表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/52

23話 突然の来訪者

 ファスカ様と戦ってからこの数日間、俺はずっとファスカ様と連戦していた。朝一家に向かい戦って、昼にも戦い、夕方にも戦う。


 ハードなんてものではないスケジュールだが心地いい、自分が強くなれている実感があるからだろう。


 昨日避けれなかった技が見える、相手の動きが予測できる、最適な行動が少しずつ自分の身に染み込む…そんな感覚だ。


 そして今俺は休憩がてらファスカ様とサンドイッチを頬張っていた。


「へぇ、フィルってロードを目指してるのね。私もよ」


「ファスカ様もですか?」


「えぇ、私って火属性なのよ。それで学園にある王石ロードストーンも火属性でしょう?欲しくなっちゃって」


「欲しくなっちゃってって…」


 サンドイッチをもぐもぐしながらファスカ様は言った。


「そう簡単に取れるものじゃないでしょう」


「そう?案外今のロードが弱いかも知れないわよ?」


「そんな訳ないじゃないですか」


 学園で王になるには現王ロードに勝つしかない。そして現王ロードは学校を卒業してからも半年に一回一番有望な学生と戦わなければならない…。そして現在のロードは十年以上も王石ロードストーンを保有しているらしい。


 詰まるところ弱いわけがないのだ。数多の強者を倒してきたロードに俺は勝てるのだろうか。


(いや!勝つんだ、そのために今日まで頑張ってきたんだろ)


 自分を信じろよ、自分を信じないでなにを信じるんだ。


 自信がないのは悪い癖だ、自棄にならない様に別のことを考えよう。そう考えてるとファスカ様が顔を覗いてきた。


「そうねぇ、それよりフィルは固有魔法あるの?」


「あーありますよ、でもあまり使い勝手が良くなくて…」


 俺の固有魔法は創造、自分の知ってる物を作れるんだけど構造が難しいものとか材質が分かってないと作れないし作れても魔力を大量に使う。


(俺は魔力量が少ないから実戦では滅多に使えないんだよな)


「そうなの?フィルの固有魔法がどんなのかは分からないけど、一つ言えるのは使い勝手なんてあんまり関係ないわよ。戦いでは相手の意表をつける手札があるってだけで大きいんだから」


「…確かにそうですよね」


 ないよりはあった方がいいに決まっている、ファスカ様はそう言いたいのかも知れない。


(そうだよな、せっかくの固有魔法だし使い道も見つけてかないと…)


「だから今度使いなさいね」


(それが本音ですか)


 なんとなく気づいていたが本当にファスカ様は戦うのが好きらしい、もう隠す気もなく戦ってる時ずっとニコニコである。


 と俺の中でふと疑問に浮かぶことがある。


「ファスカも固有魔法あるんですか?」


「もちろん、固有魔法も家系魔法もあるわよ。家系魔法は爆炎プロミネンスで固有魔法は…」


 ファスカの言葉が途切れる。急なファスカの変化にフィルも違和感を覚える。


「ん?どうかしたんですか」


「誰か来たようね」


「ん?分かるんですか?」


「えぇ、ただの勘だけどね」


(勘…なんも感じなかったけど)


「気のせいじゃあないですか?」


「何よフィル、私を信用してないの?誰かきてるって言ったらくるのよ誰か」


「そんな暴論を…」


「流石ですね、ファスカ様」


 後ろから声がした、誰もいなかったはずの後ろから。


「は?」


 後ろにいたのは質素な服に身を包んだ男だ。それでもなぜか不思議と輝いて見えるのはダイヤモンドにもにた髪からか、それとも本人の気質か。


「あら!バーレインさんじゃない、どうしたの?」


(バーレイン?バーレイン…)


 思い出されるはラロとレトスとの会話。ランザス団長の説明の途中で出てきた名。


「フィルに言ってませんでしたね、私達が所属する太陽の騎士団の団長がランザス団長。そして月の騎士団の団長がバーレイン団長です」


(…ってことはつまり)


 目の前にいる男は…


「王国最強の魔法使い」


 そう口から溢れた、それを聞いたバーレインは優しげな顔で視線を合わせてきた。


「私を知ってるのか?フィル君」


「え!いやあの師匠から聞いていて…それより俺を知ってるんですか?」


「ランザスから聞いた。それで今日は君に会いにきた」


「俺にですか?」


 フィルの疑問は当然だ。フィルとバーレインに接点はない、ダグラスからのツテがあったランザスとも違う。


 フィルからしたらとんでもない大物が突然自分を訪ねてきたと言うよく分からない状況だ。


 それを察してか要件を端的に伝える。


「実は君と話したいことがあってな。少し時間をいただくがいいか?」


(ランチタイムだけど…少しだけなら大丈夫だろ)


「あぁ、だいzy」「ダメよ」


 バーレインの言葉にフィルが返答する前に、ファスカが答えた。表情は笑顔のまま、何というか覇気が凄い。


「ダメよ」


(何故二回言ったんですか!)


 フィルは怖くてファスカの顔が見れない、そうすると自然にバーレインの顔が見えるわけだが中々に神妙な顔をしている。


 周囲の空気を凍りつかせながらファスカは立ち上がり、サンドイッチを置きながら続ける。


「フィルと私は今日一日中戦う約束をしてるの、勝手に横取りしないでもらえるかしら?」


(俺はいつからそんな無謀な約束をする様になったんだろう、記憶にないけど)


 バーレインは穏やかな表情を保ったまま、首を傾げた。


「ファスカ様、話を聞くだけです。少しの時間をいただけないでしょうか」


「聞こえなかった?とういうか勝手に屋敷に侵入しないでもらえる。そんなに貴方は偉いのかしら」


 もう取り繕った笑顔も消えた、普通にキレている。空気もなんか重い。


「というかフィルに何の用なの?しっかりと要件を伝えなさいよ。それが礼儀でしょ!」


 ファスカ様の捲し立てにも動揺せず、変わらずの表情。だがここでバーレインの口が動く、ただ一言。


転移テレポート


 そうバーレイン団長が言った瞬間、ファスカ様が消えた。まるで最初からいなかったかのようにだ。


「え?ファスカ様?」


「彼女は遠くへ飛ばした、これでゆっくり話ができるな。さぁ座ってくれ」


 何事もなかったかのように木に腰掛け隣をぽすぽすと叩いている。


「いやちょっと待って下さい、飛ばした?魔法でですか?」


「あぁそうだ、便利な魔法だろう。自分や相手を何処にでも移動できるしさせることができる。無論インターバルはあるがな」


「べ…便利な魔法ですね」


「ふっ、まぁな。さぁ座りたまえ」


(色々聞きたいことがあるけれど…取り敢えず座るしかないか)


 失礼しますと言ってフィルはゆっくりとバーレインの横に腰を下ろした。


「それで要件とはなんですか?」


 そう聞いた瞬間、バーレインさんに頭を掴まれた。それはもうガシッと。


(ん?なにごと?)


 バーレインさんは無言で何かを念じてるようだ。何かを言っても聞くそぶりを見せないので取りあえずは身をゆだねることにした。


 一分程度はたったころだろうか。ゆっくり頭から手を離される。


「あの…これは」


「何個か質問に答えてもらえるかい?」


 フィルの言葉を遮り質問し返すバーレイン。


(…俺の質問にも答えてほしいんですが…)


 団長って人達はなんとうかマイペースというか我が強いというか、こう…なんというか苦手だ!


 そんなことを思っても言えないので質問にこたえるしかできないのだが


「はい、大丈夫ですよ…」


「ありがとう、では最初に君に親はいるか」


「いません。親といえるか分かりませんがダグ爺には感謝してます」


「そうか、私と似たようなものだな。私にも親と呼びたいものがいる。今のうちから感謝を伝えとくべきだ、何かあってからでは遅い」


 自分に言い聞かせるような言い方だ、昔なにかあったんだろうか。


「ちなみに親がいないと言うのは生まれた頃から孤児ということか?」


「…実は生まれた頃の記憶が無くて…」


「…では次、ダグラスからロードを目指していると聞いた。何故目指す」


「言わなければいけませんか」


 あの男のことなど言えるわけもなく、かと言ってうまくかわす言い方も思い浮かばない。


 どうにか誤魔化せないか…そう思っていたがバーレイン様はそれ以上追求してくることはなかった。


「…いや、いい。誰しも言えないことはある。では次、大切な人はいるか?死んでも守り抜きたいと思うほどの」


「います」


 フィルにとって一番大切な者は家族だ、レイラを始めた皆んながいなければ今日この日まで生きてはいられなかった。


 だからこそ…助けなければならないと、フィルはそう思っている。


「そうか、いるのか…」


 バーレインの声は何処か悲哀を感じさせるものだった。


「じゃあ最後に一つ」


(最後か、一体なにを)


「君は白い箱をしっているか」


「…白い箱?」


「知らないのか」


 その声から伝わるのは安堵とも取れる何か。


(白い箱ってなんだ?ロードになる為に重要な何かなのか?)


「知らないのらばいい、邪魔をした。もう私は行くとしよう」


 突然来て突然去ろうとするバーレインをフィルは手を引いて引き留める。


「あの、白い箱ってなんですか?ロードになる為に必要な物なら知りたいんです」


「…もしロードになるなら興味を持つな、知らないの方がいいことも世の中にはある」


 そう言ってバーレインは手を振り払ったが、ふと動きを止めた。


「そういえば、君は何か悩みを抱えているな」


「え?」


 突然の指摘にフィルは驚く。今フィルを悩ませるのはレイラ達のこと、だが何故それがバーレインに分かるのか。


「詮索はしない、だがもし何かあれば私を頼れ」


 バーレインは立ち上がり、フィルの肩に手を置いた。


 突然の来訪、フィルは困惑しながらも最後に一つだけ尋ねた。


「なんでこんなよくしてくれるんですか?」


「…若者を助けるのは当然のことだ。では、今度こそ失礼する。ファスカ様にはよろしく伝えてくれ、勝手に飛ばして申し訳なかったと」


「あ、はい…ありがとうございました」


 バーレインは軽く手を振ると、また「転移テレポート」と呟いた。そして今度は彼自身が姿を消した。


(消えた…突然なんだったんだ、いい人ではあるんだろうけど)




 瞬間、突然上から怒号のような声が聞こえてきた。


「フィーーーーーーーーーーーーーール!!!!」


 振り向いた瞬間、とんでもない速度でファスカ様が落ちてきた。


「え?」


 反応する間もなく、ファスカ様は流星のごとく地面に激突。轟音と共に土煙が立ち上り、小さな衝撃波が周囲に広がった。


「ファスカ様!?」


 フィルは慌てて煙の中へと駆け寄る。土煙が晴れていくにつれ、小さなクレーターの中心に立つファスカ様の姿が見えてきた。服は埃だらけ、髪は風に煽られて乱れ、顔には木の葉がくっついている。


 だが、その瞳は怒りの炎で燃えていた。


「あの...大丈夫ですか?」


「どこ」


「え?」


「どこにいったの、あの男」


「あの男って…騎士団長ですよ」


「私は四代貴族よ、それで何処行ったの」


 ファスカ様の周囲の空気が揺らめき、熱波のようなものが放たれている。明らかな怒気だ。


(どうしよう、これ言ったらもっと怒るよなぁ)


 火に油を注ぐ馬鹿はいない、それも爆炎に。だが言うしかないので言うことにした。


「あの、さっき帰りました...魔法で」


「そう」


 ファスカ様はゆっくりとクレーターから歩み出た。一歩踏み出すごとに地面が軽く震える気がする。気がするだけではないかもしれない。


「あの人、私を飛ばしたわね」


「はい...飛ばしましたね」


「どこに飛ばされたと思う?」


「え、それは...」


「裏山よ裏山!しかも池に落とされたの!これって不敬罪よね!」


 ファスカ様の周りの空気が揺らめき、熱気がより強くなる。髪からも水蒸気が立ち上っている。


「そ、それは大変でしたね...」


(裏山って、それにしては早すぎないか?)


「大変?ああ、大変だったわよ。でも私が一番許せないのは...」


 ファスカ様の手に炎が宿る。


「あのバーレインが、私の大事な戦いの時間を奪ったこと!」


「そっちですか!普通に飛ばされた方でしょ!」


 思わず突っ込んでしまった。


「あのね、フィル。私は今とっても怒ってるの。だから、あなたにその怒りをぶつけさせてもらうわ」


「え?ちょっと待って下さい、流石に理不尽だと思います」


「ええぇそうね、八つ当たりね」


 んーこの。ファスカ様はにっこり笑っているがその笑顔には優しさのかけらもない。


「さあ、フィル。やるわよ」


「いや、ちょっと待ってくだ...」


「うっさいわよ、やると言ったらやる!返事は!」


(くぅ〜、バーレイン様でいっぱいいっぱいなのに…なんだったんだあの人は。今度会ったら問い詰めよう)


 そう俺は心に決めた。それはそうとボコボコにされた。






 ---


 王都郊外にて、陽の光が差し込まない薄暗い地下室。湿った空気と鉄のさび付いた匂いが漂う中、一人の男が座っていた。その前には部下であろう者が一人、報告をしていた。


「ということで、ついにここも騎士団にバレたようです。如何しましょう」


「そうか…ここもバレたのか」


「はい、ついに」


 男の前に跪いた別の黒装束の者が頭を上げた。


「なんだ、ハイラム。顔色が悪いな、騎士団がそんなに怖いか?」


 部下から貰った古い羊皮紙を見つめながら、低い声で呟いた。その顔は影に覆われ、ただ一つ、左目の下に走る傷跡だけが灯りに照らされている。


 黒く汚れた暑いローブに身を包み、腰には短剣が二つ、背中には細身の剣を背負っていた。


「いえ、まったく」


 部下であるハイラムは無表情でそう言った、忠誠と覚悟が伝わってくるような声で…。だが心の中は違った。


(怖いよ!めちゃくちゃ怖い、だって考えても見てくれ、騎士団には化け物がいっぱいいる!密星テラや全能の指揮者トール・ソノルス・マギア焔光ファルコ騎士ナイト…それに最近、紫蜂スピラスも帰ってきたと言う。あんな奴らに来られたらうちは…いや、弱音は吐いてられない。ここはボスを説得して逃げる方向に)


「それでどうしましょうか、逃げるて筈なら組んでいますが…」


 逃げれるなら逃げたい、でもそれがボスにバレたら俺が殺されてしまう。だから何とかボスの方から逃げる方へ…そう思っていたが、手で爆弾を転がしながら聞いてきた。


「おいハイラム、地雷ってわかるか?」


「地雷?踏んだりしたら作動する爆弾ですよね?」


「あぁそうだ、世の中地雷みたいに触れちゃいけない奴がいる。街中で刃物振り回したりする奴にオメェ近づくかぁ?」


「い、いや、離れますね」


「だろ?だけど俺にお前は近づくよなぁ?」


「そりゃあボスはそんな奴等とは違うじゃないですか」


(同じにしたら殺されるわ)


「お前も騎士団の奴らも一緒なんだよ、表面しか見れてねぇ。地雷は表面にはねぇてのによぉお」


 不機嫌そうに唸るボスは立ち上がり騎士団の旗の前に立った。


「つまりどうゆうことですか」


「あぁつまりな、騎士団は終わりなんだよ。俺と言う地雷に気づかず…地雷原へ踏み込む、気づいた時には…死、あるのみよ」


 ボスは不敵に笑い高々に言った。


「つまらんことをいうなハイラム、せっかく騎士様がくるんだから…死でも贈ってやらなきゃなあ?爆弾魔の名が廃るだろぉ?」


 そう言った瞬間、騎士団の旗が爆ぜた。


(…俺が間違っていたのかもしれない…お貴族様の集まりである騎士団がこんな無法者に勝てるわけが無い…それほどボスは強い!)


「さっさと手配しろよぉハイラム、面白くなるぞぉ。今回の花火はド派手に行こう」


 爆弾魔ボマー ガング

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ