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魔王ノ道(デーモンロード)〜魔王候補者に選ばれました〜  作者: 名の無い猫
第1章 新たな始まりを
5/9

第一部 目覚める

※これは第2話の分割版です。全編よみきる時間の無い方向けに用意しているものです。一気に読める方は全編版をオススメします。


あたたかい光に包まれるような感覚。母親に抱き抱えられているような。そんな感覚を覚える温かさが唐突に消える。


瞬間ハッと目を覚ますと、丈は15メートルを超える木々が並ぶ密林とも呼べる森林にいた。季節でいえば秋の終わりぐらいの寒さだ。


あの光に包まれたあとの記憶は全くと言っていいほどない。しかし今、確実に日本では無いどこかにいるのは間違いない。


そこでいくつかの仮説を立てた。まず大前提にあるのは誘拐だ。これでも大企業の息子だったのだ。それはあのバカも同じことだから。


そこで思考が別の方向へ向く。まて、あいつはどこだ。辺りを見回すが居ない。隣には。と確認して飛び退くほどに驚く。


そこに居たのは幼女。しかもネコミミ尻尾付きの。服の質感的には、日本で無いとすれば上質なものだ。デザインは若干質素ではあるが可愛らしいものになっている。


富裕層だろうか。と考えたところで自分の髪色に違和感を覚える。白かった。 日本人らしい黒髪ではなく、銀色かと思うほど輝く綺麗な白色だ。


気になって他の部分も確認する。服は動きやすそうなパンツにタートルネックのセーターのような何か。女性に関するものはほとんど遮断されていたので、これ以上に表現する語彙が見つからない。


女性の服を着ているらしい自分への困惑が、状況への混乱が重なり思考が止まる。訳が分からない。どうなっているのかもどうしたらいいのかさえ。


とにかく観察と考察を続けなければ。頭を触るってみる。あるはずの場所にはなく、無いはずの場所に獣の耳があった。


動かそうと意識するとピクッピクッと動く。形を把握しようとまさぐるように触るとムズムズする。しっかりと耳らしい(?)。形から察するにネコ科のものだろう。


おしりのあたりも触ってみる。両手で根元を掴んだ瞬間、大きい声が出そうになるがとっさに抑える。自然の中で大きな音を出すのはあまり良くない。何にも見つかっていない状況なら尚更。


どうやら敏感らしい尻尾からそっと手を離して、それを自分で動かしてみる。目視で確認すると、首下辺りまでありそうな長さの尻尾が見える。


色は真っ白だった。つまり髪も真っ白ということだろう。光に当てて良く観察すると、キラキラと光るようなパールホワイトをしていて、思わず綺麗と呟いてしまうほどだ。


いや、生まれてからずっと見てきたのに今更何を言っているんだ。と思ったところでまた思考が止まる。なぜ「生まれてから」と表現したのか、そもそもなぜ今更と思ったのか。


確認のために自分の名前を思い浮かべる。「エメラルド」それが私の名前だ。間違いないという確信と、いや違うという違和感が混じって変な感じだ。


この体にいた人格の記憶が混じっているのか。思考にノイズがかかるが、確信できることがある。ここは元いた地球とは異なる構成をしている惑星だ。


都市伝説の御鑑様が言った通りなら、異界と表現するのが正しいだろうか。地球に近い環境であるなら、ここはブラジルのような場所だと認識しておこう。


行動指針としては「どこでもいいから街に入る」これを一時的な目標とする。と言っても何か宛がある訳では無い。方角、地形から当たりを付けて進むとする。


川沿いに進むのが手っ取り早いのだが、川を探して宛もなく歩くのは死亡率が高い。だから川の方向を見定める。


獣道はこの辺りにありそうもない。山の方を見ようにも、木の丈が高いせいで空しか見えない。なら鳥を探すのはどうだろうか。彼らの飛ぶ方向で方角を絞る。なるべくなら群れる鳥が良いか。


そんなことを考えていると、後ろから名前を呼ぶ声がした。「エルちゃん、何してるの?」と言われハッとする。 彼女の存在を忘れていた。


エルちゃんと呼称する以上は、あのバカである可能性は低い。全く別の生物に乗り移った可能性はあるが、あいつなら何らかの呼び掛けをするだろう。


そういう確信の後、改めて目の前にいる少女を認識する。髪は自然にはなさそうなはっきりとした黒で有りながら毛先は光を反射しているように見える。


体は3歳から5歳くらいの大きさで有りながら、発育が若干進んでいる。人に類するものではあるから、仮に亜人としよう。その亜人だからなのだろうか。


尻尾は実際に比較しないと分からないが、恐らく私の方が長い。代わりに彼女の方が太く見える。体毛が尾にピタッとくっついている訳では無いので分からない。


整った顔立ちをしており、物語の主人公と言われても違和感がないくらいだ。目は赤色よりの赤茶色だ。上手く光が刺しているところはルビーのような輝きをしている。


総括。元いた世界の世間一般で言う美少女である。手早く観察を済ませようとしたのだが、意外と時間が経ってしまったらしい。彼女の方からもう一度声をかけられる。


「大丈夫?...頭、打った?」


立ち上がってこちらに駆け寄ってくる。若干だが、身長は彼女の方が上らしい。目が私より上の位置に来ている。体格は彼女の方が細身だが、力は私の方が少し弱そうな程度の差だ。


身長差というのは慣れっこだ。私は女子よりも身長が低かった。あのバカは高身長揃いのクラス連中の中でも群を抜いて高かったのだ。慣れない方がおかしいというものだ。


「うん、大丈夫。とりあえず歩こうか」


歩きながら「こちらの世界」であった出来事を思い出す。断片的にだが思い出せたことは、瞬間移動装置のようなもの(転移装置としよう)でここに来たことのみだ。


推測になるが、誘拐のようなものに会い、そこから脱出するために転移装置を使ったところ、何らかのアクシデントが起こり、2人とも気絶していたというところだろう。


それ以外のことは体をピッタリとくっつけている幼女に聞くとしよう。私の背中に張り付くようにして着いてくる彼女の方に顔を向けて1つずつ聞いていく。


推測したことは予想どうりで、内容は変わらない。ただ、彼女も断片的にしか覚えていないようなので、絶対ではない。


仮定していた情報もついでに整理する。ここは確かに異界と言うやつらしい。その理由としては3つほど思い浮かんだ。


1つ目。今いる国はアドバイバル。冒険やロマンを求めてやってくるものたちの集落を始まりとする開拓国家。のようなものらしい。


そんな国名は聞いたことがない。開拓国家と定義はしたが、そういった国は現代に存在しないのだ。周りの様子といい、条件の合う場所にはそういった国があった覚えがない。


2つ目。今の自分の姿だ。亜人、正確に言うと獣人(ビースト)の中の猫人族(ケットシー)と呼ばれる種族のようだ。高い身体能力を持つが、魔法の適性が低いとのこと。


3つ目。魔法についてだ。ファンタジーの産物という程度の認識でしかないが、この世界の技術形態のひとつとして存在するので、当たり前のようにこの単語が出てきて戸惑ってしまった。


聞く限り、火を起こす道具のない現状はこれを使えないといけない。もちろん1から。これに関しては歩きながら練習するしかない。集中を割くような行為はなるべく避けたいが仕方ない。


魔法に関して詳しい説明が聞けないので、仕組みは分からないが、魔力と呼ばれるエネルギーのようなものを使って自然界の現象を意図的に起こしたりするもののようだ。


お手軽に化学現象を引き起こせるとは感動的だとは思うが、同時に疑問が浮かぶ。魔力とは、魔法とは一体何なのか。


どういう成り立ちで、どんな歴史をたどってきたか。非常に興味が湧く。そのためには街に行かなくてはならないのだが。


まだまだ見えてきそうもないので、薪集めもついでにやる。並行して魔法の練習もだ。なるべく乾いていて、細めだとよく燃えるらしいのでそれを片手間に探すのは骨が折れる。


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