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魔王ノ道(デーモンロード)〜魔王候補者に選ばれました〜  作者: 名の無い猫
序章〜プロローグ〜
3/9

第三部 門をくぐる

※これは第1話の分割版です。全編よみきる時間の無い方向けに用意しているものです。一気に読める方は全編版をオススメします

早朝。早起きは三文の徳。という言葉がどんな状況でも通用する訳では無いことを痛感させられる朝だ。


何故かってあまりにもはや過ぎるのだ。午前四時前。明らかに早すぎる。ついでに眠い。原因は明白。隣のバカのいびきがあまりにもうるさい。


こんな時間に起きたからとて朝食の時間までにはお腹が減りすぎる。美味しく感じられるのは得と思えるが、状態としてはよろしくない。


ともあれ起きてしまった以上は、活動を始める他ない。二度寝はしない主義なのだ。身支度を整えたあとは、ボトルに入ったお茶を飲みながら提出用のレポートを書く。


部活動費として申請するには、領収書とこのレポートの二重チェックを通ってお金が出される。昔、部活動の一環として私的な旅行の費用に使っていたことが発覚してから、この形式になったらしい。


こういう時にはこういった事務作業のようなものはありがたい。気持ち的に寝ていたい気分をまぎらわせてくれるからだ。尚、この時間に起きた主原因のせいで作業環境は最悪だ。


晩春も言うこともあり暖かくなっては来ているが、東北地方故なのか寒い。正直布団に入っていればどうということは無いのだか、それでは作業がしづらい。


毛布だけでもかけておこう。そう思って、念の為に持ってきた毛布をお腹の辺りまでかける。冷えには弱いのだ。特にこの歳においては冷やしてはならない。


そんな調子で色々なことを悶々と考えながら作業をしていると、スマホのアラームがなり始める。小さくだが、確かに聞こえる音量でなっているので意外にもこれで起きれるのだ。


その音に合わせて幼なじみも起き上がる。自分のスマホを確認して、そこからでは無いことに気づいたらしい。布団から出て俺の隣にあるスマホのアラームを止めに来る。



こっちに来ようと足を進めたのを確認して、アラームを止めてやる。ここまですると完全に目覚めてしまうようで、再び布団に潜り込もうとする気は無くなるらしい。


アラームがなるということは朝の7時だ。俺の方は身支度が済んでいるので、さっさと着替えるように幼馴染を促す。


そういえば朝に三文の徳が得られないのような思考をした気がするが、レポートを書き終えているので今回の旅費を部費とできるので、活動を徳とすると三文以上得をしている事になる。


そんなくだらないことを考えながら広げていた荷物をまとめる。ついでに布団をたたみ終えたところタイミングよく朝食を持ってきてくれた。


和食で統一された朝食は、素朴ながらも趣があって美しいと思えるくらいだ。写真を撮って、レポートの資料にする。食事まで証拠がないと行けないとは難儀なものだ。


味の方もさっぱりながらもちょうど好い塩加減で、起きたての胃に優しい味わいだ。もちろん起きたてでなくとも、朝食として絶品であることに疑いようがないのは言うまでもない。


朝食を済ませたあとは、忘れ物がないかのチェックや機材の点検をしてからチェクアウトをする。お神の心配そうな顔が視界の端に入ったが、それが気にならないほどの高揚感を覚えているのだ。もう止まれない。


旅館を出てすぐに裏手に回ると確かに階段がある。苔が生え、手入れされていないことが分かるそれに足をかけると変な感覚に陥る。言い表せない恐怖感が襲うが、今はそれがスパイスとなり興奮感が増す。


駆け足で駆け上がりたい衝動を押さえつけ、足早に階段を上る。抑えきれない興奮感で最後は駆け足になってしまったが、そんな興奮感は登りきって別の色に変わった。


感動した。涙が溢れそうなほど。神秘的な美しさを持ったその神社は、金額のような煌びやかさや東大寺のような大きさ、伊勢神宮のようなひと目でわかる偉大さがある訳では無い。


しかし、自然と調和しつつ独特の神秘さを持つそれは、感動するほどの美しさを感じさせた。隣にいる幼馴染も同様のようだった。


すぐに我に返り重要そうな場所の写真を撮って回る。手入れがされていない様子から、神主が居ないことはすぐにわかったが、一応すみませんと声を出してみたが反応がなかったので、本当にいないのだろう。


外の撮影を十分だと感じ、幼馴染に十分かと合図を送る。OKのサインを確認してから、「失礼します」と言って中の探索を開始する。


中に入った瞬間、後ずさりたくなるようなオーラのようなものを感じた。2人同時にゴクリと唾を飲み、それぞれ別の方向へ歩を進める。


俺は右回り、幼馴染は左回りだ。奥の壁にたどり着くと、文字列が書いてある。どうやら、不思議と声に出して読みたくなってくるそれから、オーラのようなものが発せられているようだった。


1度は誘惑のようなものを振り払うように首を振ったが、それに負けて2人揃って声に出して読み始める。



我ここに望む


御鑑様の供物とならんことを


故に我らを導きたまえ


我ら望わ飢えからの解放


御鑑様


我ら供物と引き換えに


1(ひととし)の豊穣を



読み終えると出口が勢いよく締まり、中心の柱が光り始める。まるで観音開きの扉が開くように柱が真っ二つに割れ、動き始める。


辺りが輝き始め、同時に自分たちの周りも輝きに包まれている。


思わず目を瞑りそうになる。


直後に幼馴染が手を伸ばす。


「私」はそれに答えるように手を握る。


最後になるなら伝えたいことを告げたい。


そう思った時には、視界が暗転していた。


「今まで嘘をついててごめんね」


その言葉は虚しく響いただけにった。


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