表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/36

3日目 王都2

遅くなりました。

アレクサンダーさんの受難(笑)

 門を当然のように顔パスで通過すると、国王と弟が待つ執務にすぐ通される。

 二人とも沈痛な面持ちで待っていた。


 「すまん、私の判断ミスだ。」

 二人にそう謝罪し、自分が搜索に出ることを告げる。


 「いえ、私も国王も今回の事態は予測できませんでした、誰の責任でもない。」

 アランは周囲の口の悪い貴族達からは、王位継承者に何かあった時の『予備』という認識の様だが冗談ではない。

私たち兄弟にとって、とても大事な家族だ。


 王も含め我々は、以前から弟が手柄を立てたいと焦っていたのは知っていた。

 そして、今回は事前に『他国の軍人らしき少人数のグループが冒険者に扮して侵入、Bクラス程度の魔獣のテイムによる実験を実施、冒険者が襲われた模様』との情報を得ていた。


 だから手柄を立て、自信をもってもらうために志願した弟を派遣したのだ。

 まさか今回の相手が『Sクラス』しかも『キメラ』であるとは予想もつかなかった。

 そうであれば大事な家族を魔の森になど送らず、自分が出ていた。


 『キメラ』の詳細は知らないが、制御がとても難しく、数百年前にキメラを軍事利用のため作ったはいいが暴走し、滅んだ国があるほどだ。


 冒険者程度の知識ではテイムできるものではない。

しかも人が作り出したもの、魔の森にはいないはずの化け物をどこから連れてきたのか。


 疑惑や疑問は尽きないが起こってしまった事は覆せない。

 ・・・『しかし』と言う言葉は飲み込み、事実に基づき次の行動について相談する。

 国王も弟も冒険者クラスSの私が搜索に出るのが良いという意見には賛成だが、条件があるとの事。


 『討伐に出るのがギルマスだと絶対にバレないように』というものと、

 『搜索は冒険者に扮した近衛兵と行うこと』

 理由は『国と対等な関係の冒険者ギルドの長が、国の兵士を率いて作戦をするのは問題がある』のだそうだ。


 そして弟を救出するため兵を招集し、準備を進めていた所まだ王都も出ていないのに隣国から『兵を率いてどこかに戦争を仕掛けるのか』と警戒されたそうだ。


 そんな訳はない、我が国は他国と違い、資源に困ってもいないし、農作物も豊かだ。

 他国を侵略せずとも十分食べていける実力をもっている。

 それに元々、先に兵士を送り込んだのはどっちだ?

 そんなふざけたことを言い、弟の搜索を邪魔するなら望み通り滅ぼしてくれようか?


 そう思っていると父である王が補足で説明してくれる。

 科学技術も、兵の練度も他国のレベルから見れば遥か上にある我が国は十数年前に我が国の宮廷魔術師が起こした『一人で敵国滅亡事件』以来、我が国に在住している高位の冒険者が少しでも行動を起こしただけで他国は動揺し、警戒されるのだそうだ。

 あまり過激なことをしないよう二人から釘を刺されてしまった。



 以前、我が国の宮廷魔術師が起こした事件も、元々は隣国が宣戦布告も無く、勝手にハーシェスタ王国領内に侵攻しようとしたものを、偶然見つけて止めだけ、今回もギルドが国から依頼されて行なった、国内での調査で起こった事態になのに、なぜ他国に気を遣う必要がある?

 内政干渉にも程が過ぎる。


 恐らく『神聖』の名を冠した「帝国」が横槍を入れてきたのだろう。

 「そんなもん無視だ」と言うと「ギルドマスターの言葉じゃないですよ」と弟に呆れられた。


 Sクラスの冒険者が、直接対処しなければならない事の重大さとやらも語ってくれた。

そんなことは知っているが面倒な駆け引きは本当に嫌だ。

 「国内の問題に内政干渉してくるほうが悪い。それに今回の事件、実態は我が国へ他国の軍が侵入したためだろう。」


 そう言うと弟は黒い笑顔を浮かべながら「侵入者の正体は確定では無いのです。それに駆け引きも大事ですよ。」と言いながら

 今後の対応について説明してくれた。

 要は今回出るのが私や国軍だとバレなきゃいいということであり、私の双子の姉の協力も取り付けているそうだ。


 そして、弟は当然救出。侵入者と魔獣は、できれば生きたまま捕縛、洗いざらい情報を得る方向で行きたいそうだ。


 善は急げということでいつものとおり、いつもの『仮装』のため姉のところに向かう。


 姉は二歳の時に難病を患ったが、例の宮廷魔術師のおかげで死の淵から生還した。

 そのため、彼の魔術師に憧れ、魔術、錬金術をはじめ様々な研究を行い、賢者が去った後は城内で『ウルティメット・マッドアルキメネータ―なお姫さま=ウルマッド姫』と呼ばれる存在になってしまった。

 剣術の腕はBクラス程度だが、錬金術の腕は最高峰、魔術の知識だけで言えばSクラスという化け物だ。


 姉は普段、城の北側にある塔に篭って大好きな錬金術や魔術の研究をしている『ひきこもり』だ。

 姉のいる塔へ入るドアには嫌がらせの様に、鍵替わりに変態的に難しいパズルが設置されている。

 が、もう慣れたので見なくても解くことができる。


 「出番だぞ。」ノックはせずそのまま中へ、どうせ姉上ことだから魔術でのぞき見や盗聴くらいはしているはずだ。


 部屋に入ると開口一番に

 「遅かったな、詳細は解っている。今回は私より君が良いだろう。」と鷹揚に告げる。

 やはりのぞき見をしていたようだ。

 姉、エレクトラがソファに腰掛け、白い綺麗な足を見せつけるように優雅に組む。

 をい、スカートの端から下着が見えているぞ。


 普通の男であれば興奮するだろうが・・・まあ姉なので何も感じない。

 私はその向かい側に座りながら勝手に茶をいれる。

 いい茶葉使っているな〜。


 「弟も言っていたが理由は?」と一応聞いてみる。

 「キメラには魔術は効きにくい、物理で、君の剣で切ったほうが確実だ。」

 まあ、『キメラ』と聞いてからある程度予想はついていたが・・・私は賢者が作ったと言われる聖剣を持っている。


 これはSクラスになった時に父から貰ったもので、聖剣と言われるだけあり無茶苦茶切れるし、とても丈夫だ。


 『やれやれ、また玩具にされるな』と思いながら仮装のため侍女たちを呼ぶように言うと「いや、今回はその必要はない、これを飲め」とエレクトラは私の前にポーションを出す。


 「これは?」一応、確認してみる。

 「毒ではない、かなり便利なものだ、効能は飲んでからのお楽しみだ。」

 いつも人体実験に協力させられているが、こう言う時のモノはロクなものではない以前は猫耳としっぽが生えて来て、最後には猫獣人に変身してしまった。


 元に戻るまで「お世話」とか言いながら城の侍女たちが群がって来て大変だった。もう慣れた・・・慣れたが、念のため再度確認すると『毒はない』とのこと

 『生まれ変わったような気分になれる』というのが少し引っかかるが、時間が惜しいので一口飲んでみる。


 甘いようで少し塩辛く美味しい。

 「意外に美味いな」

 「そうだろう、特製だ」

 そうか、特製か、喉が渇いていたので丁度良い。


 「どうだ?」と姉上が聞いてくるが特段変化は無い。

 「別に、変わりは・・・・」言った所で突然、体中がギシギシ言い出し、激痛が走り私は気を失った。


お姉さん、やりすぎです。

アレクサンダーさ〜ん、どうかご無事で。

なむなむ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ