第八話、その金髪少女を知る者達
梓が騒ぎを起こしていた時、龍崎組の本拠にて若い男が部屋でガクガクとうずくまっていた。
「おーい、調子はどうだ」
「す、すみません…!!」
様子を見に来た幹部の片桐はこの新入りが数日前に腰を抜かして以来怯えきった様子だった。
「あ、あの金髪のガキは一体なんなんですか!?」
「前話したろ?俺らと仲良しなお巡りさんで何でもありないかれたお巡りさんだよ。梓さんは裏社会じゃ超有名な元殺し屋だよ」
「そりゃあ話は聞いてましたけど!!あの眼鏡の女の方はなりがお巡りっぽくてすぐ分かりましたけど、金髪のガキの方は補導でもされたんかと思って…でもヤクザの所に補導したガキ連れてくんのおかしくないかって思ってたら…」
「それ、梓さんと凛子さんがセットで来ると初めて見る奴みんな言うんだよなー。俺もそう見えるもん」
補導した警察官と補導された子、梓と凛子が並べばそれ以外に見えないのは事実である。
当時、使いっ走りから帰ってきた新入りは正門いる梓と凛子の組み合わせに不思議そうに見ていた。
「いや、もうあのガキがお巡りなのはこの際いいですよ!!でもいくら元殺し屋だったからって俺達が5人がかりでやっと開れる正門を片手で軽々しく開けるって化け物でしょ!?それとも裏社会の有名な殺し屋って化け物ばっかなんすか!?」
が、つかの間梓の行動に腰を抜かす羽目になった。
「んなわけないねぇよ、梓さん限定よ。鳥みたいに人が飛べるか?無理だろ、どんな人間でも出来る事出来ねぇ事がある。梓さんはまさにお前が言う通り化け物だって事よ」
「よく分かんねぇっすよ!!兄貴」
「あはははは!!そう理解するのは難しいぜ、良い大学出てるやつでも難問さ」
頭を抱える新入りを楽しそうに片桐は眺めた。
同時刻、繁華街にて
「あー、マジ怖かった梓さん…お前が声に出して笑うから」
「マジごめんって…」
殺し屋コンビはとぼとぼと歩く。
すると騒ぎが聞こえてくる。
近くにいる人々の話を盗み聞きすると痴話喧嘩らしい。
「昼っから痴話喧嘩とか呑気なもんだぜ」
「そうだな…ってあれ梓さんじゃね?」
人混みで見えなかったが、梓が高らかと飛んでいった事により姿を認識した。そして殺し屋コンビは騒ぎの原因は梓だと理解した。
「飛んでったな、すげー殺気で」
「確実に殺りにいったな」
そして梓の行動の意味を理解した。
「…誰だか知らないが大馬鹿者がいたんだな」
「あーあ、ばーかばーか」
梓をよく知る殺し屋コンビは、その後どういう結果になるか良く理解していた。
それはこの殺し屋コンビだけじゃない、飛んていった梓を見かけた街中に潜んでいた裏社会の協力者達も
(…あーあ、馬鹿だな)
と誰もが思った。