19話 騎士団本部
あれから七日が経った、景色を眺めていたら自然と心は落ち着いた。落ち着いてからは師匠に王都について色々聞いてみた。
王都エルミナ 王国の中心に位置する都市でその大きさは世界でも随一、王国にあるあらゆる物が売りに出されているらしい。人も多く王都に住んでる王族と貴族に平民、商品を売りに出す商人や国の安全を守る騎士…本当に色んな人達が行き交っていると聞く。
「そろそろですね」
馬を操縦してる御者さんがそんなことを言った、それ聞いて高揚する気持ちと共に自分の荷物を纏める。
「フィル見てみなさい」
師匠に言われ外を見るとそこには
雄大な景色が広がっていた。
眼前に現れたのは巨大な城壁に囲まれた都市だった。朝日を受けて輝く白い城壁は、フィルが想像していたよりもはるかに高く、それだけで圧倒的な存在感を放っている。
馬車は城壁に向かって進み、やがて巨大な城門に到着した。城門には騎士らしき人々が立ち、入城する人々や荷車を検査していた。
「入城審査ですね。大丈夫、私が手続きします」
馬車が城門に差し掛かると、兵士たちがラロを見て敬礼した。
「ラロ様、お帰りなさいませ」
「ええ、ただいま戻りました。こちらは弟子のフィルです」
フィルは緊張しながら軽く頭を下げた。
「どうぞお通りください」
門番の言葉と共に、馬車は巨大な城門をくぐり抜けた。
城門をくぐると、そこは全く別の世界だった。
整然と敷かれた石畳の道路が縦横に走り、両側には様々な店が軒を連ねていた。建物は石造りで、3階建て、4階建てが当たり前のように立ち並んでいる。カラフルな旗や看板が風に揺れ、通りには様々な衣装を着た人々が行き交っていた。
「わぁ...」
フィルは馬車から身を乗り出して、目に映るすべてのものを貪るように見つめた。
通りには様々な店が並んでいた。武器屋、魔道具店、衣服店、食料品店、そして見たこともない奇妙な商品を売る専門店まで。店先では商人たちが大声で商品を売り込み、買い物客と値段交渉をする姿も見られた。
「あれは魔法薬の店ですね。あちらは武具店...そしてあの大きな建物は冒険者ギルドです」
ラロが次々と建物を指差して説明してくれた。
馬車が進むにつれ、街の様子も変化していった。最初は賑やかな商業地区だったが、やがて建物はより豪華になり、道も広くなった。
「ここは貴族街といって、王国の貴族たちが暮らしている地区です」
貴族街の建物は豪華で芸術的だった。庭園を配した豪邸や、彫刻で飾られた邸宅が並び、王城を背景に美しい景観を作り出していた。道を歩く人々も、これまでの地区より豪華な衣装を身にまとっていた。
「あのあれは…」
そんな貴族街のさらに向こう側に大きな城があった。
「あれが王城ですか?」
「ええ、あの中央に見える最も高い塔群が王城です」
王城はまるで雲を突き刺すかのように聳え立ち、朝日を浴びて金色に輝いていた。その壮麗さは、フィルの想像をはるかに超えていた。
「すごいなぁ...こんな場所があったのかぁ」
思わず感嘆の声を上げてしまう。世界はこんなにも広くて綺麗なんだなぁ…
(レイラ達にも見せたかったな、きっとおおはしゃぎするんだろうけど)
馬車はさらに進み、やがて大きな広場に出た。そこには王城への道が通じており、周囲には騎士団の建物や政府関連の施設が建ち並んでいた。
「あそこが騎士団本部です。私たちはまずそこへ向かいます」
騎士団本部は威厳のある石造りの建物で、入口には王国の紋章が掲げられていた。
馬車が騎士団本部の前で停まると、ラロは御者に礼を言い、フィルと共に馬車から降りた。
「着きましたよ、フィル。騎士団へようこそ」
「お世話になります」
青空の下、王城を背景に立つ騎士団本部。
(んー思ってたよりでっかいなぁ…今から此処に住まわせてもらうんだしちゃんとしよう)
そう身を引き締めて門番さんに例をして門を通る。門を通ってまず見えたのは…
広大な中庭だった。中庭の左側では騎士の人達が剣を振っている。中央には王国の紋章を刻んだ大きな噴水が水を噴き上げ、その奥には左右対称の二つの塔、左側の塔には太陽のシンボル、右側には月のシンボル。
「先に言っておきますが右側にはあまり行かない方がいいですよ、魔法側なので」
「魔法側に行ってはダメなんですか?」
「まぁ少し仲が悪いので…まぁリスクを負う必要はないです」
(そうゆうもんか…でも興味湧くなぁ)
そんなことを考えながら歩を進める。
「ではまず騎士団長に挨拶しに行きましょう、それが終わったら…」
「師匠?」
突然喋るのやめた師匠、顔を見ると顰めっ面で庭の奥の方を見つめていた。
(一体何が…え?)
師匠の視線の先を見ると高速で走りながら向かってくるたくさんの筋肉隆々の男達がいた、しかも滅茶苦茶汗だくで。
「えーと…あの人達は?」
「ふぅーーーーーーーー…フィル、申し訳ないんですが私はあいつらから逃げなくてはならなくては行けないので貴方の案内が出来ません。一人で行ってもらっても構いませんね。そうですかありがとうございます」
とても深いため息をついて師匠はそう言った…まだなんも言ってないんですけど。そんな俺のことはどうでもいいのかすぐ様猛ダッシュで逃げ出した師匠。
「「「ラロぉぉぉぉぉぉ」」」
そしてその10秒後には筋肉隆々の男達が目の前を過ぎ去って言った。
それは余りにも唐突なことで動くことが出来なかった、でも多分…動いても意味はなかった。めちゃくちゃ怖かったし…というか
「え?これ一人で行かなくちゃならないの?」
そんな声が寂しく響いた。
▲▽▲▽▲▽▲
「さっきの人達は友達とかだったのかな」
さっきまでのワクワクはどこへやら、今胸の中にあるのは不安と師匠このやろーという気持ちだけ。
そして今、俺は太陽の棟の中に居る、あの場にて師匠を待つのもありだったがいつ帰ってくるのか分からないし他の人に聞こうにも中庭にいた騎士の人達はみんな訓練中だから声もかけれない。
結果、誰でもいいから騎士団長まで道案内してくれる人を探すことに、だが始めてきた土地でやっぱり無理があった。
(ここ…どこ…)
側から見たらもうただの侵入者だ、それ以外の何者でもないだろう。早く…早く人を見つけなきゃ…あれから建物内を歩いているが廊下には誰もいない、その代わりに訓練室?みたいな所には人がいっぱいいた。
「でもあそこには入れないよ、、というか騎士団長って何処にいるんだ…もしかして何処かで通り過ぎたのか?」
「いや…通り過ぎてはいないよ」
「!?」
ふと背後からそんな声が聞こえた。すぐ振り返ると其処には一人の騎士がいた。
身長は高く優しい雰囲気を醸し出している、顔は一目見て綺麗と思うほど整っていて、雪の様な白い髪と相まって神々し支えあるが…
フィルが一番眼を引いた所は其処ではなかった…
彫刻の様な美しい顔でも
金色の瞳でも
腰に掛かっている剣でもない
金色の宝石
最も眼についたのは腰につけられている金色の宝石だった。涙滴形の銀のフレームに囲まれ、四芒星のような模様が内側に浮かび上がっている
確信した、何故か分からないけど…絶対という確信。
「ロード…ストーン…?」
「ん?よく分かったね?見るのは初めてだろうに」
(王石!そして太陽のシンボルってことは)
「副団長さんですか?」
「あぁすまない、自己紹介が遅れたね。僕はレクト・リオンハート、太陽の騎士団副団長さ。始めましてフィル君」
「…?俺のこと知ってるんですか?」
「勿論、ラロとは文通してたからね。君が優秀なお弟子さんなのは聞いているよ。それでラロは何処にいるのかな」
状況を理解できていないレクト様に俺はさっき起きたことを説明した。それを聞いたレクト様は少し呆れた微笑みを見せた。
「それはすまなかったね。大方久し振りに帰ってきたラロを同期達が追いかけたんだろう、ラロは何も言わずに君のとこに行ったからね」
「そうだったんですね、じゃあしょうがなかったか…」
「それと今団長は手が離せない用事があって少しの間いないんだ、きっと午後には帰ってくるとは思うんだけど」
(うーんじゃあどうしようかな、師匠が帰ってくるまで何処かで待ってるか…)
王都を散策とかしたいけど流石に迷ってしまうし厄介事に巻き込まれたりしたら迷惑も掛かる。
そんな時、レクトさんが予想外の提案してきた。
「よければ指導してあげようか?ラロが帰ってくるまで」
「え…いいんでしょうか?」
正直余りにも都合が良すぎて信じれないレベルだ。だって現副団長から直接指導を受けられるなんて、思いもよらない幸運だった。
「もちろん、元々無属性魔法は教えるつもりだったからね」
「じゃあ…ぜひお願いします!」
「よし、じゃあこっちだ」
レクトは廊下を歩き始め、フィルはすぐに後に続いた。騎士団本部の中を進み、やがて小さな裏庭に出た。ここは先ほどの大きな中庭とは違い、静かで人けがなかった。
「ここなら大丈夫かな?」
レクトは裏庭の中央に立ち、フィルに向き直った。彼の腰に下げられた王石が太陽の光を受けて輝いている。
(あの王石、光属性なのかな…)
確か光魔法の特徴は精密性と速度、見たこと自体はないけど今日で観れるかもしれない。
色々吸収しよう、いつかくる王との戦いのためにも。
「じゃあまずは剣からいこうか、とりあえず今使える技を見せてくれ」
「はい!」
(流石に緊張するけど…いつも通り、いつも通り)
自分にそう言って心を落ち着かせる、そして放つは4つの技。
まず紫閃、垂香、豊扇華を流れる様に撃つ。一年前に比べてほぼ別物と言えるレベルで進化したとダグ爺は言っていた。
自分自身でも明らかに疲れにくくなったのは実感出来ていた。もはや一日中振っていても大丈夫なほどに…いや、それは嘘かも…
兎にも角にも師匠のお陰で此処まで強くなれた…そして
上級 「紫突」
一点に力を込めて空に放つ。これは最近漸く使い物になった技、硬い装甲を貫いたり対空している敵に使える。
(どうだ?ちゃんといつも通りに出来たはずだけど)
振り向いて顔色を窺うと少し驚いている様な顔が見えた。
「上級技まで使えるなんてすごいね!それに他の技の練度も文句のつけようがない。確か今十三歳だよね?その歳でここまでできる子は中々いないよ」
ベタ褒めだった、自分の顔がはにかんでしまうのを感じる。今まで剣を見せたのは師匠達だけで此処まで褒められたのは初めてだった。
「じゃあ今から直した方が良い点を教えながら僕が剣を振うからちゃんと見ててね」
「はい」
「じゃあ行くよ」
(どんな風に剣を振るうのかちゃんと見よう!)
レクトが構えて剣を振った、基礎の紫閃だ。
なんの変哲もないただの紫閃。
それを見たフィルは…
「感動」を知った。




