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ぐるぐる  作者: ゆう
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第九話、マットせんせいによる金髪少女解説

♪マットせんせーい、カッチャカッチャ♪

♪きょうもたのしくカッチャカッチャ♪

♪ロックンロールにあわせてカッチャカッチャ♪


「…先生、マット先生お茶をお持ちしましたよ」

ロックな音楽に合わせて陽気に歌うマットにお茶菓子を持ってきた若い女の助手が声をかける。

「ありがとう☆いやお客様申し訳御座いませんね、お茶を出すのが遅くなって。でも彼女は悪くないんだ、僕が彼女に頼んだのがついさっきだったから僕が悪いんだ。本当に申し訳無い、お待たせしました、どうぞお飲み下さいな」

マットは平謝りをしながら助手が置いたお茶菓子をお客様に進める。

「あれ?君は飲まないの?一緒にお茶しようよ、このお客様楽しい人だよ?」

「…遠慮しときます」

助手の分が無い事に気付いたマットは同席を進めるが助手はなぜか怪訝そうな顔して頑なに断る。

「そっか、君はホント人見知りだね!まあ無理矢理は良くないから気が向いたらで良いよ☆」

無理強いはしない、はたから聞けばマット良い上司である。

しかしマットが良い上司というよりは変わった上司であると助手は思う。

なぜかというと、まず目の前のお客様が生きていないからだ。

解剖する遺体をマットはお客様として扱っていた。

死体相手に楽しい音楽をかけ、明るく話しかけ、お茶菓子を振る舞う。

それは変わった死者の敬い方とかではない。

「すみませんお客様、電話でますね…もしもーし、マットでーす☆えっ撃たれて死にそうで今すぐ手術してほしいの?すんませんね~、まだ大事なお客様いらっしゃるんで後じゃなきゃ無理だわ〜。そんじゃ」

あっさりと電話を切るマット。

「また断ると思いましたよ」

マットは人の生死を平等に考えてる。

彼の中では生命活動の有無で優先順位が変わるなどあり得ない。

今すぐ手術が必要な人間がいても、先に解剖が入っていれば、絶対解剖に中断しない。

お客様は丁重にもてなすからこそ今いるお客様を蔑ろにしないのがマットだ。

今のようなやり取りを数えきれないほど聞いてきた助手は先に解剖の予定が入ってなければ闇医者として凄腕の技術を持つマットならば撃たれた人は確実に助かったのに、もう運が無かったんだなと思うようになった。

いつも助けを求めてる相手は存在しない部署を知ってるほどの御偉いさんだ。けれどそんな事マットは気にしない。

普通なら今頃殺されてるであろうが、マットには殺してはもったいないほどの技術がありそれを理由にどっかの国の御偉いさんを見殺しにしても国際問題にすら発展しない。

「もしもーし、マットでぇす!今お客様が帰ったから、今からならいいよ!えっ?もう死んだ?なんで死んでも来てもいいじゃん?…あれ?切れちゃった。なんか怒ってるね~、なんでだろう?」

マットは本当に不思議そうな顔をする。マットの思考からして電話相手が怒る理由を理解するのは一生不可能だろう。

「まあいいや、それで君も何のようだったの?」

自分の助手がお茶を出しに来ただけではないと気付いていたマットはなんだかんだいって鋭い。

「…この間の健康診断の結果です」

マットに助手は紙を渡した。

「あー、梓ちゃんのかー。そんな驚いた顔しなくても僕らっだって健康診断くらいやるんだよ?労働者の義務だしね!」

「そうじゃなくって!!その結果ですよ!!明らかに異常ですよ!?」

「梓ちゃんの場合は異常が通常だからいいんだよ~、前に話したでしょ?あの子は人体実験で身体能力が化け物並みになってるって」

「それが異常って言ってるんですよ!?人体実験で人間から引き出せる身体能力を遥かに上回ってるんですよ!?こんな結果出せるはずがない!!」

「そっか~、君は人体実験について詳しいもんね」

存在しない部署でマットの助手をしてる人間がまともなわけがない。前に人体実験に携わっていた助手はバツが悪そうな顔をする。

「…本来は人間が体に負担をかけないようにするリミットを強制的に外して、その人間の最大の身体能力を引き出す事しか出来ない。例えばリミット外して100キロまでの物が持てる人間は200キロは絶対持てない。本来の身体能力で無いものは無いのさ。

死んだ人間を生き返せるくらい無理なことだよね」

「だったらなぜ梓ちゃんは人間の限界を遥かに超えた結果が出てるんですか!?」

人体実験はリミットを外すために行われるものだ。

それを知ってるからこそ助手は驚いていたのだ。


「昔話しようか、人を超える化け物を作ろうとした科学者達がいた。来る日も来る日不可能な実験をどっかから攫ってきた小さな子供達にしたのさ、拷問のような実験を。もはや実験じゃないね、ただの虐殺。不可能なんだから結果なんか出るわけないじゃない、時間の無駄だね。ところがその科学者達は、お馬鹿さんでね…まるで神頼みように実験を続けた。もう科学者じゃないね、ただの狂信者さ。ここまではよくある話なんだよね」

裏社会で生き抜いてきた者にとってはそんな珍しくない話だ。

「ところが実験は成功した!神の奇跡だ!狂信者達はそりゃあ喜んださ!!そんで喜びの束の間に殺されたんだけどね…実験の成功例である梓ちゃんにね。そりゃあ自分に拷問じみた実験した相手だもん、ぐちゃんぐちゃんにしちゃうよね☆」

「…成功した…?そんなの不可能でしょ!?」

まるで死んだ者が生き返ったのを目の辺りにするくらい驚く事だった。

「そこが摩訶不思議の不思議、梓ちゃんにだけ実験で何かが起こったのか…ホント神の奇跡しか言いようがないんだよね。どんなに調べても原因は分かんないしさ」

科学じゃ解明出来ない、まさに梓のことである。

「梓ちゃんの金髪って染めてんじゃなくて、実験の影響で金髪になっちゃったんだよね。あの子は日本人で元々黒髪だよ」

「てっきり染めてるものかと…ほらガラが悪いし」

梓は日本人だと分かる顔立ちをしてるので日本人だと思っていたが金髪が地毛だとは助手は思わなかった。

「だよね〜、ガラが悪いから分かんないよね☆……さてさて、この実験で日本人は梓ちゃんだけだったんだ。まあ紛争真っ只中の国で実験してるからその辺の子供攫ったほうが早いからね。日本人を使うなんて輸入する手間をかけるしかないじゃん」


「あの子はね、探してるのさ、自分を意図的に実験体として渡した相手を」














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