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鳴らない目覚まし

 時間が過ぎても時計塔の鐘は鳴らなかった。

 鐘の音はサフラにも聞こえているから、シンバの聴力でも聞こえるはずだ。


「はあ……」


 シンバは深いため息をついた。

 アンバーが仕事をしなかったことに失望しているのだろう。


「やはり、【鐘突き】は私がやったほうがーー」


 仕事をアンバーに譲ったものの、仕事が出来ないのであれば元に戻した方がいいのではないかとシンバは独り言を呟いた。


「と、とにかく僕は父さんと皆を起こしてくる!!」


 時計塔の鐘が鳴らないということは、家族は時間が過ぎたことに気づかずにぐっすりと眠ってしまっている。

 ジンジャーは慌てて家の中に入り、イズチとサフラが眠ってる寝室へと入り、二人を叩き起こした。


「……まだ鐘の音が聞こえてないわ」

「でも七時を過ぎた! だから仕事を始めなきゃ」

「シチジ……? ハジカミ、その丸いのはなんだ?」

「あら、ほんとね。七時過ぎだわ」


 二人は鐘の音がなっていない、時間になっていないとジンジャーに文句を言った。

 ジンジャーは懐中時計のフタを開き、現在の時刻を二人に突き付けた。しかし、時計を知らないイズチは聞いたことのない単語と初めての道具を見て戸惑っている。

 サフラは二十年ぶりに見る時計を見て、現状を理解してくれた。


「ハジカミ、里の皆を起こしてきて」


 状況が分からないイズチについてはサフラが説明してくれるだろう。

 ジンジャーは自宅を出て、他の鬼の家を尋ね、仕事の時間だということを伝えにまわった。皆、イズチと同じ反応をしており、納得してもらうのに苦労した。


 一時間が経過した。それでも鐘の音が聞こえない。

 自宅へ戻ると、シンバが町へ戻る支度を始めていた。


「これは寝坊じゃなさそうだ。急いで町へ戻る」


 鐘が一時間経っても鳴らないというのは【鐘突き】のアンバーに何かあったからだ。

 娘を心配したシンバは、馬の調子を確かめたあと馬車に乗った。


「ジンジャー、また来るよ」

「うん。またね」


 シンバは馬に鞭を打ち、チクタックへ帰っていった。

 ジンジャーは馬車が見えなくなるまで、見送った。



 翌日も時計塔の鐘は鳴らなかった。

 懐中時計で時刻が分かるジンジャーは、再び皆を起こしにまわる羽目になった。

 シンバが帰ったというのに、二日続けて時計塔の鐘が鳴らないのはおかしい。


「ハジカミ、一体何が起こっているの?」


 異常を察したサテラがジンジャーに話しかけてきた。

 ジンジャーはイズチに仕事に遅れることを伝え、サテラと二人きりになる。


「時計塔の鐘は毎朝七時に【鐘突き】が鳴らすんだ」


 昨日はシンバの娘のアンバーが鳴らすはずが、鳴らさなかったこと。今日はシンバが帰ったというのに鳴らなかった。

 ジンジャーは懐中時計で時間を確認し、毎朝鐘を鳴らしていたことをサフラに話した。


「二日続けて鳴らないとなると……、チクタックで問題が起こったのかもしれないね」


 話を聞いたサフラは考えられる原因を口にした。


「これからも鳴らないとなると……、この懐中時計が頼りだねえ。ジンジャーが皆を起こしにいかないと、酒の味が悪くなってしまう」

「どうして……」


 ここでは鐘の音を基準に生活している。

 鐘の音がないと、皆が起きる時間がばらけ、酒造の仕事にムラが出る。そうなると必然的に酒の味が落ちてしまう。


 どうしてチクタックの時計塔の鐘が鳴らなくなったのだろう。

 ジンジャーはできるならチクタックに戻って、鐘の音が鳴らない原因を知りたかった。でも、自分の正体が鬼だということは町に知れ渡ってしまっていて、町に入るのは難しい、助けてくれたエリオルに迷惑をかけてしまう。


「原因はシンバさんに聞くしかないよ。このまま鐘の音が聞こえないのであれば、目覚まし時計を仕入れるしかないね」

「……そうだね」

「うんうん悩んでも答えは出ない! ハジカミ、仕事に行っておいで」


 ばしんとサフラに背中を叩かれ、ジンジャーは仕事へ出掛けた。

 

 その後、時計塔の鐘の音が鳴ることはなかった。

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