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~ACT1 パートナー~②

 南の都ミュラーにて。

 戦闘描写が苦手な作者が必死に書いた末路をご覧ください。

 さて、その頃南の都ミュラーでは激しい攻防戦が繰り広げられていた。都といっても戦っている場所は郊外から外れた砂漠の中だ。


 ミュラーは砂漠の街だ。いや、砂漠にあった大きなオアシスがそのまま街に発展したと言った方が正しいだろう。小さな都ではあったが、貴重な水と隣国との物資のやりとりでそれなりに人が住んでいる。


 今回はそんな砂漠の中に魔物が現れたのだ。


 オアシスの中に入る前に魔物たちを引きつけて食い止めているのは、まだ二十歳にも満たない少年たちだ。少年たちの目の前には黒く醜い、同じ形をした魔物の群れ。


「何なんっ? こいつら! めっちゃ多くないか?」


 ブツブツと文句を言いながらも魔物をなぎ倒していくのは、切れ長のアメジストのような瞳を持ち、赤銅色しゃくどういろの髪を逆立てた少年だ。


「うるさい。文句を言う暇があるなら、一匹でも多くこいつらを始末しろ」


 そう答えたのはこの少年のパートナーだろう。


 黒い髪に黒い瞳、そして全身黒づくめではあるものの、その黒はこの少年に不思議と良く映えていた。白くきめ細かい肌に美しい顔立ちをしたこの少年は、先程の少年よりも年上のように見える。

 息一つ乱さずに魔物を切り倒していくその姿は、さながら舞でも舞っているかのような優雅さがあった。


「ピューサはホンマにクールやなぁ……。って、うわぁっ! 不意打ちなんて卑怯やで!」


 ピューサの戦いに口を出していた少年の左腕は、魔物からの攻撃により裂けていた。赤い線からぽつぽつと赤い水玉が生まれ、傷口はズキズキと痛み出したが、今はその痛みに構ってはいられない。

 少年はすぐに自分に切りつけてきた魔物を真っ二つにした。しかし頭から股下まで切り裂かれた魔物は、その半身を再生させ、一体から二体へと増えてしまう。


「うわっ! また増えよった!」

「何を遊んでいるんだ? サミュー」


 その時だった。ピューサの通信機が無機質な呼び出し音を響かせた。緊急時の通信手段にと、国王のラジェルが全ピュールヘルツへと持たせているものだ。

 後ろではサミューと呼ばれた少年が何やら叫んでいたが、ピューサはそれにはお構いなしで鳴り続ける通信機を手に取った。


「……、はい。分かりました。ありがとうございます」


 通信は数秒で終わる短いものだった。ピューサはサミューに向き直ると、


「もうすぐここに、援助が来るそうだ。良かったな、命拾いして」


 無感情で無表情にそう言われたサミューは、言い返す言葉がありすぎて何も言えなくなるのだった。




 数分後。ヴァルリたちはピューサたちのいる南の都ミュラー周辺の砂漠へと来ていた。


「誰が担当しているのかと思ったら、サミューとピューサだ! 久しぶりー!」


 どうやらヴァルリとここの担当者たちは顔見知りのようだ。ヴァルリはリールの運転していた車から飛び降りると、サミューの元へと駆け寄った。

 そんなヴァルリの様子に気付いたサミューはアメジストの瞳を驚きに変えていた。しかしその手は休むことなく傍にいる魔物をなぎ倒していく。

 リールはと言うと、のんびりとピューサの元へと歩み寄り、のほほんと声をかけていた。リールもまた、ピューサとサミューのことを知っているようだ。


「やぁ、ピューサ。久しぶり」

「お久しぶりです、ピューサさん」


 会話をしながらもピューサも手を休めることはない。そんなピューサの元へと歩み寄りながら、リールはまるで天気の話でもするかのように問いかけた。


「敵の性質は?」

「増殖型」

「うわぁ~……、厄介。では早速」


 端的なピューサの返答に心底面倒そうに反応したリールは、すっと敵の懐に入り込むと小さく口を動かした。その声は小さすぎて周囲の人間には聞こえない。

 リールが口の動きを止めると同時に左手を前に突き出した。と、次の瞬間リールの周囲を突風が吹き荒れ、その周りを取り囲んでいた魔物が砂埃と共に一掃されていく。

 その様子を見ていたサミューは思わず、ひゅ~と口笛を吹いた。


 今回の魔物は【増殖】と言う厄介な能力を持ち合わせていた。急所を少しでも外して切りつけてしまうと、そこから分裂し、再生、そして増えてしまうのだ。

 この増殖の核となる魔物【ヘッド】は力を増殖に使っているためとても脆い。この【ヘッド】を倒せれば、魔物の増殖も収まるのだが、何分その【ヘッド】へと辿り着くまでの間に有象無象の魔物の群れが待ち構えている。


 リールは先程と同じ要領で次々と消滅魔法を使っていく。リールの周囲の魔物は一つ一つの細胞を消滅へと導かれ、分裂はおろか再生も不可能となり、為す術なく消えていく。


 あっという間に【ヘッド】の周囲を取り囲んでいた魔物は消滅した。残るは【ヘッド】とそれに対峙するヴァルリだった。

 【ヘッド】が最後のあがきと言わんばかりに咆吼する。

 それが合図となり、ヴァルリは一気に【ヘッド】との間合いを詰めた。【ヘッド】の手がヴァルリに伸びるが、その緩慢な動きを見切っていたヴァルリは、


「ふっ!」


 軽々と跳躍すると、その腕に飛び移る。そしてそのまま【ヘッド】の腕を駆け上がると、その核へと易々と刃を突き立てた。

 刃を突き立てられた【ヘッド】の身体は、どっと砂埃を上げながら仰向けに砂漠の中に沈んでいく。


 息一つ乱さずに任務を遂行し終えたヴァルリの周りに、リール、サミュー、ピューサが駆け寄ってきた。


「ヴァルリ、腕上げた?」


 リールの驚いたような声に、ヴァルリはえっへんと胸を張ると、


「当たり前だろ!」


 その言葉を受けたリールには、今のヴァルリが少し頼もしく映るのだった。


「さっ、はよ帰って国王様に報告しようや」


 サミューの言葉を受けて、四人は王宮へ向けてその場を後にするのだった。




 四人が去ってすぐ、今まで戦場となっていた砂漠の真ん中に一人の男が立っていた。

 逆光でその顔は見えないが、乾いた砂漠の真ん中に真っ白なフードを被ったコート姿の出で立ちが奇妙だ。


 男は【ヘッド】の亡骸の傍へと立つと、その顔に触れた。すると【ヘッド】の身体が淡い粒子となって青空へと吸い込まれるように昇っていく。その光はリールが使っていた消滅魔法よりも暖かい。

 男は昇っていく粒子に向かって呟いた。


「……お疲れさま」

 ここまでお読みくださった方々、ありがとうございました。


 補足と言うか、言い訳なんですけど、サミューの方言は決して関西弁ではないです。何故ならここはアトランス帝国なので。


 ここで少しだけ謎を散りばめたんですね、中学生なりに。

 今後どうなるか、またお付き合いくださると幸いです。

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