したん!?あれだけ大口言ってダサくないっすか?」


 明るい笑顔の青年、雨屑は見下したかのように口に弧を描く。


「そうゆうな、大変だったんだろうに。まぁ俺らなら無傷で行けただろが」


 冷静に相棒の雨屑を宥めるカリス。


「んなことどうでもいいからご飯ないの?もぉ早くしてくれないとお前ら喰うよ?」


 オズよりも一回り小さな子供、エルキューは不満をあらわにした。


「雨屑、カリス、あんたら揃いも揃って子供にマウント取って楽しいわけ?正々堂々正面から戦わないゴミの考えることはわかんないわ」


 気の強そうな女、ユダは不愉快な気分を体現するかの如く机を蹴り上げた。


「正々堂々戦うことだけが戦いじゃないんすよねぇ、ってカリスが言ってましたよ」


「うん、言ってないな」


「あとエルキュー腹が減ってるなら自分がコーヒー淹れますよ?」


「嫌だよ、お前のまずいじゃん。毒入ってそうだしー」


「はは、カリスじゃないんだから入れないっすよ」


「俺をなんだと思ってるだお前ら」


 場に相応しくない軽快な会話は弾む。


「まぁオズも爆弾魔ボマーは殺せたんだろ?ならいいじゃないかそれで、今は無事に仲間が帰ってきたことを喜ぼう」


 ヴォイドの言葉に、一時的に静寂が訪れた。松明の炎が揺らめき、六人の影を壁に踊らせる。


「そうね、それで次はどうするの?」


「ユダとオズは単独でいつも通り自由に動いてくれて構わない、雨屑とカリスは義国でやって欲しいことがある。エルキューは…帝国でいい」


 ヴォイドは立ち上がり、地図をみる。


「今は力を蓄える時だ。各自、自分の担当地域で静かに勢力を拡大しろ。派手な動きは控えるようにな」


「つまんなーそれじゃあ美味しい奴に行けないじゃん」


 エルキューが頬を膨らませた。


「我慢しなさい、美味しいご飯なら待ち時間でもワクワクするでしょ?」


 ユダが橙色の髪をかき上げながら言う。


「でも静かにしてるって言っても、完全に何もしないわけじゃないっすよね?」


 雨屑が青い髪を弄りながらそう聞いた。


「当然だ、情報収集は続行。そして…新たな仲間の勧誘もしよう」


「それが義国に居るのか?」


 カリスが緑の髪を指で梳きながら呟く。


「そうだ。詳細は個別に伝える、では各自、解散」


「了解っす〜うーん昼寝昼寝」


 雨屑が椅子から立ち上がりながら軽やかに答える。


「寝るな阿保、義国か…久しぶりだな」


 カリスが伸びをしながら呟く。


「わかったよ、じゃあ美味しいご飯でも探しに行こうかな」


 エルキューは既に出口の方に向かって歩き始めている。


「じゃあ私はあっちの方に行こうかしらね」


 ユダが机を軽く叩いて立ち上がった。


 一人、また一人と地下空間から消えていく仲間たち。やがて広間には松明の揺らめく音だけが残った。






「オズ、少し残ってくれ」


 最後に立ち去ろうとしていたオズの背中に、ヴォイドの声がかかる。


「ん、どうかしたか?ヴォイド」


 オズは振り返ると、再び椅子に腰を下ろした。


「本当に怪我は大丈夫なのか?」


 ヴォイドはローブのフードを下ろし、紫の髪を露わにしながらオズの隣の椅子に座った。


「おう、大丈夫大丈夫、楽しかったし」


 ヴォイドの表情に安堵の色が浮かぶ。


「ヒヤヒヤさせないでくれよ、お前が死んだら流石のあいつも悲しむぞ」


「そうだ、ボスって今何処なの?」


「さぁ、一週間ぐらい前にふらーっとどっか行きやがった」


「まぁボスだしね」「あいつだからな」


「…まぁお前が無事ならいい、じゃあまた」


「ほーい」


 オズが手をひらひらと振りながら広間を後にする。一人残されたヴォイドは、再び地図に視線を落とした。


王石ロードストーン…必ず手に入れてやる」


 松明の炎が揺らめき、地下の静寂が戻ってくる。次の嵐に向けて、塵影の首領は一人、策を練り続けていた。

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