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史上最高の天才錬金術師はそろそろ引退したい  作者: 御子柴奈々
第四章 王国内乱編-When she cry-
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第98話 Alice in wonderland 12:桜舞い散る頃


「ねぇ、私ちゃんと綺麗?」

「もう……何度目ですか……はぁ……」

「だ、だって! 気になるから!」

「大丈夫ですよ。いつも通り、美しいですよ」


 自室。


 そこでは私はパーティーに出席する衣装に着替えていた。これから私が出席するのは、カノヴァリア錬金術学院の卒業式だ。今回は別に合格したから参加すると言うわけではなく、ここ数年は王族だからと言う理由で出席していた。


 でも今回はいつもと心情が違う。


 今まではただいつものように、作業をこなすだけだと。そう思って卒業式に出席していた。涙を流す人の心など、理解できなかった。

 

 でも私は、来年度には入学するのだ。


 それに……エルウィード=ウィリスの卒業式ということで世間的にも注目度は高い。彼には本当にお世話になった。だから別に在校生ではないけれど、彼と会うことができるのは純粋に嬉しかった。その卒業する姿を見るのも、楽しみだった。


 そうして私は卒業式に向かう。



「エル様。ご卒業、おめでとうございます」

「ん? あぁ。アリスか。ありがとう」

「いえいえ。卒業式、とても立派な挨拶でしたね」

「そうだといいのだが……」

「何か思うところが?」

「いや、擬態が面倒だ」

「ふふ……あなたらしいですね……」


 

 卒業式が無事に終わり、次の会場はパーティーでの打ち上げとなっているが実際は王族や上流貴族の集まりだ。その中でも異彩の放つのが、エルだった。でもいつものように飄々としており、その雰囲気は普段と変わりはない。


 私たちは目立たないように、会場の隅の方で会話をするけれど……やはりそれなりの注目は浴びてしまうようだった。


 でもそんなことは気にしない。今はただ、話がしたかったから。


「そういえば、学院の教師になるとか。お聞きしましたが……本当なのですか?」


 彼の進路は様々な憶測が飛び交うも、確定はしていなかった。その先は明るい未来が待っている。皆がその選択肢に期待しているのだ。


「あぁ。と言っても、非常勤で残りの時間は農作物の研究に当てるがな」

「……他の貴族たちが聞いたら卒倒するでしょうね」

「そんなことはどうでもいい。俺は俺の生きたいように生きるだけだ」

「ふふ……あなたらしいですね」

「俺のことはいい。アリスは、来年度に入学だろう。もう数日後だな」

「えぇ。おかげさまで、入学する運びとなりました」

「もしかしたら……いや、きっと学院で会おうことになるだろうな。立場は教師と生徒だが」

「ふふ。それはとても楽しみですね。あ! これからは先生って呼びましょうか?」

「別になんでもいいが……お前の場合は裏がありそうでな……」

「何か言いましたぁ〜」

「いや、別に……」


 最近は素の自分も見せるようになって、彼との距離はぐっと近づいている気がする。


 それにしても、私がとうとうあの学院での生徒になるのか……そう思うと本当に感慨深いものがある。


 ふと、窓越しに外を見ると……もう軽く花が咲き始めていた。木々にある蕾は、その開花を始める。


 私もまた……きっとこれから、開花することができるのだろうか。


 いやきっとできる。


 だって私はもう、一人じゃないから。

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