鳴り止まない
初めてなのでお手柔らかにお願いしますっ!
短めで構成がおかしい?ですが。
そこは暗いと言っても、夕やけに照らされて少しだけ明るい森の獣道だった。
いや、少しだけ明るいが本当に微々たる感じで森の薄気味悪さが勝って、普通に薄暗い。
早く家に帰りたい、早く家に帰りたい、早く家に帰りたい。
と頭の中でさっきから何度も臆病な自分が言ってきて鳴り止まない。そうしたいのも山々なんだが帰れない理由が僕の前と後ろにいてそんなことは叶わない。
思わずため息が出た。すると、
「何ため息ついてんだッ」
と後ろから小太りの奴が怒鳴ってきた。
「お前俺たちのことウザく思ってるのか。」
前の背が高い奴が振り返って苛立った感じで言ってきた。
「お前が俺たちをウザイと思える立場にいつなったんだよ、オイッ!下僕がよッ。」
突然腹に蹴りを入れられて僕は「がはッ」と後ろに少しだけ吹っ飛び倒れた、と思いきや後ろの小太りの奴が俺の背中を両手で支え倒れるのを阻止した。
一安心かと思いきや急に小太りの奴が両手の支えを解除し、背中から肩に両手を移し、後ろに引っ張られた。
バランスを崩した僕は後ろに倒れ歩いていたところが斜面だったためそのまま下に結構な速さでゴロゴロと転がった。
途中、小枝や角張った石などがあり手には擦り傷ができ、制服はかなり硬い生地で作られているはずだが膝のところが破けていた。
やっと、上から転がった勢いがなくなり仰向けのまま倒れていた。
転がったてきた方を見るとうすら笑いをしながらこちらを二人が見ていた。
どうしてこうなったんだろう、そう考えるとあの小太りの奴、高志と背の高い奴、雅史あの二人が僕に目をつけた時から穏やかだった高校生活が音をたてて壊れていった。
入学した時の僕は隠キャでどこにでもいるクラスメイトで少しだけ人付き合いはいい方でクラスに馴染んでいた。
しかし、何故か高志と雅史に目をつけられた。
理由は全くわからない。それから僕がクラスで友達だと思っていた人や他の人たちに話しかけても無視されるようになった。それはどうしてなのか、そう思ったが窓側の席を見るとその疑問は解決した。
あの二人がこちらを見て気持ち悪い笑みを浮かべてこっちを見ていた。
最初は我慢していて静かにしていた。
だけどある日のいつもの河川敷を通る帰りに高校生になったお祝いとして親に頼んで買ってもらった携帯ラジオをイヤホンで聴いていた。
そもそも僕は歌を聴くのが好きでいろんな人のイチオシの歌が流れる局をいつも好んで聞いていた。
しかしその日は後ろからつけてきていた高志に突然携帯ラジオを取り上げられて僕は返せよ、と結構大きな声でいった。
「キモいんだよ」
と静かに言われ川の方に投げられた。僕は最初気持ち悪いと思った。
道徳心のかけらもない行動にとても嫌悪感を抱いた。
そして必死になって、携帯ラジオを探し、運良く川辺に落ちていた。
だが水に浸かったのが悪かったのか電源を入れてみると
ザッ、ザァッ、ザァァァァ。
とノイズ音を出して、もうラジオ放送や歌を聴くことができなくなっていた。
それからどんどんいじめはエスカレートしていき、段々と僕の心は悲鳴をあげていきそんなこんなで今に至る。と思い出したくもない記憶を思い出しながらよろよろと立ち、
早く来い、と促され痛い足を少々引きずりながら転がった斜面を登っていった。
その時、森の奥から
ザッ、ザアッ、ザァァァァ。
聞き覚えのあるノイズ音が聞こえた。額に汗がぶぁっと出た。
ゆっくりとノイズ音が聞こえた森の奥を見ると見慣れた携帯ラジオをぶら下げて直立している黒い霧をまとって顔が見えない男がこちらの方向を見ていた。
何故男だと分かったのか、それはわからない。
だけど直感的にそう思った。
そして何故僕の携帯ラジオを持っているのか、と最初はこの事を考えていた。
しかし、そんな考えはすぐに通り越し、次にきたのは怖いという感情だった。
「ひぃッ。」
「高志、雅史ッ。」
と腰が抜けてその場に尻もちをついて情けない声を上げてあの二人を呼んだ。
二人は驚いてこっちに走ってきた。
人がいた、と先ほど黒い男がいたところを指を指しうわずった声で言った。
二人はサッとそっちを見たがそこには誰もいなかった。二人は騙されたと思い顔が歪み、こちらを躊躇なく殴ってきた。
本当だよ、と一生懸命弁明しても殴る手は止まらなかなかった。その時、
ザッ、ザァッ、ザァァァァ。
と聞こえた。
今度は僕を殴っている二人の背後にいつのまにか立っていた。
すると驚く事に二人は後ろの男に気づいていなかった。
こんなに近い距離でしかもこの森に居ては絶対に聞く事がないこの耳障りなノイズ音が今聴こえているにも関わらず。
ドタッ、ドタッ。
急に僕を殴っていた二人が目の前で糸が切れたようにうつ伏せに倒れた。
倒れた二人を恐る恐る見ると背中に包丁が刺さっていた。地面に二人の血が溜まっていった。
溜まって、溜まって、たまって、たままあて、たああまたて、たまあおって、たまっぁああて、たあっああて、ああって、ああっあ、あああ、ああ、あ、あ?
頭が真っ白になった、もう、何も考えたくなかった。
ザッ、ザアッ、ザアアアア。
だが、このノイズ音で現実に引き戻された。再び、男を見ると相変わらず顔には黒い霧がかかっていて顔が見えない。
この男は未だに動かずずっと立っていた。
何故僕を殺さないのか、とそんな事を考えていたが逆に怖くなり全身が震えた。
しかし驚く事に人の生存本能は、ここぞという時に発揮された。とっさに体を起こしながら後ろを振り返り、来た方向を逆走した。
ハアッ、ハアッハアッ、ハアッハッ、ハッ。
久しぶりに走ったが本当にキツい。
だけど、あの男に殺されて死ぬくらいなら今の苦痛なんてどうでもいい、と心の中で呟いた。
そうしたらいつもより速く走れているような気がする。
うん、気がする。
後ろが気になり振り返って見ると男は追ってきていなかった。
安心はしたがここで安心して足を止めると急にあの男が現れて殺されるんじゃないか、という恐怖で走る足を止められなかった。
「うわッ」
と木の幹に足が引っかかって転んでもう心も体もボロボロだがすぐに体勢を整えて走るのを続行した。
それから、しばらく息を切らしながら走っていると灯りが見えてきた。その灯りは僕が住んでいる町の家々の灯りだった。森がもう少しで抜ける。あの二人のことを思い出した。
悲しみはない正直、小気味良かった。これからはあの二人から暴力をうけずまた平和な日常へと戻れる。やっぱり、
「こ「ザザッ。」して正解だったんだ。」
「……えっ。」
今僕何が正解だって言ったんだ…。
いや、今はそれじゃなくて、あのノイズ音が聞こえた。
どっ、と冷や汗が出た。振り返ると、あの男がいた。
僕が走ってきた方向にいた。
不気味な事にまた直立不動に立っていた。男は動かないが僕は終わったと思った。
そう思っても走る事は辞めなかった。
最後の力を振り絞り全力で走り、そしてやっと森を抜けて住宅街に出た。
僕はその場にへたり込み、
「ッ……はあッ、はッ、はッ、はあッ。」
肩で息をした。大げさと言っていい程に。
もう走る事もできなかった。これでまた追ってきたらもう抵抗する気力がない。
ザッ、ザアッ、ザアアッ。
聞こえた森の方向を見ると、そこには
男はいなかった。
ザッ、ザアッ、ザアアッ。
ノイズ音だけが聞こえる。
ザッ、ザアッ、ザアアッ。
ずっと流れている。
ザッ、ザアッ、ザアアッ。
森の方から。
ザッ、ザアッ、ザッ……。
そこで僕の意識が途切れた。
「おはようございます。」
「あっ、おはようございます。」
「どうでしたか昨日は、眠れましたか。」
「はい、机の上で寝たのが悪いのか、ちょっと嫌な夢をみました。」
「へぇ、どんな夢ですか。」
「いやーちょっとした現実逃避みたいな夢です。」
「それじゃ、そろそろ自白しませんか。」
「そんなさっきから怖い顔しなくても、もう決心はつきました。」
「えっと、僕が二人を殺しました。理由は二人からされていたいじめです。」
早く家に帰りたい、早く家に帰りたい、早く家に帰りたい。と頭の中で鳴り止まない声を無視しながらこれから長い時間家に帰れないと、いや、もしかしたら帰れないかもしれないと思いながら僕は静かにそう喋っていた。
なんか、謝っときます。すいませんでしたッ!
満足はしないとおもいますが。
よんでくれてうれしいです。