エピソード15
「カドレアさん、これですかね?」
「いや、このキノコは違うと思います。幸せのキノコは、もっと深いところで採れますから」
「幸せのキノコってなんなんでしょうかね?」
「幸せキノコはただのキノコです、でも皆が幸せになれると信じたから、そう呼ばれている。希少なキノコでもありますしね」
幸せのキノコは昔からあるキノコで、幸せになれるという噂によって乱獲され数が少ない。
しばらく歩いていると、赤いキノコを見つけた。
「カドレアさん! この赤いキノコですかね?」
「えぇ、間違いないと思います。それは幸せのキノコです」
「やりましたね! さっそく報告に行きましょう!」
タマキは先にギルドに行き、幸せのキノコを納品した。すると突然横から4人パーティーがタマキに声をかけてきた。
「おいおい! そのキノコは俺たちが先に見つけたんだぜ!」
「いえ、俺が採ってきたんです!」
「嘘つくなよ! 先に見つけたのは俺達だ! 報酬は俺等がもらうぜ」
「ええっと……困りますよお客様!」
難癖をつけてくるやつもよく見かけるな、ここは手を貸してやるか。ナダさんも困っているしな。
「皆様、タマキ様が先に納品なされました。このクエストは納品時に受注する形のものです、僅かながらタマキ様が早くに納品したところをはっきりと見ていましたよ」
「ちっ……しらけるぜ。もういい、行くぞお前ら!」
「カドレアさん! ありがとうございます。この形のクエストは廃止したほうが良いと思うんですけど、依頼主の報酬が大きいのでギルドとしては廃止できなくて……」
「そうなんですね、確かに報酬が200,000ゴールドと高いですし、納品時に受注という形だと、たくさんの人が参加できて依頼主としては助かりそうですね」
「私としては受注してからクエストに行く方が、冒険者の方々は楽だと思うんですけどね。ギルドもボランティアではないので……すみません…………」
先程の4人パーティーは後ろを付けて依頼品をゲット、納品時に俺等が先だと主張する。そういう作戦なのだろう。
ギルドは手数料と寄付で成り立っているから、報酬が大きいクエスト程優先して受けたいだろう。
受注してからクエストには行けず、依頼品を持っているものが受注できる。意外とこの形式のクエストは多いのだ。
誰かが受注してしまえば他の者がそのクエストに参加できない、もしもその者がクエスト失敗すれば時間が無駄になるからな。
「カドレアさん、これ報酬です!」
「タマキ様、50,000ゴールドも良いのですか?」
「ええ、カドレアさんがいてくれたから幸せのキノコを見つけられたんです。受け取って下さい!」
「ありがとうございます、とても助かります。相談1時間分無料でお受けいたしますよ」