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blood 血の誓い  作者: さくらもち
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引きの強さ

王蓮side



朝早くからスマホの着信が鳴り、相手を確認すれば、画面には天明の文字




『今日は、海を北の境目に連れていくから来てよ』




と、ここ最近天明から、何度も誘いの連絡が来ていたので、またかとため息がでた



天明は、自分の弟子が屍を狩る姿を、どうしても見て欲しいのだろう


教え子の成長過程を見せたい気持ちは、分かるがそこまで念を押さずとも、興味が湧けば行く



海がネストでよく練習しているのはたまに、見かけていたし、天明が熱心に教えていたのも知っている。


元人間にしては、あいつの教えにもめげずに良くやっているなと思っていた



実際、全く興味がないわけではないし、覚えていれば覗きに行く予定だった


2週間でアレがどれだけ変わったのか、実力を見てみたい気持ちがあったからだ




ただ、朝の天明から連絡がなければ完全に忘れていたのは事実、なぜなら今日は朝から風太郎の家で酒でも飲もうかと考えていたから




結局、昼頃までそのままネストの最上階にある自宅で過ごしていれば、テーブルの上に置いたスマホが鳴り、画面を確認すると案の定、天明


しつこい誘いに鬱陶しくなり、出ない選択もありだと、そのままマナーモードにすれば、ヴゥーと振動するスマホ。


どうせ、また忘れないでねと催促の電話だろうと、電話を無視すれば、次はヴゥーッヴゥーッと何度も細かく振動し、電話に出ない俺に天明は何件もメールを送ってきた



流石に何件も送られるとうざい、これ以上連絡がこない様、着信履歴に残る天明の名前を迷わずタップした。





「…お前、しつこいよ」


『王蓮は、何回も言わないと来ないでしょ?』




スマホを握りしめていたのかと思うぐらい、早く電話に出たと思えば、天明はしつこい催促に悪びれる様子もなく、むしろ声が弾んでいた




「俺、今日休み」


『うん?だから誘ってるヨ?』 



天明の一度言い出したら、こちらが折れるまで言い続ける所は、幼い頃から全く変わっていない





「お前さー本当面倒くさいよ……はぁ。で、何時?」


「ふふ、20時からいくよ。待ってるネ』



電話越しに、にんまりと笑う天明の声が聞こえ、電話越しでも天明が笑っている顔が想像できる


きっと、俺が必ず来ると確信しているのだろう 


どこにそんな自信があるのか知りたいが、実際誰よりも天明に甘いのは認める


怒る気も失せ、仕方なくため息を吐くと、とりあえず、軽い返事だけを返しておいた。










20時半頃、遅れて愛車のベンツで北の境目まで来てみれば、黒い猿田のプリウスが停まっていた



バタンっと、車から降り相変わらず薄気味悪い廃墟の中を進んで行けば、瓦礫のてっぺんに胡座をかき、にこにこと満面の笑みを浮かべる天明が見えた


近くまで行くと、天明は立ち上がり軽々と下へと飛び降りて俺の隣に着地すると嬉しそう微笑んだ


「早かったね〜?」


「……もっと遅くに来れば良かった」


「それでも来てくれるんだ?優しいな〜」


「…で?俺が来てどうすんの」


「ん〜?ただ、見てほしいと思っただけ」



あそこと指を差す先を追えば、砂利の上で押し倒され、死人に苦戦する海の姿が見えた

 

どう見ても、死人に押されている様にしか見えないが、天明は特に気にしておらず、相変わらずだと鼻で笑うしかない。 


天明がここまで連れてくると言うことは、出来ると信じているからだろう。


それか、ここで死んだらそれまでだと思っているかだろうな、今のところ海はやりきっている様だが。




「へぇー…生きてんの?」


「うん、今7人目」



もう一度、海を見れば未だ死人の下で踠くだけで、死人に首を絞められ、危機的状況に見える




「あの死人、やけに賢いじゃん」



本来の死人なら、血しか興味がないはずだが、あの海に跨る死人は、確実に海を落としてから血を飲もうとしている


本来ならば死人には意思や知能などあるはずがない

だとしたら、あの死人は裏で誰かがそうさせているのだろう。


運がいいのか、悪いのかたまたまにしても、ただの死人じゃない奴に当たるとは、あいつはついてない




「うん…普通の死人じゃないね」


「あいつ死ぬかもよ」


「さぁ、どうかな〜」


「…」


天明は、海と死人を眺めると俺に余裕ある笑みを向けた。


あの子ならきっと大丈夫だと、やけに自信がある天明の瞳には一切の揺らぎがない


本当にこいつは、どこからそんな自信が出るのか分からない。

けれど、お前が言うならとまた海に視線を戻した 



バタバタと足をばたつかせ、踠いていた海は片腕をタクティカルベストの中に忍ばせると、ハンドガンを取り出した。


それを撃ちこむかと思いきや、勢いよく死人の顔面を殴りつけた。



「……」


「ははは、殴ってるね」


「あれも教えたわけ?」


「銃は撃ち方しか教えてないヨ」


「へぇ…」



まぁ、確かにハンドガンは硬く頑丈ではあるし、あの状態なら別に鈍器として使うのも決して間違いではない



咄嗟に思いついたにしては、賢い戦い方ではある




その後も、何度も死人の頭を殴りつけると、ほんの少しだけ死人の動きが止まり隙ができた


その一瞬の隙を狙い、海はハンドガンの上部を口に咥え、スライドさせると片手で死人の頭を撃ち抜いた




────バァンッ!




その瞬間、死人の体は赤く燃える様になり塵になっていった。


先ほどの海の銃を構える姿は、やけに様になっており素直に感心した


死人に怯むことなく向き合う姿勢、首を閉められていたにも関わらず、頭を使って自我を保ち諦めない強さ、それに加え結構根性もある様だ




「…やるじゃん」


「でしょ?」


「…でも、あいつオートマチック使ってんのになんでまたスライド引いた?…弾詰めた時点で引いてないの?」


「あ〜僕もそれ思ったけど、面白かった」




本来ならあの時、海がベストから銃を取り出した時点で撃てば、すぐに終わっていただろうにあいつはなぜか殴りつけるだけで、すぐに引き金を引かなかった



何度も死人の頭を殴りつけたかと思えば、最後の最後にスライドを引いて、引き金を引いた



もし、わざとやっているのなら相当、悪趣味なやつだが、知らないのならばそれは教えるべきだ




「もう少し、銃の仕組みも教えたら」


「あはは、そうするネ」




まぁ、たしかに面白いものが見れたとは思うが、知識があるかないかでは、今後命に関わる


ただ…分かっていて、それでも相手を殴りつけたい趣味があるのならば俺は特に止めはしない。



まぁ、今回確かに天明に呼ばれた甲斐はあったしとりあえず、なかなかやるじゃんと言えば、天明は僕の弟子だからね、と自慢げに腕を組んでみせた




「あ、寝ちゃった」



「呑気な奴…」



「ふふ、面白い子でしょ」




未だ死人が周りにウロウロしているのにも関わらず、海は仰向けになり、大の字で寝そべったまま動かない。


流石に、そこで休憩するとは思わず呆れていれば天明は、ケラケラと笑っているだけで呼びにいく気配がない。



ため息をつき、仕方なく海の元へと歩み出せば後ろの方で、僕が呼んでるって伝えてと伝言を頼まれた。

 

そのぐらい自分で言えばいいだろと、すぐに天明へ嫌だと返事を返し、腰のホルスターからハンドガンを取り出した。


相変わらず唸り声を上げ、俺へと走ってくる死人を塵にし、未だ寝そべる海を視界に入れた。


彼女は銃声が聞こえても未だ焦る事なく、寝転んだまま動こうとしない




別に、天明に言われたからではない。



ただ、出会った時の泣き腫らした顔の少女が、今はどんな顔をしているのか…気になっただけだ


ほんの興味心で、寝ている海を覗き込めば、彼女のスカイブルーの瞳と目があった


俺を見て、明らかに驚いた表情を浮かべる所は、ただの少女に見えるが、それでも起き上がらず、動じていない所を見ると、案外図太い性格をしている


まぁ、2週間で、あそこまで出来れば鴉としては合格だ




とりあえず、いつまでも起きる気配のない海に、声をかけた


 

「何してんの?」


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