始まり
いつか夢で見た物語です。
文字にするのも小説書くのも初めてです。
よろしく願いします。
「囲まれた!」
仲間の言葉に周囲を見回すと
獣型とおぼしき魔獣七、八頭に包囲されていた。
爆発音と共に悲鳴が聞こえる。
少し遅れて爆風と生臭い血の臭いがする。
我々は、少し前から魔の森と呼ばれる場所に来ていた。
Bクラス程度の強さの、未確認の魔物が出没し、冒険者が襲われるという事件があり
魔物の調査途中に野営を行なっていたのだが・・・
まさか、結界を破られこんなに簡単に接近を許すとは思っていなかった。
今回、調査に参加した冒険者は20人、全員Bランク以上の猛者達だ。
一国に一人いるかいないかの、英雄扱いであるA、Sランクを除けば
ほぼ最強の戦力であり、Bクラス程度の魔物であれば、いやAクラスでも
複数でなければ、このように簡単に接近を許し、攻撃されるような失敗はしない。
しかし、こちらの攻撃がほとんど効かず、負傷者が出ている。
どうやら高度な魔法を使う厄介な相手の様だ。
想定外の状況に、隊がパニックになりかけた。
このままではまずい、
私は『ライティング』の魔法を発動し、必要最低限の明かりを、
自分たちがいる場所より少し離れた所に複数確保する。
自分たちの頭の上に明かりを灯すのは良い標的になってしまう。
戦力を集中し、防御を固め
最優先で負傷した仲間の救出、後に撤退戦の指示を出すと
素早くグループを作り
その中の一つが負傷者の救出とポーションと治療魔法による回復を行なっている。
残りは襲ってきた魔獣を食い止めている。
魔法は跳ね返されているためほとんど効かない。
盾役が防壁を張る、遠距離から魔法と弓、投擲槍で攻撃する。
その攻撃を掻い潜って来たものは、前衛の剣か槍か斧で撃退される。
そのような戦いを行い、
隊を一固まりとして動き回りながら脱出の隙を伺っていると
魔獣の包囲が薄くなった場所出来た。
そこへ戦力投入をして一気に突破する。
脱出経路は、予め打ち合わせたとおり
周囲からの進入が困難な狭い谷を越えた先にある広場まで、
そこまで行けば何とかなる。
後ろから追って来る魔獣を落とすため
土魔法で落とし穴と防壁を作った。
時間稼ぎの気休めに過ぎないが、
何頭か魔獣魔獣が落ち、壁にぶつかる音がする。
少し余裕ができた。
何とか広場までたどり着くと
大急ぎで脱出用の『転位陣』が書かれた大きな布を広げる。
『転位陣』は兄が「非常用に使え」と渡してくれた。
城の宝物庫に保管されているほど貴重なものだ。
しかし、使用に躊躇はしない。
今は生き残り、この情報を持ち帰るのが最優先だ。
現在位置は魔の森のかなり奥の方、人里まで歩いて五日はかかるだろう。
しかし転位陣は一瞬で対になった転移陣のある、安全な場所まで移動することができる。
移動先は拠点となった村にある。
撤退してくる冒険者達をその上に次々に整列させていく。
負傷した者を庇って連れているものが遅れている。
谷の奥から魔獣が接近する音が近づいている。
転移陣を起動させ、発動を保留する。
副長に、撤退する冒険者の収容と指揮を譲り
避難の列の最後尾、さらに通路の先まで戻る
さらに落とし穴と土壁を次々に作って魔獣の進行を阻止する。
「早く!」
焦りながらも状況を確認する。
あと数メートルで全員が転位陣に到達する。
と、右上後方から大きな音と衝撃が伝わる。
魔獣が飛び降り、その姿が顕になった。
・・・こいつは
その姿に戦慄する。
体はライオン、背中に竜種の羽、尾は毒蛇、
「キメラか!!」
この200年間記録が無かったSランクの魔物だった。
転位陣と私の間に入り込んだそいつは、
後方の冒険者達は無視をして
私を獲物として捉えたようだ。
よかろう、私の命と引き換えにほかの冒険者には手出しはさせん。
副長やほかの冒険者が飛び出そうとするまえに私はさっさと
転位陣を発動させる。
「いけません、アラン王子!」と叫ぶ副長の声は、
転移陣の布ごと掻き消え
その場所に周囲の空気が吹き込む風の音が聞こえる。
脱出は成功だ。
私は谷の途中で、前後を魔獣に挟まれてしまった。
「すまん」誰の為なのかわからないが
謝罪の言葉をつぶやいてしまう。
呼吸が荒い。
剣を持つ手と、膝が震えるが
落ち着く為、大きく息を吐き出し
ゆっくり魔物を見まわし言い放つ。
「お前が私の死か。よかろう、盛大にもてなしてやる。」
そして剣を構え、
ありったけの魔力を込めて
突っ込んだ。