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鬼とシンバ

 ジンジャーとシンバが出会ったのは二年前。

 夜、チクタックから離れた木々に囲まれた街道で、シンバが魔物の群れに襲われていたところをジンジャーが助けたのがきっかけである。

 その時もジンジャーは帽子で角を隠していたが、魔物との戦闘で帽子が吹き飛ばされてしまい、シンバに正体がばれてしまった。


「た、頼む! 殺さないでくれ!!」


 ジンジャーは魔物の群れを倒し、足に怪我を負っているシンバに近づくと彼は命乞いをしてきた。


「……コロサナイ」

「お、お前、言葉が分かるのか!?」


 自身の気持ちをシンバに伝える。

 当時のジンジャーは人の言葉を理解することはできたが、話すのは得意ではなかった。

 シンバの問いにジンジャーはこくりと頷く。


「ケガ……」


 ジンジャーはシンバの足を指した。魔物の爪で足の肉を抉られており、歩くことはできない。移動で使っていた馬車は車輪を魔物に壊され、馬は食い殺されてしまった。

 このまま放っておいたら、シンバは死んでしまうだろう。


「手負いの私を食うのか?」


 ジンジャーは首を横に振った。


「騙されないぞ! お前ら鬼は人間を食う生き物だからな」

「ヒト……、タベナイ。マズイ」


 シンバの言う通り、鬼は人を食らうときがある。だが、人を食うのは近くに食べるものがないよっぽどなときで、ジンジャーはその機会にあったことがない。それに人を食らえば大勢の武器を持った人間が復讐にきて面倒だとか。


 鬼は人間より身体的能力が強く、人間から「化け物」と恐れられ差別されている種族だ。魔物よりも人間に近しい外見をしており、帽子で角を隠せばまずばれない。

 仲間から、人間と出会いそうな場所に出掛ける際は帽子で角を隠すよう言われたのに、魔物との戦闘に夢中ですっかり忘れていた。


 ジンジャーは身振り手振りでシンバを襲って食べる気はないことを伝えた。

 次第にこちらを睨んでいたシンバの表情が緩んでゆく。どうやらジンジャーの言葉が伝わり警戒を解いてくれたようだ。


「マチ……、ハコブ」

「助けてくれるのか?」


 ジンジャーは魔物との戦闘で落とした帽子を拾い、深く被る。彼は壊れた馬車にあったシンバの着替えを破り、包帯代わりにした後、それをシンバの怪我をした足にきつく巻いた。

 早くシンバの足を治療しなければ。

 ジンジャーはシンバを背負い、人が集まって暮らしているという場所、”マチ”まで駆けた。

 鬼の脚力は成人男性を背負っていても、馬並みの速さがある。


「道沿いに走るとチクタックに着く。頼む、私をそこまで連れて行ってくれ」


 シンバは振り落とされまいとジンジャーの身体に強くしがみつき、目的地を告げた。

 ジンジャーはシンバの言う通りに街道を走る。

 しばらく駆けていると、景色が木々に囲まれた場所から小麦畑に変わった。

 道の先に、魔物の侵入を防ぐための外壁とそれよりも高い建物を見つけた。人の気配が強く感じることからしてあそこがチクタックみたいだ。


 大勢の人間が暮らしている場所に近づくのはジンジャーにとって初めての経験だ。それが”マチ”だというのは仲間たちに教わっていたが、彼らもそこに入ったことはなく、鬼のすみかの付近で魔物を狩りにきた冒険者たちの会話を盗み聞きした程度の知識である。

 すみかに帰って、家族に【人間を助け、マチまで運んだこと】を話したらどうなるだろうか、などとジンジャーは考えたが、すぐに内緒にしたほうがいいと結論を出した。なぜなら『人間に深く関わるな!』と説教されるに違いないからだ。

ジンジャーの過去話、次回も続きます。

次話は20時頃に更新します。

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