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再会

 ジンジャーを追って、シンバとアンバーはギルドに入った。

 ギルドの内装はシンバが働いていたときと変わっていない。変わったのは働いている人々だろうか。体力のありそうな若者が男女問わずいる。


「シンバじゃねえか。久しぶりだな」

「久しぶり」

「足が治ったんだって? さっきパトロールから戻ってきたやつに聞いたよ」

「ありがとう。それよりもーー」

「……ジンジャーのことだな? マスターが呼んでる。お前一人だけ通せだと」

「あたしもジンジャーに会いたい!」


 ジンジャーに会えるのはシンバだけ。シンバの同僚だった中年の男にそう告げられた。

 すぐさまアンバーは抗議する。


「お前の娘だよな? 大きくなったなあ」

「おじさん! 誤魔化さないでよ!!」


 男は親戚のおじさんのようにアンバーの頭を親しげに撫でる。

 シンバの同僚に会うとよく頭を撫でられるため、そのやり取りに慣れているアンバーだが、今は成長を喜ばれている場合ではない。

 アンバーが男に文句を言うと、彼は腕を組み、唸った。


「シンバ一人だけ通せと言ったのはマスターだ。どうしたものか……」

「私が責任を持つ。だから、娘も通してはくれまいか」

「……お前、昔から頑固だからなあ。ああ。分かったよ」


 シンバとアンバーは男が塞いでいた地下室への階段を下る。


「お父さん、ここは?」

「備品庫。衣類、薬、保存食、水、酒、それと武器が保管されている」


 シンバがいた頃と変わらないのであればだが。


「その……、ギルドマスターがいるって部屋はどこなの?」


 階段を下り終えると、複数の部屋がある。当時は各部屋に区別して備品が置かれていた。

 シンバはアンバーにジンジャーのいる場所を尋ねられ、記憶の糸を辿る。

 この地下室にはギルドマスターもよく来ていた。彼はよく衣類と酒が保管されている部屋に入っていた。ここで二つに絞られる。

 シンバは二つの部屋のドアを見る。衣類が保管されているだろう部屋だけに明かりがついていた。


「あの部屋だと思う」


 シンバは明かりがついている部屋へ向かう。ドアノブに手をかけ、試しに回してみると鍵が開いていた。


「マスター、シンバです。入ってもいいですか」

「入りたまえ」


 シンバは部屋の中にいるだろうギルドマスターに声をかけると、彼の声が聞こえた。

 シンバとアンバーは部屋の中に入る。

 衣類が詰まれた部屋に、ギルドマスターの服を着た男性のエルフがいて、男性がひとり入れるほどの木箱が置いてあった。


「シンバ、久しいな」

「お久しぶりです。マスター」

「いやいや、君はギルドを辞めただろ。ワシの事はエリオルと呼びなさい」

「……私がギルドを辞めてから十八年経ちますが、エリオル様はお若いですね」

「そりゃ、エルフだからな! お前は年を取ったなあ。目元と口元に皺が出来ておる」

「ちょ!? エルフって……。人嫌いで知恵を借りようとすると高額の謝礼を吹っ掛けるあのエルフ!?」

「うぬ? ワシの正体を知っているシンバだけを通せと命じたのに……。あやつ、耳が遠くなったのか?」


 アンバーはエルフが目の前にいることに驚愕している。

 エルフは人が大嫌いで、滅多に人里に姿を現さない。彼らは長寿であるため、魔法と薬学の知識に長けている。そのため、人間が疫病にかかった際、彼らに治療法を乞うのだが、その見返りとして高価な宝石や衣類などの謝礼を要求する。

 人間にとって、エルフは司教のクーヘンのような強欲な種族という印象を持たれている。

 かというシンバも、ギルドマスターの正体を知るまでは娘と同じ認識だった。


「いえ、私が無理を言いました。この子は娘のアンバーです」

「アンバー! 二年も見ないうちに綺麗になったなあ。学校では素敵なボーイフレンドに出会えたのかい?」

「茶化さないで! まったく、ギルドのおじさんたちはいつもあたしのこと子供扱いするんだから……」

「そりゃそうさ。シンバが【鐘突き】の仕事を見つけるまで、赤子のお主をワシらが世話してたんだからな。あやしたり、ミルクをあげたり、おむつを替えたりーー」

「このエルフがあのギルドマスターと同一人物なのは分かったわ……」


 アンバーは頭を抱え、首を横に振る。


「エリオル様。私は首都の学校から帰ってきた娘の顔を見せにきたわけではありません。教会から身柄をここに移されたジンジャーに会いに来たのです」


 シンバは脱線した話を元に戻し、本題に入った。

 二ヤついた顔でアンバーの昔話をしていたエリオルだったが、その話題を振られた途端、険しい顔つきになった。


「ワシはジンジャーの父親と知り合いだ。最悪の事態が起こったら、ジンジャーを隠れ里へ帰すよう頼まれている」

「ジンジャーは……、そこの木箱の中ですか」

「うむ」


 エリオルが鬼と親交があるなんて知らなかった。彼の話が本当ならば、エリオルはジンジャーの存在を知っており、遠くから見守ってくれていたのだ。

 シンバはエリオルが味方だと分かり、ほっとする。

 アンバーはジンジャーの居場所を知るなり、木箱へ駆け寄った。


「ジンジャー、そこにいるんでしょ!? あたしよ、アンバーよ!」


 アンバーはジンジャーに声をかけながら木箱を開けた。

 ジンジャーはそこですやすやと眠っている。

 アンバーは眠っているジンジャーを起こそうと木箱の中に手を伸ばしたが、それをエリオルが止める。


「ジンジャーとはいえ、聖女の力を長く受け過ぎた。身体を休ませてやってほしい」

「でも、もうジンジャーとお別れなんでしょ……?」


 アンバーは今にも泣きそうな顔で、エリオルに問う。

 エリオルはアンバーから視線を逸らし、苦渋の表情を浮かべた。


「あたしは短い間だったけど、こんな別れ方は嫌! ジンジャーに次の【鐘突き】は私だって認めてほしいの!」


 エリオルの制止を振り切り、アンバーは木箱に手を伸ばし、ジンジャーの身体を激しく揺らす。

 アンバーはバランスを崩し、木箱の中に顔から落ちた。

 

「アンバー!」


 シンバは変な体勢で木箱の中に落ちたアンバーを心配し、木箱の中を除く。


「シンバ……、アンバー」

「ジンジャー!」


 身体を激しく揺すられ、アンバーが落ちた衝撃でジンジャーが目覚める。

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