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桜の記憶

「サク!」


わたしはお母さんに呼ばれた。

お母さんが、泣きそうな目で私を見ていた。

ああ、そっか。

どろぼうしてきちゃったから、ばれちゃったのかも。

だから悲しい目をしているのかもしれない。


「ごめんなさい。わたし・・」


「何回も呼んだのだけど、返事が無くて・・どうかしてしまったのかと思ったよ」


外を見るととっぷりと日が暮れていた。

いつの間にか夜になっていたようだ。


サクラの見せる景色につい夢中になってしまって、時がたつのを忘れてしまっていたようだった。


「サク?ごめんと言っていたけど・・何かしたのかい?」


あ・・これは正直に話さないといけない。


「えっと・・売り物じゃないんだけど、アンさんのところからこれ勝手に持ってきちゃった・・謝りに行かないと」


はあ~っとお母さんがため息をついた。


「明日一緒に謝りに行こうかね。やってしまった事は仕方ないね」


****


「ごめんなさい」


次の日わたしは、お母さんとアンさんに謝りにお店に来ていた。


「言ってくれれば、花瓶ごとあげても良かったのに。こちらは気にしていませんから大丈夫ですよ」


アンさんは怒りもしなかった。

それどころか、持って行ったサクラをもらってもいいと言っていた。


「どうして盗んだのか・・まったく申し訳ありません」


お母さんとわたしは頭を下げる。

お母さんは、アンさんに小さい袋を渡そうとしていた。


「お気持ちだけで、気にしないで下さい。たまにお花を買ってくださるだけでいいですから」


アンは袋を受け取らずに笑顔で返した。


「ごめん・・なさい。わたしお花が、見たことのない景色を見せてくれて・・ずっと見ていたくなってしまって・・」


「お花の景色?」


「うん。白い大きな四角い建物があって、小さい子供が沢山いて庭で遊んでいる・・」


「それ、学校じゃないかな?多分小学校の庭に生えていたから・・」


後ろから黒髪のミライが現れた。


「俺、アンの彼氏でミライって言います。初めまして、サクさんのお母さん」


ミライは丁寧に挨拶をする。


「アンから聞いてはいたけど、随分大柄だねぇ。それでガッコウというのは?」


「異世界の人々が学ぶ場所の事です。ここだと見たこと無いから惹かれたのでしょう。お花の記憶が見れるとか凄いですね。サクちゃんは」


これは異世界の景色だったのか。

わたしはその事実に驚いた。


「大きくなったら、そのスキルで活躍できるかもしれませんね」


ミライはそう言って、わたしの頭を撫でた。

そっか、わたしのスキルで何か役に立てるかもしれない。


「わたしゃ、好きなように生きてくれればそれでいいけどねぇ」


お母さんは腕を組んだ。

出来れば、他人の役に立つお仕事が出来るようになりたいな。

少し先の未来を、わたしは夢見ていた。

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