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18話 王都へいざ行かん

 翌朝、朝食を終えたフィルとライが魔法の修行に向かおうとしたところで、ダグラスが二人を呼び止めた。


「フィル、ライちょっと待って。話があるんだ」


 二人は不思議そうな顔でダグラスの方を振り向いた。メリアとトット、そしてラロも集まっている。


「どうしたんですか?」


「実はな、お前たちに報告がある」


 ダグラスは懐から一枚の手紙を取り出した。


「昨晩、王国の騎士団長から連絡があってな」


「はぁ??騎士団長?」


「えぇ、実はそろそろ王都で入団式があるから、そのタイミングで帰ってくるようにと連絡をもらったのです」


「入団式ですか、じゃあまた王都に行くんですね」


「そこでだ、フィル。お前はラロと一緒に王都へ行くことになる」


「え!?王都に行くんですか?俺が!?」


「ああ。お前がノジオン学園に入るなら、一度は王都を見ておいた方がいいと思ってな」


 フィルの顔が見る見るうちに明るくなっていく。


「王都に行けるんですか!?」


 興奮した声が小屋中に響く。それもしょうがないことだろう、フィルにとっては始めての王都どころか遠出なのだから。そんなフィルの反応を見たラロは優しい表情を見せた。


「えぇ勿論です。時期は一週間後にするつもりです」


「やったー!」


 フィルは両手を上げて喜びを爆発させた。一方、ライは少し寂しそうな表情をしている。それに気づいたトットが大きな声で言った。


「心配すんなライ!お前はおれちゃんと旅に出るからよ」


「あ?」


「ああ、フィルとラロが王都に行っている間にお前とトットは別の旅に出る。俺は小屋で留守番、メリアは一旦街へ戻る」


「そうだぞライ、まぁ行き先は秘密だが…最高に強くなれる場所だぜ?」


「はっ、望むところだよ」


「よし…」


 ダグラスが纏め上げるよう大きく手をたたいた。


「フィル、ライ。一週間後までに旅の支度をすませておけよ」


「はい!」


 二人は元気よくそう答えた。




 ▲▽▲▽▲▽▲




 時は流れ、あっという間に一週間が過ぎた。出発の朝を迎えたフィルは、興奮で早くに目を覚ました。薄暗い部屋の中、自分の荷物を最後に確認する。


「よし、これで大丈夫だな」


 フィルは小さく呟いた。旅用の鞄には、着替えに魔導書と教科書が入っている。あとは腰に普段から愛用している剣が携えられている。


 部屋を出ると、すでに他の者たちは起きていた。キッチンではメリアが朝食の準備をしており、その香りが小屋全体に広がっている。


「気分はどうだい?ガキ」


 メリアが振り返ってにやりと微笑んだ。


「そりゃあ最高ですよ!おはようございます」


「今日は出発の日。しっかり食べときな」


 テーブルには豪華な朝食が並べられていた。パンやチーズ、果物、そして珍しく肉料理まである。


「うわぁ、すごい!」


 美味しそうな匂いに釣られてか、ライが部屋から出てきた。


「ふぁ〜おはよう、フィル兄」


「おはよう、ライ」


 軽い挨拶を済ませ食卓に着く。


 食事を終えると、庭に全員が集まった。朝日がゆっくりと森の木々の間から差し込み、どこからともなく小鳥のさえずりが聞こえてくる。


「じゃあ、行ってこい


 ダグラスが言った。彼は今日は同行せず、小屋を守るために残る。


「はい!」


 フィルは元気よく返事をした。心臓がドキドキと高鳴っている。生まれて初めての遠出。王都への旅。


 何が待っているのか分からないという不安と、新しい世界を見られるという期待が入り混じっていた。


「ライ、頑張れよ!


 少しの間離れ離れになるライに手を差し出す。レイラ達を失ってから一日足りとも顔を合わせなかった日はない。ずっと支えてくれた弟分だ。


「おう。フィル兄もな」


 ライは目を合わせ笑いながら手を握り返した。


「じゃあ行ってきます!」


 フィルは残る者たちに向かって深々と頭を下げた。メリアは笑顔で手を振り、ダグラスは暖かく見守った。


「では、出発しますよフィル」


 師匠は軽装ながらも風格のある旅装束に身を包んでいる。


「はい!」


 ラロについて小道を歩き始めた。振り返ると、ダグラスとメリアが手を振っていた。そして、反対方向へ向かうライとトットの姿も見えた。


「トットさん!!ライをお願いします!」


 フィルは大きく手を振りながらそう叫んだ。対するトットは笑顔とグッジョブサインで返す。


「王都か...」


 一体どんな場所なのだろう、どんな人がいるのだろう、想像すればするほど、胸が高鳴った。


「フィル、行きましょう」


 前を歩くラロが振り返って言った。


「あ、はい!すみません!」


 師匠に並んで山を降りる、降りたあとの移動は馬車で王都まで向かうらしい。道中襲ってきた魔物を倒して平地へ向かう、かなり降りたとこで一台の馬車が泊まっていた。


「あれに乗って王都まで行くんですね。


「そうですね。王都までは結構な距離がありますし…馬車なら三日ほどでしょう」


 フィルは興奮で顔を輝かせながら馬車に近づいた。馬車の御者は恰幅の良い中年の男性で、フィルとラロを見ると手を振った。


「お待ちしておりました、王都に向かうラロ様でよろしいでしょうか」


「えぇ、早速向かってもらってもいいでしょうか」


「かしこまりました」


 御者はフィル達の荷物を馬車に積み込み、フィルはおそるおそる馬車に乗り込んだ。


「いよいよ出発ですね」


「そうですね。フィル、準備はいいですか?」


「はい!」


「じゃあ行きますよ」


 馬車がゆっくりと動き出した。フィルは荷台から身を乗り出し、山の方向を見た。小さくなっていく森の中に、彼の第二の故郷である小屋がある。少し離れるだけなのに、なんとなく寂しさを感じる。


 しかし、前に広がる道を見ると、新しい冒険への期待が胸を満たした。フィルは深呼吸して、馬車の荷台に腰を下ろした。


「そういえば、実は王都でフィルに個人的に会って欲しい人がいるんですよ


「会って欲しい人?騎士団長ですか?


「いや…副団長ですね」


「全然会うのは大丈夫なんですけど…会って欲しい理由って」


「副団長は無属性魔法の使い手です」


「!!」


(無属性!俺以外で初めての使用者!)


 使い手が少ない無属性、その為魔導書も数が少なく風魔法は中級を覚えても無属性は一向に進まなかったけど…遂に会えるのか!


「無属性魔法教えてくれますかね!」


「えぇ、事前に頼んでいますし大丈夫でしょう、あともう一つ」


「?」


「副団長は光のロードです」


「…本当…ですか?」


 王石ロードストーン…あの日から色々調べた。王石ロードストーン保有者はロードと言われること。世界には十個、王国は現在その内の三つを保有してる。そのうちの一つをその人が…?


(いや…焦るな…学園に入るまで見れないと思ってたロードストーンを見れるんだ。もしかしたらあいつからの接触もあるかもしれない)


 今日まで一度もあいつから接触はされていない。


 ダグ爺は色んな人物に声をかけてくれているらしいが成果はないし、やっぱりあいつから接触されないことには会うことはできない。


(レイラ達は無事なんだろうか…あいつの目的とか俺の身なんかどうでもいい、レイラ達が無事ならそれで…)


 顔がどんどん険しくなるフィル、それを見てラロは…


「前々から思っていましたがフィル、なぜあなたは王石ロードストーンを求めてるのですか?」


「え?それは…」


 師匠には何も言っていなかった、レイラ達のことやあの男のことも…。


 そもそも言うつもりもなかった、言ったことであの男がどんな手段に出るかも分からなかったから。


(でも師匠は何かを感じ取ってたんだろうな…)


 一年もの年月を過ごしたのだ、鋭い師匠なら何か感じとっていただろう。


王石ロードストーンを欲しがるものは数多くいます、子供でもね。でもそれは大概親に強制されてたり強さを誇示したいといった理由なんですよ。でもフィル、あなたは違いますよね?そんな幼稚な動機で動いてるようには思えません」


「……」


「フィルは知らないでしょうがフィル達にやらせてる訓練は同年代の子がやってるものに比べてとても辛いものです。それをこの約一年一度もあなたは弱音すら吐かなかった」


「師匠…」


(そんなに、見ててくれたのか)


「私は思いました、あぁきっと私の想像では察せないほどの理由がこの子にはあるのだろうと…フィル、もし言いたくないのならば言わなくていいです。でもいつか言える日が来るのなら…私でよければいつでも力を貸しますよ」


「…ありがとうございます、師匠」


(俺、恵まれてるなぁ…)


 その日、馬車の中で会話は起きなかった。暗い空気が漂ったわけではない、ただ静けさが心地よかっただけだろう。

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