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blood 血の誓い  作者: さくらもち
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黒き鴉が拾うは宝石

龍 王連 side


今日は特につまらない。

鴉の縄張りに攻め込む馬鹿な死屍、あいつらは弱すぎて、話にならない


何のためにわざわざ、死人を吸血鬼化させるのか、派閥は違えど、同族だというのに、考える事はしょうもない



どうせなら強いやつを集めればいいものを、死人を戦力にするとは。

 

まぁ、人員が少なくて焦っているのかもしれないが。


俺の傘下に入ればいいものを、ここまで抵抗されると、余計に欲しくなる



いずれはどちらも手に入れるが、今日の様につまらないのは正直、面白くない



屍の相手は他の奴らに任せ、今日は風太郎の家へと、黒塗りのベンツを走らせた



今日はもう、酒でも飲んでどうやって白蛇の頭を誘い出すか、考えるのも大事な事だろう


夜だと言うのに、昼間の名残りでサングラスをかけたまま、夜の街を駆け巡り車の窓を開け風を入れれば、ふと、先程雑魚の相手を任せたはずの、猿の匂いがした



「あいつ、サボってんの?」



見張りを任せたはずだが、なぜこんな所からあいつの香りが漂ってくる?



もしも、サボってたら給料は無しだな 





そう、心に決め猿が居るであろう場所へと勢いよくアクセルを踏むと、スピードを上げた



ぶぉぉぉんと音を鳴らし、匂いの元へと到着すれば、道端に座り込む、何かの姿が目に入る


近くに車を止め、ゆっくりと車から降りれば、やはり匂いはあそこからだ。




「猿の匂いがすると思えば…眷属?何だ、お前」




近づくにつれて、猿の匂いは濃くなるが、どう見ても目の前に映る人物は、猿ではない


淡い水色の髪を垂らし、夏だと言うのにコートを着て、いかにも冬の装いに身を包む少女


一瞬、死人かと思い近くまで行き観察すれば、少女は溢れんばかりに涙を流し、苦しそうに息を吐いている、この状態はきっと枯渇しているのだろう



匂いからして猿の眷属か、それとも女か。




見た感じ、死人ではない事を確認すると彼女の目線と同じくしゃがみこむ



先ほどよりも猿の匂いは薄くなりかけているがあいつの匂いで間違いはない


けれど、目の前の得体の知れない少女の香りがやけに気になり、不思議と興味が湧いた



この、眷属とはすこし違う匂い。


人間でもなく、純血でも混血とも違う匂いは、一体…何だ?



今だに溢れる涙でぼんやりとしている少女を眺めていれば、不意にこちらへ小さく尖った歯を向けた



まさか、自分に牙を向けるなんて思わず、咄嗟に手袋をした手で、少女の頬を掴んだ。


突然掴まれた事に、びくりと反応していたが、そろそろ、彼女の意識が限界だろう事が分かる




「お前、俺の血が飲みたいの?…生意気だね」




猿の匂いを漂わせながら、他の男の血を求めるとは、かなり図太い性格をしている


面白くなり、鼻で笑いそう言えば、聞こえているのかいないのか、少女はふっと意識を飛ばし、俺の方へともたれかかって来る。



一瞬避けようかとも考えたが、とりあえず仕方がないので受け止め、気絶した様に倒れる少女を抱き抱えると、車へと運んだ。



後ろの席に寝かせれば、彼女のポケットの中でスマホが音を鳴らし震えていた


煩く耳障りな音を消そうとスマホを取り出せば

画面に映し出されるのは、見知った名前



だだの気まぐれで、その電話に出ればやけに焦った様子の電話相手



気絶した様に眠る少女に視線を落とし、電話口の男へと声をかけた



「…もしもし、お前さぁ落とし物してない?」




一言そう言えば、電話口で固まる猿が浮かぶ



猿のわかりやすい反応に鼻で笑い、風太郎んちに来いよと言えば、相変わらず勢いのいい返事が返ってきた。



すぐに電話を終了させ、運転席に乗り込むと

次は自身のスマホをタップし、風太郎へと連絡をすれば、いつもの落ち着いた声。


その声を聞きながら、チラリと後部座席で眠る少女をミラー越しに確認すると、風太郎がどんな反応をするのか気になる気持ちを抑え、車をゆっくりと走らせた

 

「…面白いの拾ったから、今からそっち行くわ」

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