エピソード10
セレンの背中には大きな傷があった。研究所で演算装置を埋め込む際につけられたらしい。
この傷を治すためには希少な薬草が必要だ。演算装置などが神経に張り巡らせられているため、一般的な薬草では治療が出来ない。
「私も一緒に行きます」
「いや、セレンは家にいて欲しい。見つかったら大変だろう?」
「分かりました……」
「じゃあワタシがいくよ!」
「ランも家にいて、セレンを守ってあげて欲しい」
「うん、任せて!」
こうして僕は薬草を取りに行くことになった。
ーコンコ池ー
ここはコンコ池。近くにはコンコ湯と言う温泉が湧いている、効能は抜群で癒やしを与えるらしい。
コンコ池には治癒効果の加護がある。そのため近くに生える植物にも、治癒効果がでる。
近くの地面に目を凝らすと、薬草がポツポツと生えている。その薬草一つ一つにはそこまでの効果はない。
しばらく探索していると一際大きい薬草を見つける。この薬草は希少で店に並ぶ事はほとんど無い。
僕は希少な薬草を一つ摘むと帰路へと着いた。
ー街ー
「__いいからこいよ!」
「いやです、手を離して下さい」
ふと足を止めて路地裏を見ると、ノアと冒険者の男が揉めている様子だ。見て見ぬふりより助ける方が良いと判断しそこに割って入る。
「ノア様、そちらのお方は知り合いですか?」
「知らない……」
「手を離していただけませんか?」
「ちっ、なんなんだお前」
「ノア様の知り合いです。彼女は嫌がっています、貴方の目的はなんでしょうか」
「いや……財布すられちまってよ、路地裏に逃げ込んだ奴を追ってたらこいつがいたもんでよ。こいつが財布すったんだろ」
「私は猫ちゃんをおってここにいるの、財布なんてすってないわ」
どうやら誤解があったようだ。彼は素直に間違いを認めノアの手を離した。
「はぁー俺の財布、どこに行っちゃったんだ……」
財布をすられるなんておっちょこちょいだな。財布を探したら報酬が期待できそうだ。
「良かったら私が探しましょうか? もちろん依頼料としていくらか掛かりますが」
「本当か!? 俺の財布探してくれんのか! 今日中に見つけてくれたら財布の中身半分やるよ!」
「分かりました、ではコチラの契約書にサインをお願いします」
サインをもらい一度家に帰宅した。
調合スキルで薬草をポーションに変えて、セレンに飲んでもらった。
傷はみるみるふさがり、もとから機械の羽根が生えていたかのようになった。
セレンはずっと家にいるというのも不便だろう、隠密スキルをセレンに覚えてもらうことにした。
「セレン、僕の目を見て」
「うん、これでいい?」
「……よし、これでスキルが使えるようになったはず。外に出る時は必ずスキルを使うんだよ」
後で隠密系のアクセサリーでも買ってこよう。