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17話 勉強…?

「そういえばガキ、座学はやってるのかい?」


「え?」


 風矢を習得してから2週間、庭で魔法の修行をしてたらふと後ろにいたメリ婆が聞いてきた。


「座学だよ座学、あんたらノジオン学園に通う予定なんだろ?だったら実技も大事だけど勉学もしなきゃならんだろう?それなのにここにきてから勉学してる様子を見ないから気になったのさ」


「…?勉強って必要なんですか?」


「…?当たり前だろう?、そもそも学校は勉学がメインだと思ってるよ。ノジオンはまた別だけどね」


 妙に話が噛み合わなかった。


「いやでも俺らはロードストーンを目指してるので…」


「ん?そうなのかい、でも編入試験でテストはあるよ?実技も座学もね」


 ん?


 んん?


 んんん?


 —— —— ——



 —— —— —— —— ——



 —— —— —— —— —— —— ——







(待て待て待て待て。そうだ、そうだよ。完全に入学の時のテストのことを忘れてた!というか今までまともな勉学なんてしたことないのに大丈夫なのか?そもそも入学できないなんてないよな?)


 フィルは完全に忘れていた。日々の忙しさからだろうか、ここにきた時には確かに念頭にあった試験の存在を。


 不安に駆られたフィルはとりあえずメリアに色々聞いてみることにした。


「あの〜ノジオン学園の勉学のレベルってどのぐらいでしょうか?」


「そりゃあこの国でも最高峰のレベルさ、他の国々を見ても並び立てるとこは中々ないよ」


 フィルの顔が硬直する。変な汗は流れ頭の中で様々な考えが渦を巻いていく。


(あぁあ…やばい、、やばいやばいやばい...!最高峰って...俺、今までまともな勉強したことないのに!)


「あ、あの...具体的にはどんな内容を...?」


「そうだね…魔法理論、薬学、一般教養として数学、言語学、地理学、歴史学...まぁこんなところかねぇ」


 一つ一つの科目が刺さる矢のように、フィルの心臓を貫いていく。足元がふらつき、その場にへたり込む。


(今から勉強して間に合うのか?学校すら行ったことのない自分が行けるのか?)


「お、終わった...」


 今の心境を一言で表すとこうである。目の前が暗くなり、部屋が回り始めたような錯覚を覚える。


 今まで夢中で魔法や剣の技術を磨いていたが、それだけでは入学などできないという事実に。


「俺達...入れますかね...」


「そんなに絶望せんでもわたしが教えてやるよ」


「え?」


「試験は言語学、歴史学、数学、地理学に追加で選択科目一つ。この中の言語学と歴史学、あと魔法史なら教えてやれるよ」


 メリアは立ち上がると、小屋へと消えた。しばらくして、分厚い本を何冊も抱えて戻ってきた。


「これは昔使ってた教科書だよ。ダグラスから学園に行くと聞いて一応持ってきて良かったよ」


「え、本当に教えてくれるんですか!?でも…流石に…」


「はぁ…前にも言ったはずだよ、老いぼれが助けを求める若者を助けんのは当然のことさ」


 フィルは思わず立ち上がり、深々と頭を下げた。


「メリ婆、本当にありがとうございます!俺...絶対に頑張ります!」


 その声には感謝の念と同時に、少し涙声が混じっていた。メリアは本を机の上に置きながら、にやりと笑った。


「頭を上げな、授業は今日の夜からにしようか。ライにも言っとくんだよ」


「はい!」



 ▲▽▲▽▲▽▲




 午後、剣の指導中。フィルは先刻のことをラロにも相談していた


「ってことがあったんですよ」


「何をやってるんですか?」


「いやほんと…その通りです…」


 師匠の抑揚のない声と呆れた視線が刺さる。


「まぁ過ぎたことを気にしすぎても良くないので切り替えていきましょう。幸いなことにメリア様が教えてくれるとおっしゃってるんですし」


「うぅ…それもそうですよね…切り替え…切り替えぇ」


「あと一応言っておきますが、私は教えられませんよ。できて地理と数学ぐらいですね」


「地理出来るのって凄くないですか?」


 正直科目で一番苦戦しそうなのが地理な気がしていた。歴史史系は昔から本を読んでたお陰で多少は分かるだろうし、数学も基礎なら出来る。でも地理はここら辺のことしか分からない。


 そもそもこの国から出たこともないし、なんなら王都にも行ったことがない。普段の生活で行く暇もなかったし行く機会にも恵まれなかったし。


「まぁ基本的な一般教養は受けてますし、その中でも地理が得意だったってだけですよ」


「じゃあ今度教えて下さい、お願いしますぅ」


「もちろん。ではそろそろ日も暮れるので戻りましょう」


「はい!」




 ▲▽▲▽▲▽▲




 夕食後、フィルとライはメリアの元へと向かった。


 メリアの小屋の中、夜の灯りがゆらめく部屋には古めかしい本が積み上げられていた。フィルとライは小さな木製の椅子に座り、テーブルの上に開かれた本を覗き込んでいる。


 メリアはその向かいに座り、杖を手にしていた。


「さて、こうやって三人で授業するのも久しぶりだね」


 義手をギシギシと鳴らし腕がなるねとメリアは気合いを入れる。


「おう、またよろしく頼むぜメリ婆」


「今回もよろしくお願いします」


「任されたよ」


 メリアは分厚い本を開き、ページをめくる。


「じゃあ今日やっていくのは…歴史学だね」


「「歴史学…」」


「そうビビる必要はないよ、ただ他の国も含めた世界の歴史を学ぶだけさ。ただ他の科目に比べて暗記量は遥かに多いけどね」


「暗記ねぇ、まぁ実際にやってみないとなんとも言えねえわな。


「そうだね、集中してやろ」


 改めて椅子を座り直し姿勢を正す二人、入試で使う以上ある意味修行よりも真面目に取り組まなければならないと理解してるのだ。


「まずお前たちはこの国以外の国を知ってるかい?」


「義国と帝国は一応知ってるぜ?」


 義国と帝国。義国 天ノ原、スクーロ帝国、そして俺達のいるアスター王国。この三カ国は他の国よりも歴史が深く同盟も結んでいる。


 トットさんもここに来る前までは義国で教師をしてたらしい。


「帝国と義国は大事だよ、テストでも70%ぐらいはこの三カ国が占めるからね」


「やっぱ割合でけえんだな、じゃあ残りの30%が他の国か?」


「あぁそうさ、残りの国は全部で4つ。技術のレベルが一番高いけど一番歴史の浅い国ホーマン、日夜魔法の研究ばっかりしてる魔法国エントリア、亜人や魔人が住む魔の国ゲーテ、沢山の小さな国が集まって出来た合衆国エデンがある」


「まぁ一応全部聞いたことはあるな」


「うん、詳しくは知らないけど」


「この中ならエントリアは魔法史に深く関係してくるから大事だね、逆にゲーテは出ないね」


「何故です?」


「うちと仲が悪いのさ、私が生まれるより遥か昔からずっとね。あとはエデンとも若干不仲だね」


「へぇ、じゃあエデンとゲーテは勉強しなくていいんだな」


「まぁ後回しでいいのは確かさ」


 この後も授業は続いた。フィルとライは熱心にメモを取りながら、メリアの話に聞き入り時折質問を投げかけ、メリアはそれに丁寧に答えていく。


 始まって二時間が経ったころ…


 時が過ぎ、外は完全に暗くなった。メリアはろうそくを追加で灯し、さらに歴史の話を続けた。


 国の変遷、大きな戦争、文明の発展など、重要な出来事を次々と説明していく。


 フィルの瞼は次第に重くなり始めたが、必死に集中を保とうとしていた。


 ライも疲れた様子だが、真剣なまなざしは変わらない。


「さて、ここまでが基本的な三大国の流れだ。次回はより詳しい各国の文化と関係性について学ぼう」


 メリアは本を閉じ、二人を見た。


「質問はあるかい?」


「歴史って...本当に暗記することが多いですね」フィルは頭をかきながら言った。


「そうさ。でも単なる暗記じゃなく、因果関係を理解することが大事だ。なぜそうなったのか、それがどう今に繋がっているのかを考えるんだ」


「わかりました。頑張ります」


「お前たちなら大丈夫さ。さ、もう遅い。今日はここまでにしよう」


 フィルとライは立ち上がり、メリアに深々と頭を下げた。


「ありがとうございました!」


「次回は明日の夕食後だ。それまでに今日学んだことをしっかり復習しておくように」


「はい!」


 二人は小屋を出て、星空の下を歩きながら、今日学んだことを確認し合った。


「ヤバいな、覚えることめっちゃ多いぞ」


「うん...でも面白かった。」


「まぁな、あぁ…明日も頑張るか」


 彼らは宿舎へと足を向けながら、明日の授業に向けての決意を新たにした。星空の下、二人の影は一つに溶け込み、夜の静けさの中に消えていった。

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