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エピソード16

ー家ー



「お兄ちゃん、私欲しいものがあるの」



「ん? 何がほしいの?」





 セレンが欲しいものがあるとは、珍しい。





「あのね、自分のお部屋が欲しいの」



「部屋、ランと一緒じゃいや?」



「寝るときは静かに一人で寝たくて……駄目?」



「いいよ、部屋はまだ空いてるし好きな部屋を使うと良い」



「本当? ありがとう! お兄ちゃん」





 と言っても他の部屋はなにも家具が置かれていなくて、殺風景で使いにくい。



 僕とセレンで家具を買いに店に来た。セレンは何がほしいのだろうか、僕としてはベット一つあれば良いのだが。





「お兄ちゃん、この大きいライト欲しい」



「これ? ずいぶん大きいね。買うのは構わないけど、部屋が狭くならないかい?」



「大丈夫! 私このライトがいい」



「分かった、このライトを買おう」





 お会計を済ませ空間に収納するスキルでライトを空間に入れる。それを見たセレンは驚いているようだった。





「凄い! 今のどうやったの?」



「空間に収納するスキルだよ、あまり人には見せないけどね」





 いい買い物ができた、ベットを適当に見繕い帰路へと着こうとした時だった。大通りが騒がしい。



 セレンと様子を見に行くと、大型で角が生えた魔物が暴れていた。家の一部が瓦礫となり下敷きになっている人々がいた。



 衛兵が来るのは時間がかかるだろうし、僕がこの魔物を倒したほうが良いだろう。





「お兄ちゃん……」



「大丈夫、セレン。僕があの魔物を倒してくるよ」





 そう言ってセレンの頭を撫でる。僕は様々なスキルを発動させ攻撃する。魔物は粉砕された。





「グギャァァァァ!」





 大きな叫び声を上げ魔物は角を残しサラサラと消えていく。



 次に瓦礫をどかし下敷きになっていた人々を助け出す。





「大丈夫ですか? お怪我はございますか?」



「腕が……腕が痛い…………」



「折れていますね、今治しますから大丈夫ですよ」





 治癒のスキルでけが人達を次々と治していく。そうこうしていると衛兵達が騒ぎを聞きつけやってきた。





「魔物はどこだ!? けが人は!?」



「魔物は私が退治いたしました、怪我人は現在治療中でございます」



「そうか、あんたがやってくれたんだな」



「証拠としてそこの角をどうぞ」





 僕は大きな魔物の角を衛兵に手渡す。





「ずいぶんでかいな、これを本当にあんたが一人で?」



「えぇ、おそらくこの場の人たちが証人になってくれるはずです」





 怪我を治した男が証言してくれた。





「さっきあんちゃんに助けられたんだ、報酬でも出してやって欲しい」



「本当のようだな、後はこちらに任せてくれ」



 その場は衛兵たちに任せ、僕とセレンは家へと戻ることにした。





「お兄ちゃん、すごかったね!」





 セレンが目を輝かせながら僕の袖を引っ張る。





「そうか? まあ、あれくらいなら大したことないさ」



「でも、怪我人の人たち、すごく感謝してたよ? お兄ちゃん、やっぱりすごい!」





 僕は少し照れくさくなりながらも、セレンの頭を軽く撫でた。





「ありがとな。さあ、早く帰って部屋の準備をしよう」





 家に帰るとセレンはさっそく自分の部屋にライトを設置した。ほかにはまだ何も置かれて居ないけどライトが一つあるだけでだいぶ違う。





「うん、いい感じ! お兄ちゃんはどう思う?」



「僕もいい感じだと思うよ、セレンはセンスがいいね」



「えへへ、お兄ちゃんありがとう!」





 セレンは嬉しそうにライトを眺めた後、僕の方を向く。





「お兄ちゃん、戦っている姿とても凄かった! 私も強くなりたいなー」



「セレンも強くなりたいの?」



「うん。私もお兄ちゃんみたいに、誰かを助けたいの!」





 セレンは僕を見つめる。





「じゃあ、少しずつ鍛えていこうか。僕も手伝うからさ」



「 やった! 頑張るね、出来ればランちゃんと一緒に強くなりたい!」





セレンは飛び跳ねるように喜んだ。僕に抱きついて感情を表す。僕は苦笑し頭を撫でてやった。





「でも無理は駄目だからね」


「うん!」





こうして新たな目標への第一歩が始まったのだった。

 お兄ちゃんは魔物を倒すと一歩踏み出す。どうするんだろう、と私は心配ながら見守っていた。



 しかしお兄ちゃんは何をするでもなくただ魔物を見つめていただけなのに、魔物が急に粉々になり消えたのだ。



 私では理解できないほどに凄い出来事だった。やはりお兄ちゃんはとても強い、そして優しい。



 憧れの気持ちを陰に隠しつつ私達は、帰路へと着いたのだった。

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