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城の住民

作者: 星屑

「ねえ、こんな話知ってる?」

私たちはいつも通り部活を終えそれぞれの家に向かっていた。

その時夏だからと1人の子が怪談話をしようと言い出した。

もう1人の子は怖いからと耳を塞いでいたが、私は面白そうだと興味津々にその子の話に耳を傾けた。

「ふふ、じゃあ話すわね」


これはある友達から聞いた話なんだけど、、、

ここの学校は昔お墓があったという話を聞いたことはあるでしょ?でも実際はお墓じゃなくて、お城があったのよ。

日本にお城なんてって思うでしょ?でも本当なの。

役所に行って詳しく調べたらきっとわかるわ。

それでね、今回の話というのはそのお城に関することなのよ。

昔は今とは違い、明日を生きるのすら困難なほど食材が手に入らなかった。だからそのお城では秘密裏にあることが行われていたの。大きなお城だったから、そこの住人、使用人はもちろん囚人を取り押さえる牢屋もあった。でも犯罪者にまで食糧を分け与えられるほどの余裕なんてない。だからどうせ餓死してしまうくらいなら食べてしまおう、そういう考えに至ったの。

もちろん最初は反対する人もいたわ、けれど餓えには敵わなかったのね、反対する人は少なくなった。そして、囚人を食べる生活は続いた。けれど囚人の数には限りがあってまた食事に困る生活が始まってしまった。もうその頃には反対する人など完全にいなくなっていたわ。でもねやはり飢えには勝てない、だから住民は考えたわ、、、。


「ねえところでお腹すかない?」

話していた子が突如お腹をさすりながらそんなことを言ってきた。

怖い話に唾を飲み込んで聞いていたがその子の気が抜けた発言に思わず笑ってしまった。私はしょうがないなと言いお昼残したパンをその友達に恵んであげた。周りを見るともう1人の子は相変わらず聞くまいとして耳を塞いでいた。

続きが気になったが丁度3人の分かれ道になったため、その日は別れることにした。


次の日

いつも通り学校に登校すると、何やら教室が騒がしい。

何事かと思いクラスの子に聞くとどうやら私が昨日一緒に帰った子が行方不明らしい。

私は何がなんだかわからなかった。

部活が一緒ということで私は先生に呼び出された。

「こんな時にごめんね、少し話が聞きたくて、昨日帰りあの子と一緒にいたって他の子から聞いたけど何かいつもと違うことはなかった?」

私は昨日の放課後を思い出しながら口を開いた。

「昨日は、、、、」

そこで私の話が止まったものだから、周りは少し驚いた顔をしていた。

でも私も分からないのだ。

昨日、あの子と一緒に帰っていたことは覚えている。けれどもう1人のあの子は誰?怪談話をしていたのは、、、。

いや、そもそも私はなぜあの子を友達として認識していたのだろう。

先生たちは友達が行方不明になってしまって混乱して言葉が出ないと考えたようだ。

私は何も話すことなく、その部屋を後にした。

その日は早退した、なんだかとても学校にいられる気分ではなかった。

私は家に帰るふりをして、市役所を訪れた。

そして役人にお城のことを訊ねた、最初は無愛想に話を聞いていたが、私が話終わる頃には血相を変えて部屋を飛び出していった。

しばらくしてその役人が戻ってくる。


「お話ししたいことがあります、こちらでお待ちください」

案内された部屋で待っていると、気の良さそうな老人が入ってきた。

「待たせてごめんね、早速だけど話しに入らせてもらうよ、どうしてお城のことを知っているんだい?」

「実は 、、、」

私は今に至る経緯を全て話した。

すると、老人は複雑そうな顔つきをして言った。

「確かに、実際にあのお城は存在していたよ。

 ある事件があって取り壊されてしまったけどね、、、。」

老人によると、囚人が居なくなってからは、以前よりさらに苦しんだという。一度満腹を知ってしまては、もう以前のようには戻れないそう思う人が続出したらしい。

「そしてあの住民たちは、ついに民間人にまで手を出したんだよ、なんの罪もない人を残酷な方法でね。」

「残酷な方法?」

「城の住民たちは村の人達にこう言った。貢ぎ物をより多く献上したやつは生かしてやると。

 君、昨日その女の人に何か渡したのかい?」

「はい、パンをひと袋」

「運が良かったね、君は貢ぎ物をしたとして見逃されたんだろう。」

「あ、あの貢ぎ物をしていない人はどうなるんですか?」

老人は少し考えた後こう言った。

「例外なく住人に食べられてしまう。」

「え、じ、じゃあ私の友達は!昨日から行方が分からないのですが」

おじいさんは驚いた顔をして苦しそうなに言った

「、、、もう、諦めなさい今頃はきっと」

「そんな!」

私は急いで学校へ戻ろうとした。

すると老人は後ろで焦ったように言った。

「お嬢さん、あの城のことは誰にも言ってはいけないよ不安を、、、煽るだけだからね。頼む」

私は返事をせずに走って行った。

それからのことはよく覚えていない。

急いで学校に戻ったが、入口は警察によって封鎖されていた。

噂で聞いた話だと。校庭で人骨が見つかったらしい。

そしてそれは多分、、、。



噂が収まる頃には学校が始まっていた。未だに友人は見つかっていないらしい。放課後、帰路に着く度にあの日思い出してしまう、、、。



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「ふふふっ、お腹空いたなぁ」

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