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チクタックの町

 チクタックの外壁に着くと、町の入口に長槍を持ち、鉄製の胸当てと籠手を装備した若い男が二人いた。彼らはジンジャーを見つけるに、長槍で進路を妨害してきた。


「お前、見たことない顔だ。夜中にチクタックを訪れるなど怪しい奴だ」

「ヒト……、ココ……、ハコブ」

「カタコトで話すなど、更に怪しい」

「夕方に到着する団体の観光客はもう町に入っている。次の予定は朝のはずだが?」

「ヒト……、ケガ……、ハコンダ」

「怪しい奴を町に入れるわけにはいかん。入るなら身体検査をするぞ」


 ジンジャーは目的を懸命に伝えようとしたものの、男二人に不審者だと判断されてしまった。

 身体検査、身体を調べること。そうなっては、帽子を取られ、ジンジャーが鬼だということが二人にばれてしまう。

 シンバは、チクタックへ移動する間に意識を失ってしまい、話すことが出来ない。段々と身体が冷たくなっており、一刻の猶予もない。

 ジンジャーは意を決し、男二人を振り切ってチクタックに入っていった。


「おい、待て!!」

「不審者が町の中に入った、そいつを捕まえろ!!」


 背後で、振り切った男が叫び、警鐘の音が聞こえた。

 警鐘が鳴った直後、ジンジャーを追いかける足音が多くなった。きっと、仲間を呼ばれたのだろう。

 大勢の人間が立ち止まり、こちらを見ている。誰もいないのであれば、ジンジャーの脚力で振り切れただろうが、こちらをじっと見ている人間たちが邪魔で、思ったように動けない。


「ボウシ」


 逃げるために、ジンジャーは邪魔な人間たちの頭上を飛び越えたりと上下激しく身体を動かしている。先ほど、魔物との戦闘で帽子が取れ、シンバに鬼だと怯えられたせいもあり、余計、意識が帽子のほうへ向いてしまう。


「よし、取り囲んだ。逃がさんぞ!」


 そうこうしている内に、ジンジャーはガタイの良い男たちに取り囲まれてしまった。

 シンバを背負っている状態で振り切るのは難しそうだ。


「ネズミみてえにすばしっこく逃げ回りやがって……」


 男たちがじりじりと近づいてくる。

 帽子を外し、角を彼らに見せることで意表を突けば、その隙に逃げられるかもしれない。ジンジャーは最悪の手段を使おうと頭を下げ、帽子を外そうとしたそのときーー。


「ま、待ってくれ!」

「おい、あいつが背負ってるの……、【鐘突き】のシンバじゃねえか!?」

「この少年は怪我をしていて歩けない私を運んでくれたんだ」

「歩けない……?」

「おい、シンバの足に巻かれた包帯から血が滲んでる」

「出血がやべえ! 早く神父様の元へ連れていかねえと!」


 シンバが意識を取り戻し、大声を出した。

 シンバの声を聞いた男たちは、現状を理解しジンジャーを教会へ誘導した。


 教会はジンジャーがいた場所からすぐ近くにあった。


「神父様! シンバが大怪我してる」


 教会に入ると、神父と呼ばれる高齢の男性が現れた。

 ジンジャーはシンバを絨毯の上に寝かせ、足に巻いた包帯をほどいた。

 シンバの怪我の状態を見た神父はブツブツと呟き、ぽっと淡く光る手でそこに触れた。すると、魔物の爪で抉れた傷が一瞬で塞がれた。


「マホウ……」


 人間は”ジュモン”を使い、色々な現象を起こす”マホウ”を使える、と聞いたことがある。神父がシンバの傷を塞いだ現象がマホウだろう。


「神父様、癒して下さりありがとうございます」

「シンバよ、残念じゃがーー」


 神父が話す前に、シンバは自身の異変に気づいた。怪我をしたほうの足が動かせないのだ。

 シンバは自分の足で立ち上がろうと踏ん張ったが、足はピクリとも動かず、立てなかった。


「ワシの魔法では傷を塞ぐので精一杯じゃった」

「そう、ですか……」

「ええ!? シンバが歩けねえなら、誰が時計塔の鐘を鳴らすんだよ」


 シンバの足が不自由になった事を知った男の一人が、悲嘆の声をあげた。

 周りの人たちが何を慌てているのか、この時のジンジャーは分かっていなかった。足の傷が塞がり、助かったのになぜ皆は喜ばないのだろうと不思議に思っていた。


「私の代わりに時計塔の鐘を鳴らしてくれる人を探さなくては」


 シンバが苦渋の表情を浮かべている。


「すぐに見つかるかどうか……」

「シンバ?」

「ああ、考え事をしていてね。あ、いや……、君ならーー」


 シンバを心配したジンジャーが声をかける。

 シンバは急に晴れた顔をして、ジンジャーの両肩をがっしりと掴んだ。


「ジンジャー、私の代わりに時計塔の鐘を突いてくれないか?」

「トケイ、トウ……?」


 ジンジャーはシンバの言っている意味が分からず、首を傾げた。

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