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史上最高の天才錬金術師はそろそろ引退したい  作者: 御子柴奈々
第四章 王国内乱編-When she cry-
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第96話 Alice in wonderland 10:向き合う時


 学内に入る。


 そして私は大きな教室内へと入り込む。まだ受験生はいないようで、私が一番乗りだった。ちなみに朝早く来たのは、マスコミを嫌っての意味合いもあった。すでに私が受験するのは知られている。


 別に王族がこの学院を受験するのは初めてではないが、そのほとんどが不合格となっている。


 この学院では王族、貴族という地位は関係はない。


 ただ錬金術師として入学できる素養があると認められればいい。


 そのためには、筆記試験と実技試験をパスしなければならない。


「……よし」


 防寒のために来ていた服を脱ぎ去り、いつものようにノートを広げて最後の復習に入る。今までの時間が、あっという間だったな……とふと思った。


 幾度となく繰り返して来た所作。


 ノートのページをめくる音。この紙に触れる質感。それと、ペンを持つ時の感覚。


 もうすっかり慣れてしまったものだが、今となるとなぜか懐かしくなる。


 きっと合格しても、不合格となっても、どちらに転ぼうが……私はこれほどのプレッシャーの中で勉学に励むことは……もうないのだろう。


 そう考えてしまうと、少しだけ寂しい気持ちになってしまう。


 別にこの勉強の期間を心から楽しいと思った時はなかった。


 もちろん楽しいと感じる時もあるが……やはり勉強というものはどこまでいっても、作業感が拭えない。たまに気晴らしに実技の練習もするが、それでも行うのは錬成陣を描き続けるという地道な作業。


 そこに爽快感や楽しさはさほどない。


 でも、それでも、私がここまで無事に来れたのは、諦めずにこの場所に来れたのは、きっと彼の存在が大きいのだと思う。


 その姿を見て、その自由に振る舞う生き方に憧れた。


 だから近づいて見たいと。


 そう思った果てが今だった。


「ふぅ……」


 一息つく。


 すでに室内には大勢の人がいた。


 そして私に視線が注いでいることにふと気がつく。


 でも、それはそのはずだ。私のことはすでに大々的に報道されているし、受験をする前から私は有名な存在なのだから。


 そんな私をまるで異質な存在として見てくる。


 きっと私も、そして彼も同じだ。


 私たちは世界から少しだけ外れた存在だ。普通ではない。


 でもだからと言って、その生き方を無理やり変えるつもりなどなかった。


 私は、私の生きたいように……彼のように、自由に、生きたいと願ったのだから。


「それでは……始めてください」


 試験官の人がそういうと、全員が一斉に紙をめくって試験を開始する。


 この学院のペーパー試験はシンプルだ。

 

 大問が3つあって、それに対して全て記述で答える。文字数に制限はない。ただ、問いに対して論述をすればいいだけだ。


 こうして私の人生を変える瞬間が、やってくるのだった。

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